女になった海賊と大人にならない子どもたち ロビンソン変形譚のゆくえ
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-472-40382-8 C3098
奥付の初版発行年月:2009年01月
19世紀半ばから20世紀半ばのイギリスでは、デフォーの『ロビンソン・クルーソー』の影響のもと、同じプロット、テーマ、状況設定の小説群が数多く生み出された。本書では、「国民国家」「性」といった角度からこれらロビンソン変形譚を論じ、児童文学史上「黄金時代」の文学と社会を考察。子どもの本のイデオロギーを分析する。
目次
序章 イギリス児童文学とロビンソン変形譚
第一章 帝国を建設する少年たち――バランタインの『さんご島』
一 「男らしさ」のマニュアルとしてのロビンソン変形譚
二 植民地で培われる男性性
三 国家のイデオロギー装置と少年小説
四 浸透する男らしさの神話と少年読者
五 『さんご島』における少年と海賊
六 男らしさと人間らしさの意味
第二章 華麗なる海賊ヒーロー――スティーヴンソンの『宝島』
一 秩序と伝統からの離反
二 歪められた男性性
三 海賊ヒーローと作家の二面性
四 『宝島』における男たちの世界
五 逸脱する主体と逸脱する性
第三章 女っぽい海賊とみじめな父親――バリの『ピーター・パン』
一 子ども部屋からの逃走
二 ネヴァーランドとピーター・パン
三 成人男性の憂鬱
四 強制的異性愛体制への抵抗
五 女性化した海賊と無性化される子ども
第四章 女海賊の異議申し立て――アーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』
一 引用と模倣の冒険世界
二 アマゾン海賊の特徴と本質
三 冒険の主体としての女性
四 『女海賊の島』とナンシイ・ブラケット
五 ランサム、帝国、そして女海賊
六 女海賊が示すもの
終章 子ども部屋のロビンソン変形譚と性