地域研究叢書40
衣装と生きる女性たち ミャオ族の物質文化と母娘関係
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8140-0261-0 C3339
奥付の初版発行年月:2020年02月 / 発売日:2020年03月上旬
中国南部から東南アジア大陸部にかけての山間部に住むミャオ族は,女性が纏う華やかな民族衣装で広く知られる。ともすれば,華麗な飾りと豪華な刺繍ばかりが注目される彼らの民族衣装だが,そのパーツの素材や色,刺繍の文様や製作技法,さらには製作・着用・保管・譲渡といった行動にまで,彼らの社会関係(とりわけ母娘関係)に関わる規範と歴史が細々と織り込まれている。物質文化研究と地域研究とを結ぶ意欲作。全頁カラー。
佐藤 若菜(サトウ ワカナ)
1983年宮城県生まれ。2016年1月,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了・博士学位取得。現在,新潟国際情報大学国際学部国際文化学科准教授。
主な業績として,「衣装がつなぐ母娘の『共感的』関係:中国貴州省のミャオ族における実家・婚家間の移動とその変容」『文化人類学』79巻3号(2014年),“Sympathetic Relationships between Miao Mothers and Daughters as Mediated by Ethnic Costumes: Case Studies from Guizhou Province, China” Déjà Lu(2017年),「中国貴州省のミャオ族における民族衣装の物質性:上衣の製作に着目して」『民族藝術』34号(2018年),「中国本土・台湾における1990年代以降の親族研究:女性に着目した新たな動き」『社会人類学年報』44号(2018年)。
目次
はじめに―衣装に思いを乗せて
序 章 親族とモノ、そして社会―理論的背景と本書の内容
第1節 女性から迫る中国社会とその周縁―情緒的紐帯からの展開にむけて
第2節 衣装から見て初めてわかる社会―サブスタンスから実践的な関係の構築へ
第3節 衣装のエージェンシー―ミャオ族社会のアクター・ネットワーク論
第4節 本書の構成
第1章 ミャオ族と民族衣装
第1節 ミャオ族とは何か
第2節 ミャオ族の服飾研究史
第3節 調査地概況
コラム1 調査地における『民族』間関係
第2章 民族衣装の物質性─分類と製作工程を微視的に見る
第1節 民族衣装とは
第2節 ミャオ語による上衣の分類と製作工程からみた衣装の物質性
コラム2 上衣以外の民族衣装
第3章 衣装の物質性と製作の変化
第1節 衣装製作の変化
第2節 パーツの売買
第3節 民族衣装の製作者は誰か?
コラム3 染色と刺繍の製作工程
第4章 財としての民族衣装─日常着から威信財へ
第1節 衣装価値の変遷
第2節 威信財としての諸相
第3節 現金獲得源になりうるモノとして
第4節 S村における衣装の位置づけ
第5章 ミャオ族女性の婚姻とその変容─衣装と女性の「賢さ」
第1節 改革・開放政策以降の婚姻に関連した社会経済的変容
第2節 ミャオ族の社会階層にもとづく配偶者選択と「坐家」
第3節 ミャオ族女性の婚姻をめぐるライフコースの変化
第4節 刺繍の腕前への評価とその変容
第5節 刺繍の技量を通して示される「賢さ」
コラム4 S村における民族間結婚の概要
第6章 衣装がつなぐ母娘関係
第1節 婚姻による女性と民族衣装の移動
第2節 なぜ婚家には衣装を保管しないのか?
第3節 民族衣装を介した母と娘のつながり
第4節 モノに託す母娘関係
終 章 変化する中国社会と思いを運ぶ民族衣装
第1節 モノを手作りし、関係を形成する
第2節 衣装の譲渡と母娘の離別
第3節 モノとともに生きる
読書案内 衣装とミャオ族を知る
初出一覧
参考文献一覧
謝 辞
索 引