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植民地朝鮮と「出産の場」

植民地朝鮮と「出産の場」

扈素妍:著
A5判 304ページ
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-7664-3011-0 C3022
奥付の初版発行年月:2025年02月 / 発売日:2025年02月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

「生」をめぐる帝国の権力を可視化する

植民地朝鮮において産婆や胎教がいかに存在し機能したのか。
朝鮮社会の葛藤を、新聞・雑誌などの言説空間に注目して浮かび上がらせる。

日本統治下にあった20世紀前半の朝鮮における「出産の場」、とくに産婆や胎教がどのように機能していたか、言説分析を通して明らかにする。「出産」をめぐって日本人の役人、医師、朝鮮人産婆、優生学者などが、新聞・雑誌でさまざまな言説を展開した。「近代の知」が旧弊の「風習」とときに対立し、ときに協力関係を結ぶといった複雑なせめぎあいがあったことを実証的に論じ、出産する女性をとりまく様相を起点に「歴史叙述を女性へ取り戻す」ことを試る。

著者プロフィール

扈素妍(ホソヨン)

京都大学大学文書館特定助教。
2011年ソウル市立大学人文学部国史学科卒業。2016年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修修了。2021年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修研究指導認定退学。2023年同大学院同研究科博士号(文学)取得。奈良文化財研究所企画調整部アソシエイトフェローを経て、現在に至る。
主要論文に、「植民地朝鮮の出産風習としての胎教と生政治――「優生学」言説を中心に」(『朝鮮学報』第260巻、2022年)、「植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策」(『史林』第103巻第5号、2020年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 「出産の場」の「生政治」
1 研究背景――産婆と胎教の位置づけ
2 研究方法――フーコーの「生政治」と「言説」、そして〈現実〉
3 研究史――「出産の場」を支える四つの柱
4 研究目的――植民地朝鮮の「出産の場」を解明する
5 本書の構成
6 本書における用語と記号の定義

第一部 出産風習と産婆制度

第一章 植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策
はじめに
1 近代日本の産婆制度と植民地への移植
2 朝鮮の出産風習
3 日本人衛生医療関係者の見た朝鮮の出産場景
4 植民地朝鮮における産婆養成
おわりに

第二章 朝鮮人産婆の労働環境と社会的位置づけ――1920年代の新聞・雑誌に見る産婆の物語
はじめに――職業婦人としての産婆
1 植民地期女性の職業としての産婆
2 産婆が語る朝鮮の労働の〈現実〉
3 1920年代の産婆の経済的・社会的位置
おわりに

第三章 産婆と風習のせめぎ合い、そして出産医療の〈現実〉
はじめに
1 「旧慣」を駆逐し、産婆を利用せよ
2 伝存する出産風習と衛生との葛藤
3 産婆が語る朝鮮社会と「出産の場」の様子
4 京城の都市貧民を取り巻く、出産医療の〈現実〉
おわりに

第二部 胎教と「生政治」

第四章 出産風習としての胎教と「優生学」
はじめに
1 前近代の胎教と植民地朝鮮における伝存
2 1930年前半の優生学と胎教
3 1930年代後半の胎教を取り巻く論争
おわりに

第五章 韓半島にもたらされた「近代の知」と胎教――女性教育、民族改造、〈朝鮮学〉振興運動
はじめに
1 「女性教育論」と胎教言説
2 植民地期の「民族改造論」と胎教
3 女性医師・許英肅の民族改造論と胎教
4 1930年代後半の「〈朝鮮学〉振興運動」と『胎教新記』
おわりに

終 章 近代化する「出産の場」と女性
1 生き残った出産風習と植民地朝鮮の近代
2 「出産の場」を眺めるということ──本書のまとめ


初出一覧
引用・参考文献
あとがき
索引


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