欧州公共圏 EUデモクラシーの制度デザイン
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-7664-1424-0 C3031
奥付の初版発行年月:2007年10月 / 発売日:2007年10月上旬
EUはいかなる制度デザインを描き出そうとしているのか。
多様なアクターを、欧州市民として、EUの政策プロセスへ
参加させていくことへのEUによる挑戦の軌跡を綴る。
安江則子(やすえ のりこ)
立命館大学政策科学部教授。博士(法学)。
慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学およびパリ第1大学大学院修了。EU研究、グローバルガバナンス論専攻。パリ高等政治学院および欧州大学院などで在外研究を行う。
主要業績に、『ヨーロッパ市民権の誕生——マーストリヒトからの出発』(丸善ライブラリー、1992年)、「欧州統合における政党の役割——欧州レベルの政党と加盟国政党の相互関係を中心に」紀平英作編『ヨーロッパ統合の理念と軌跡』(京都大学学術出版会、2004年)、「欧州公共圏への課題——憲法条約起草過程および参加型民主主義の分析を通して」『法学研究』第78巻第5号(2005年)など。
目次
序 論
Ⅰ なぜ「欧州公共圏」か
Ⅱ EUガバナンスの民主的正統性
Ⅲ 本書の構成
第1部 補完性原理と代議制の制度デザイン
第1章 補完性原理とEUガバナンス
はじめに
第1節 欧州統合と補完性原理
1 思想史的系譜
2 補完性原理の導入
第2節 補完性原理の適用における課題
1 補完性原理の適用
2 主要機関と補完性原理
第3節 加盟国議会と補完性原理
1 フランス議会による補完性原理の援用
2 フランス議会の主張
3 アムステルダム条約付属議定書
第4節 欧州委員会とガバナンス白書
1 ガバナンス白書における「均衡の原則」
2 EUにおける多層的ガバナンス
第5節 補完性原理の適用強化にむけて
1 補完性原理に関する作業部会の提案
2 2007年補完性原理に関する新議定書
おわりに
第2章 欧州統合と代議制の変容
はじめに
第1節 欧州統合と加盟国議会
1 EUと加盟国議会の一般的役割
2 EUに関する加盟国議会と政府の役割
第2節 欧州統合とフランス議会
1 マーストリヒト条約と92年の憲法改正
2 88条の4の適用における問題
3 99年憲法改正とフランス議会
第3節 アムステルダム条約における加盟国議会の役割
第4節 COSACによる議会間協力
1 加盟国議会と欧州議会
2 議会間協力の模索
3 議会間協力の制度化
4 アムステルダム条約付属議定書とCOSAC
5 議会間協力に関する各アクターの立場
6 COSACと多層的な代議制
第5節 EUにおける代議制の制度デザインと加盟国議会
1 加盟国議会の役割に関する作業部会の提案
2 2007年加盟国議会の役割に関する新議定書
おわりに
第3章 EUおける政党の欧州化
はじめに
第1節 欧州議会における政党
1 欧州議会の役割と欧州政党
2 欧州政党の構造と運営
第2節 欧州レベルの政党再編
1 EPP(欧州人民党)
2 PES(欧州社会党)
3 EDLR(欧州リベラル民主改革党)/ADLE(民主リベラル同盟)
4 Greens(緑の党)/EFA(欧州自由連合)
5 GUE(欧州統一左派)/NGL(北欧環境左派)
6 右派の諸グループ
第3節 欧州議会の二大政党
1 二大政党の関係
2 東欧・地中海諸国の参加と欧州議会
第4節 加盟国における政党の欧州化
1 欧州統合と加盟国の政党
2 欧州統合とフランスの政党
3 政党の欧州化と政治家のネットワーク
おわりに
第2部 市民権と参加の制度デザイン
第4章 欧州市民権とアイデンティティ
はじめに
第1節 「人の自由移動」と平等原則
1 「人の自由移動」の保障
2 「人の自由移動」の内容
3 国籍に基づく差別の禁止
4 域内労働者の家族の保護
5 公的雇用に関する問題
6 学生・退職者等の自由移動
7 「人の自由移動」の活性化への課題
8 第5次EU拡大と「人の自由移動」
9 第三国市民の権利
第2節 請願権・オンブズマン制度・外交的保護を受ける権利
1 請願権
2 オンブズマン制度
3 外交的保護を受ける権利
第3節 欧州議会選挙における欧州市民の参加
1 欧州議会選挙の実施
2 欧州市民による選挙への参加状況と課題
第4節 地方議会選挙における欧州市民の参加
1 導入の経緯
2 EU地方選挙指令
3 加盟国憲法による受容
4 欧州市民の地方参政権と居住者の権利
5 欧州委員会報告書にみる実施状況と課題
第5節 欧州統合と市民権
おわりに
第5章 透明性とEUオンブズマン
はじめに
第1節 EUにおける透明性原則
1 EUオンブズマン
2 透明性の原則
第2節 情報公開に関するオンブズマンの判断
1 欧州委員会職員採用に関する情報公開
2 情報公開と捜査および訴訟手続きの関係
3 個人データ保護と情報公開
第3節 EU情報公開規則
1 アムステルダム条約と情報公開
2 情報公開規則と機密文書
第4節 ガバナンス白書と「よい行政を受ける権利」
1 ガバナンス白書
2 よい行政を受ける権利
おわりに
第6章 EUの多言語主義と公共圏
はじめに
第1節 EUにおける多言語主義
1 EU言語政策と多様性の保護
2 EU言語政策の展開
3 EUにおける少数派言語
第2節 単一市場と加盟国の言語政策
1 アイルランドの言語政策と「人の自由移動」
2 ベルギーの言語政策と「物の自由移動」
第3節 フランスの言語政策
1 EUにおけるフランス語の地位
2 国家によるフランス語の保護
3 フランスにおける地域・少数言語
4 フランスと文化的多様性
第4節 欧州言語年と言語政策の新展開
1 欧州言語年と言語状況の分析
2 欧州言語年後のフォローアップ
おわりに
第7章 参加型民主主義と欧州公共圏
はじめに
第1節 基本権憲章と欧州統合の理念
1 EUにおける基本権憲章の意義
2 基本権憲章の起草過程
第2節 欧州憲法条約の起草過程
1 ラーケン宣言による諮問会議の設置と運営
2 コンベンション方式による起草過程の分析
3 ヨーロピアン・デモス
第3節 参加型民主主義と欧州市民発議(ECI)
1 参加型民主主義の模索
2 想定されるECIの制度デザイン
3 ECIと欧州公共圏
第4節 欧州憲法条約の挫折と欧州公共圏
1 欧州憲法条約の批准問題
2 2007年新たな条約の採択へ
おわりに
結 語
参考文献
あとがき
索引