租税回避と法 GAARの限界と解釈統制
価格:7,920円 (消費税:720円)
ISBN978-4-8158-0999-7 C3032
奥付の初版発行年月:2020年09月 / 発売日:2020年10月上旬
スターバックスやアップル、グーグルなど、名だたるグローバル企業がおこない、世界的に問題化した租税回避行為をいかに抑止すべきか。各国で導入が進むGAARの効果と限界を実証的に浮き彫りにし、岐路に立つわが国がとるべき道を、GAARにかわる第三のアプローチとともに提示する。
「租税回避の多くは合法だ。しかし、まさにそれこそが問題なのだ」。
これは2016年4月、アメリカのオバマ大統領(当時)が記者会見で語った言葉である。この発言は、当時世間を賑わせていた「パナマ文書」に関するものであるが、「租税回避」の何が問題なのか、そしてなぜ国家はこの問題に容易に対処できないのかを明快にあらわしている。
本書のテーマである「租税回避」は、近年盛んに報道され、新聞やテレビでも目にする機会が増えた言葉である。「租税」を「回避」するという字面から、一見してイメージがしやすい言葉ではあるが、その用語がもつ専門的な意味や本質的な問題点については十分に浸透していないように思われる。
本書は、この租税回避に対して、わが国がどのような対処をとるべきかを考察することを目的としているが、その議論を展開するためには、まず租税回避という概念自体について説明する必要があるだろう。そこで、本書の序章として、そもそも租税回避とは何であり、なぜ対処が難しいのかを明らかにし、その上で、今現在、世界は問題にどのように立ち向かっているのかについて見て……
[「序章」冒頭より/注は省略]
本部 勝大(ホンブ カツヒロ)
1990年、愛知県に生まれる。2018年、名古屋大学大学院法学研究科博士課程修了。現在、立命館大学経済学部准教授(博士、法学)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 租税回避の現在
1 はじめに
2 租税回避とは何か
3 世界におけるGAARの状況
4 本書の取り組む課題
第I部 アメリカ法の対応――経済的実質主義の制定法化
はじめに
第1章 アメリカにおける判例法理の発展
1 租税回避の概念
2 経済的実質主義の形成
3 形成後の展開
4 小括
第2章 制定法化までの経緯と議論
1 判例法理の課題
2 立法の沿革
3 2010年ヘルスケアおよび教育調整法
4 小括
おわりに
第II部 カナダ法の対応――一般的租税回避否認規定(GAAR)
はじめに
第3章 カナダにおける伝統的な租税回避への対処
1 租税回避の概念
2 連邦議会による租税回避への対応
3 裁判所による租税回避への対応
4 小括
第4章 GAARの導入へ
1 導入の背景
2 GAARの立法過程
3 制定されたGAAR
4 小括
第5章 GAARの運用実態
1 GAARの適用件数
2 主な適用事例
3 判決の傾向
4 GAARの評価
5 小括
おわりに
第III部 日本法の対応――GAARを導入すべきか
はじめに
第6章 日本における租税回避対策の展開
1 租税回避への伝統的な対処
2 実質主義にもとづく租税回避対策の試み
3 司法的なアプローチの模索
4 近年の裁判例
5 GAAR導入論の再燃
6 小括
第7章 日本法への示唆
1 新たなアプローチの検討
2 GAAR導入の是非
3 法解釈的手法の立法化の是非
4 わが国への提案――解釈統制アプローチ
5 小括
おわりに
終 章 GAAR導入論を超えて
参考文献
あとがき
索引