叢書・ウニベルシタス1004
世界リスク社会
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-588-01004-0 C1336
奥付の初版発行年月:2014年01月 / 発売日:2014年01月下旬
二極的な世界が姿を消していくのと軸を一にして、敵対する世界から危険でリスクに満ちた世界へと移行する。本書は、チェルノブイリ原発事故と同時に発表された自身のベストセラー『危険社会』発表後に寄せられた批判に応答しつつ、近代化とグローバル化を経て顕在化した新たな〈リスク〉のメカニズムを解明する。その議論は、3.11を経験する我々にとってもアクチュアルな議論となるだろう。
U.ベック(ベック ウルリッヒ)
(Ulrich Beck)
1944年生まれ。ミュンヘン大学で社会学、政治学、心理学、哲学を学ぶ。ミュンヘン大学社会学部教授およびロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会学教授などを歴任。2015年死去。邦訳された主な著作に、『危険社会:新しい近代への道』(東廉+伊藤美登里訳、法政大学出版局)、『世界内政のニュース』(川端健嗣+ステファン・メルテンス訳、法政大学出版局)、『世界リスク社会論:テロ、戦争、自然破壊』(島村賢一訳、ちくま学芸文庫)、『グローバル化の社会学:グローバリズムの誤謬・グローバル化への応答』(木前利秋+中村健吾訳、国文社)、『ナショナリズムの超克:グローバル時代の世界政治経済学』(島村賢一訳、NTT出版)、『〈私〉だけの神:平和と暴力のはざまにある宗教』(鈴木直訳、岩波書店)、『ユーロ消滅?:ドイツ化するヨーロッパへの警告』(島村賢一訳、岩波書店)などがある。
山本 啓(ヤマモト ヒラク)
1947年生まれ。中央大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。東北大学大学院名誉教授。専攻:政治学、公共政策論。著書:『ハーバマスの社会科学論』(勁草書房)、『政治と行政のポイエーシス』(編著、未來社)、『NPOと法・行政』(編著、ミネルヴァ書房)、『ローカル・ガバメントとローカル・ガバナンス』(編著、法政大学出版局)。訳書:マンデル『後期資本主義』(柘植書房)、トンプソン『批判的解釈学』(法政大学出版局)、コーン『競争社会をこえて』(同)、ホネット『承認をめぐる闘争』(同)、ウィリアムソン『消費の欲望』(大村書店)、ピュージ『ユルゲン・ハーバマス』(岩波書店)、キャルホーン編『ハーバマスと公共圏』(未來社)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
謝辞
第1章 序──コスモポリタン宣言
第2章 コスモポリタン社会としての世界リスク社会? ──不確実性を生みだす枠組みが抱えるエコロジーの問題
2・1 世界リスク社会論の諸要素
2・2 リアリズムとコンストラクティビズムとの論争
2・3 世界公共圏とグローバル・サブ・ポリティクスの出現
第3章 産業社会からリスク社会へ──生存、社会構造、エコロジー的啓蒙の問題
3・1 リスクには時間の制約はないのか?
3・2 リスクの計算──開かれた未来を目のまえにした予測可能な安全性
3・3 リスクと脅威──正常な状態と例外状態とのオーバーラップについ
3・4 科学技術の役割とリスク社会における自然科学
3・5 社会におけるエコロジーをめぐるコンフリクト
3・6 政治的な再帰性──脅威の対抗勢力と社会運動が影響をおよぼす機会
3・7 エコロジーにもとづいた民主主義というユートピア
第4章 リスク社会と福祉国家
4・1 産業社会とリスク社会とのあいだ
4・2 福祉国家とリスク社会
4・3 ハザード対幸運──内的な危機としての環境の危機
4・4 社会の自己批判の理論としての再帰的近代化
4・5 単線的な科学技術の終わり?
4・6 進歩についての悲観主義の反定量性
4・7 要約と展望
第5章 サブ・ポリティクス──エコロジーと制度がもつパワーの統一性の喪失
第6章 認識か、無意識か? ──「再帰的近代化」をめぐる二つの視点
6・1 出発点──制度的反省(ギデンズ)、再帰的コミュニティ(ラッシュ)、意図せざる帰結(ベック)
6・2 無意識のタイプ
6・3 単線的な認識論と非‐単線的な認識論
6・4 無意識、意図せざる帰結、自己‐危険視
6・5 要約──議論の要点
第7章 リスク社会 再論──理論、政治、批判、研究プログラム
7・1 リスク社会の理論の諸要素
7・2 組織された無責任とリスクの定義づけをめぐるパワー・ゲーム
7・3 展望──リスクの好機
訳者解説──ポスト近代か、ハイパー近代か
原注
文献
索引
関連書
U.ベック著/東廉・伊藤美登里訳『危険社会』Z.バウマン著/澤田眞治・中井愛子訳『グローバリゼーション』G.アンダース著/青木隆嘉訳『時代おくれの人間 上・下』