内容紹介
『文学論』で「(F+f)」とされた「文学的内容の形式」を,小説内の時間の創出という新たな文学理論を視野に入れつつ検証し,小説にしか語りえない時間が漱石の小説表現の要になっていると明らかにする.欧米の学を取り入れ,理論と実践の一致を成し遂げた漱石小説の真髄に迫る.
目次
序 章 文学の創出を求めて
第一部 書ならびに画に記憶をもたせる
第一章 時間の産出──『それから』の論理
第二章 棄却した問題の回帰—─『それから』と北欧神話
第三章 『道草』という文字の再認—─生の過程をつなぎなおすために
第四章 新しい文字を書くまで──『道草』の胎動・誕生
第二部 思想の記憶
第五章 古い声からの呼びかけ—─『門』に集まる古典
第六章 禅・口承文芸からの刺激—─『門』に潜む文字と声
第七章 再帰する浄土教—─『彼岸過迄』の思想解析
第八章 記憶へ届ける言葉—『彼岸過迄』の生成
第九章 浄土真宗と日蓮宗とのあいだの『心』の振幅
第十章 記憶と書く行為—─『心』のコントラスト
結 章 時間のダイナミズム