2011年3月の東日本大震災およびその後日本各地を襲った台風や集中豪雨による風水害など,今日においては誰もが自然災害による被害者・被災者・当事者となることを覚悟しなければならなくなった。本書は来るべき災害と我々はいかに向き合い,どのように受け入れ,そして立ち直っていくべきか,さらには災害による死者をどのように捉えればよいのかという問題に対して,「共災」という概念をもとに検討を加える。
高橋 隆雄 (タカハシ タカオ)
高橋隆雄(たかはし たかお)
1948年 神奈川県に生まれる
東京大学工学部卒業(船舶工学科)
東京大学大学院博士課程単位取得退学(哲学専攻)
博士(文学)
熊本大学大学院社会文化科学研究科・教授
日本医学哲学倫理学会賞受賞
単著:『自己決定の時代の倫理学』,『生命・環境・ケア』(以上,九州大学出版会)。
編著:『将来世代学の構想』(九州大学出版会),『工学倫理』(理工図書),Taking Life and Death Seriously: Bioethics from Japan, Elsevier. 熊本大学生命倫理研究会論集(全6巻)。熊本大学生命倫理論集(全4巻)(いずれも九州大学出版会)など。
目次
目次はじめに
崩れと弱さ/アニミズム的自然/自然がもたらす二つの感動
序章 共災の時代とは
地震の活動期/災害のグローバル化
第1章 天譴(てんけん)の思想的基盤
関東大震災とリスボン地震/臨時雇いの観念としての天譴/点検としての天譴/
生命力と秩序化の原理/善悪を超越する神/持続としての価値/惰性からの回復
第2章 共災の時代とその生き方
見田宗介と戦後の時代区分/不可能性の時代/災害とともにある生の再認識/
九鬼周造と自然・意気・諦念/共災の時代の「いき」な生き方
第3章 人間と自然の関係の再考
防災を論じない環境倫理/ケアとしての祀り/神仏習合の解釈/
神と自然とケア/現代版アニミズム/四層構造/祓のコスモロジー/
共災の具体像
第4章 災害犠牲者の生の意義 レクイエムとして
死者へのまなざし/死者に対する二つの姿勢/震災犠牲者の生の意義/
『日本霊異記』と善悪の因果論/ケンブリッジ変化
第5章 生きとし生けるものとのつながり
養い関係の拡張/世々生々の父母兄弟/事実と行為を媒介する「恩」/
恩概念の脱色/恩にもとづく倫理
第6章 将来世代との対話
将来世代論の二つのネック/過去世代との対話/将来世代論と恩/
将来世代との対話/過去への批判は可能か
終章 火の神と原子力
火の神の二つの神話/黄泉の国の蓋を開けてしまった原子力
あとがき