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DRMとコンテンツ流通ユビキタス時代の著作権管理技術

ユビキタス時代の著作権管理技術 DRMとコンテンツ流通

A5判 242ページ 並製
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-501-54180-4(4-501-54180-6) C3004
奥付の初版発行年月:2006年10月 / 発売日:2006年10月中旬

内容紹介

具体的な規格や実施例を通して平易に解説

前書きなど

 20世紀の後半から始まったデジタル化の波は,今世紀に入りさらに進展を速め,現代社会を大きく変容させ,デジタル社会,情報化社会などのことばを現実感のあるものとしてきた.このデジタル社会を象徴し,その文化を支えているのが,音楽,映像,ゲーム,書籍などの情報をデジタルコンテンツ(以下,単にコンテンツと呼ぶ)およびその流通である.コンテンツ流通の進展はわれわれの生活を豊かにし,多様な文化を育み,デジタル社会の恩恵を実感させるものであるが,一方で新たな問題を引き起こしている.その一つが不正コピーの問題である.デジタル化されたコンテンツは,そのものだけではオリジナルとそのコピーとを区別することは原理的に不可能である.しかも,何の対策も施されなければ,コンテンツの複製や編集は極めて容易に行える.その上,複製・編集されたコンテンツは,デジタルネットワークを用いて簡単に広範囲に配布できる.これを放置しておけば,コンテンツを創造し,制作しても,それが直ちにコピーされ不特定多数の人々に配布されてしまい,コンテンツ制作が職業として成立しなくなるだろう.したがって,コンテンツ制作を促進し,デジタル社会の文化を豊かなものにしていくためには,コンテンツ利用を何らかの方法で制御・管理することが不可欠となる.このためには,法律や制度,教育や啓発などを含む総合的な対策が必要であるが,その基盤となるのはDRMである.
 DRMはDigital Rights Management(デジタル著作権管理)の略語であり,コンテンツの利用方法を制御・管理する技術の総称である.DRMの目的はコンテンツの不正コピーや不正流通の防止であるが,単なる不正防止というばかりでなく,従来の枠組みにとらわれない新たなコンテンツ流通を実現するためにも欠かせない技術となっている.
 近年におけるコンテンツ流通の進展は著しく,それに伴ってさまざまなDRMが提案され,実用化されてきた.このため,DRMは複雑な様相を呈し,しかも変化し続けている.このような状況の中で,日本規格協会に,コンテンツ流通市場形成に関する標準化調査研究委員会が2003年発足し,DRMのあり方について調査し議論を重ねてきた.そのような議論の中から,今日のDRMの全体像と基本的な理念とが見えてきたように思える.本書は,この委員会の成果に基づいて,今日の複雑なDRMの世界全体を貫く基本的な考え方を示すとともに,個々のDRMを,具体的な規格や実施例を通じてわかりやすく解説する.
 本書の執筆者は,暗号理論などDRMの基礎理論に関し世界の最先端で研究を行っている研究者,DRM開発の最前線に位置する技術者,コンテンツ流通業界をリードしている実務者からなっている.しかも,上述の委員会で議論を重ね,DRMに関する深い知識を共有している.このため,本書では,これまでのDRMの著書には見られない深さと幅広さを出せたのではないかと考えている.
 各章の執筆者は以下のとおりである.
  ・序章,第1章—古原和邦(東京大学 生産技術研究所.現在,独立行政法人産業技術総合研究所 情報セキュリティ研究センター)
  ・第2章—五十嵐達治(富士通株式会社 法務・知的財産権本部)
  ・第3章—遠藤直樹(東芝ソリューション株式会社IT技術研究所)
  ・第4章,付録A—川森雅仁(日本電信電話株式会社サイバーソリューション研究所)
  ・第5章—中西康浩(株式会社メロディーズ&メモリーズグローバル)
  ・第6章—三瓶徹(株式会社スーパーコンテンツ流通)
 本書はDRMの現状と将来動向をわかりやすく解説した著書であり,DRMはコンテンツ流通において最も重要な基盤流通であるので,コンテンツ流通にかかわる研究者,技術者,およびこの分野の学生の方々には本書を是非お読みいただきたいと願っている.
 末筆であるが,本書の刊行をご提案いただき,編集にもご尽力いただいた東京電機大学出版局の植村八潮氏をはじめ出版に関しお世話になった方々に深謝する.
 2006年8月
 今井秀樹


目次

序章 著作権管理の基礎知識
 1 著作権管理の考え方
 2 権利と法的保護
 参考文献
第1章 DRMの基礎技術
 1.1 著作権管理ポリシーとコンテンツ秘匿技術
 1.2 鍵の割当と無効化技術
 1.3 電子透かし
 参考文献
第2章 流通メディアから見た保護技術
 2.1 コンテンツの利用形態
 2.2 流通メディアによるコンテンツ保護の違い
 2.3 パッケージメディアにおける保護方式
 2.4 放送における保護方式
 2.5 通信系のDRM
 2.6 電子透かしの利用
 2.7 課題と展望
 参考文献
第3章 暗号技術を中心としたDRM標準化動向
 3.1 AACS
 3.2 CPPM/CPRM
 3.3 DTCP/DTCP−IP
 3.4 OMA DRM
 3.5 今後の展望
 参考文献
第4章 メタデータ活用を中心としたDRM標準化
 4.1 MPEG−REL
 4.2 TV−Anytime RMPI
 4.3 DLNA
 4.4 コーラルコンソーシアム
 4.5 今後の展望
 参考文献
第5章 コンテンツ流通システムの実際
 5.1 コンテンツ配信モデル
 5.2 権利許諾管理
 5.3 最後に
 参考文献
第6章 コンテンツ流通市場におけるDRM
 6.1 コンテンツ流通を支えるサービスインフラ
 6.2 音楽市場におけるDRM
 6.3 映像コンテンツ市場におけるDRM
 6.4 電子出版市場におけるDRM
 6.5 写真業界におけるDRM
 6.6 携帯電話におけるDRM
 6.7 医療分野におけるDRM
 6.8 教育分野におけるDRM
 6.9 ゲーム市場におけるDRM
 6.10 今後の展望
 参考文献
付録A XMLとWebサービス
 A.1 XML
 A.2 Webサービス
 A.3 Webサービスセキュリティ
 参考文献
付録B 著作権法(抄)
略語集
索引


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