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認識論、リサーチ・デザイン、手法社会科学の考え方

社会科学の考え方 認識論、リサーチ・デザイン、手法

A5判 358ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-0876-1 C3030
奥付の初版発行年月:2017年06月 / 発売日:2017年05月下旬

内容紹介

学際化がすすむ社会諸学のロジックをいかにして身につけるか。日本で初めて認識論から説き起こし、多様な調査研究手法を明晰に整理して、メソドロジーの全体像を提示する。社会科学を実践するための要諦をつかみ、創造的研究を生み出すための最良のガイドブック。

出版部から一言

各手法やリサーチ・デザインの技術的解説にとどまらず、その背景にある考え方・ロジックに光をあてて方法論を体系化!

◆複数の認識論的立場の違いを踏まえ、それを軸に方法論の見取り図を描写
社会科学に関する入門書は従来数多く刊行されているものの、技術的な解説が多く、いわば「社会調査士資格」取得のハウツー本的色彩が強いうえに、アプローチが実証主義的な方法論に偏ってもいます。
本書は、方法論に関する理解を深めて議論を豊かにし、国際的に通用する研究を推進するためには複数の認識論的立場の違いを踏まえて整理することが重要だという考え方に基づいて書かれています。従来の「実証主義」に加え、「批判的実在論」や「解釈主義」などの、近年多用されるアプローチの方法論的基盤を示し、その方法論に依拠して書こうとする大学院生等の論文の質の向上に資するものです。

◆社会科学全体を対象とし、特定の分野に限定されない記述
従来の入門書が社会科学の諸学問分野、たとえば政治学や社会学などのディシプリンごとに、または個別の手法ごとに細分化されがちな状況に対し、本書は社会科学全体を対象とし、特定の分野に限定されないよう書かれています。複数の分野の議論を織り込む本書は、どの分野を学ぶ人にも有益な入門書であり、また近年の学際化にも対応して、政策学や開発学のような学際的分野で学ぼうとする学生にも有用なものです。

◆実践的な解説もふんだんに盛り込み、近年問題化することの多い研究倫理についても必要十分なガイドラインを提供

前書きなど

本書の目的と特長
本書は、社会科学における研究の「方法論」を解説することを目的としており、その中でも純粋な理論研究や哲学的考察ではなく、現実に存在する(した)事象や人々の調査研究、すなわち経験的研究(empirical research)に焦点を当てている。

数多ある類書との違いを生み出す本書最大の特長は、各手法やリサーチ・デザインの技術的解説にとどまらず、その背景にある考え方・ロジックに光を当てて、方法論を体系化している点にある。

具体的に言うと本書は、「認識論」と呼ばれる考え方に複数の立場があることを念頭に置き、それを軸に方法論の見取り図を描いている。認識論とは「我々は世の中をどのように認識することができるのか」とうい問いに関する考え方のことである。後述するように、英語で書かれた一般的な教科書の多くが、複数の認識論的立場を踏まえた上で方法論を解説しているが、日本語ではこうしたアプローチをとるテキストは見当たらず、認識論的に一元的で、そもそも認識論の話自体に触れないことも多い。本書は、方法論に関する理解を深めて議論を豊かにし、国際的に通用する研究を推進するためには複数の認識論的立場の違いを踏まえて整理することが重要だという考えに基づいて執筆されている。

また、社会科学全体を対象とし、特定の分野に限定されない点も本書の特長……

[「はじめに」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

野村 康(ノムラ コウ)

1973年 東京都に生まれる
1995年 早稲田大学卒業
2006年 ウォーリック大学大学院博士課程(Department
    of Politics and International Studies)修了(Ph.D.)
(財)地球環境戦略研究機関(1998~2005年)、立教大学
ESD研究センター(2007~2009年)等を経て、
現 在 名古屋大学大学院環境学研究科教授

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第I部 社会科学の認識論

第1章 認識論
1.1 存在論の2つの立場――基礎づけ主義と反基礎づけ主義
1.2 認識論のパラダイム――実証主義・批判的実在論・解釈主義
1.3 むすび

第II部 社会科学のリサーチ・デザイン

第2章 事例研究
2.1 事例研究とは――定義と特性
2.2 単一事例の選び方――3つの基準
2.3 複数事例の選び方――比較の論理
2.4 構成要素――問いと分析単位
2.5 一般化・理論的貢献・過程追跡――事例研究の論点
2.6 むすび

 Box2.1 歴史研究と事例研究

第3章 実験
3.1 実験とは――定義・要点・「無作為割り当て」
3.2 種類――実験室実験・フィールド実験と準実験
3.3 妥当性と問題点――実験における配慮事項
3.4 分析と方法論的位置づけ――アプローチと認識論
3.5 むすび

 Box3.1 自然実験
 Box3.2 妥当性
 Box3.3 ホーソン効果とピグマリオン効果
 Box3.4 アクション・リサーチ

第4章 横断的・縦断的研究
4.1 横断的研究とは――定義・特性・方法論的位置づけ
4.2 縦断的研究とは――定義・類型・特性と方法論的位置づけ
4.3 標本抽出(サンプリング)——確率的/非確率的抽出とその論点

 Box4.1 歴史研究と横断的/縦断的研究
 Box4.2 非確率的抽出の限界

第III部 社会科学の手法

第5章 インタビュー
5.1 概要――類型(構造化・半構造化・非構造化)と認識論
5.2 個別インタビュー(1)基本的な考え方
5.3 個別インタビュー(2)オーラル&ライフ・ヒストリー
5.4 集団に対して行うインタビュー――フォーカス・グループ

 Box5.1 民俗学における半構造化・非構造化インタビュー

第6章 エスノグラフィー/参与観察
6.1 概要――定義・経緯・特性・認識論
6.2 手順/技法――アクセス・類型・書き方・再帰性・厚い記述
6.3 その他の注意点

 Box6.1 歴史研究とエスノグラフィー

第7章 調査票調査
7.1 概要――要点・注意点・認識論
7.2 進め方――調査票の作成・調査の実施・データの処理
7.3 データの分析――集計表と解析

 Box7.1 キャリー・オーバー効果
 Box7.2 インターネットと調査
 Box7.3 選挙の当確速報

第8章 言説分析
8.1 概要――定義と要点
8.2 類型と方法論的位置づけ――認識論とリサーチ・デザイン
8.3 批判的言説分析――フェアクラフを中心に
8.4 解釈主義系の言説分析――研究例を踏まえて
8.5 むすび

 Box8.1 歴史研究・縦断的研究と言説分析

第IV部 社会科学のルール

第9章 研究倫理と参照の方法
9.1 研究倫理
9.2 参照の方法――概要
9.3 ハーバード方式(括弧参照方式)
9.4 脚注方式
9.5 むすび

 Box9.1 修士論文を書く
 Box9.2 博士論文を書く(1)
 Box9.3 博士論文を書く(2)

おわりに

あとがき
索 引


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