スラブ・ユーラシア叢書 2
創像都市ペテルブルグ 歴史・科学・文化
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-8329-6673-4 C3098
奥付の初版発行年月:2007年04月 / 発売日:2007年04月下旬
ピョートルによって「ヨーロッパへの窓」として開かれたペテルブルグは、様々な歴史的シーンに立ち会い、また多くの文学の舞台をなってきた。歴史、科学史、文学などから多彩な側面をもつペテルブルグを読み解く。
望月 哲男(モチヅキ テツオ)
所 属−北海道大学スラブ研究センター教授
専門分野−ロシア文学
目次
序 都市から世界へ−−サンクト・ペテルブルグの歴史によせて(望月哲男)
北方の旧首都/華麗な街/国際都市/役人の街/テロリズムの街/貧しい街/不条理な街/
変わりゆく街/回路としての街/サンクト・ペテルブルグから世界へ
第一部 都市の成り立ち/学術の歴史
ピョートル一世とサンクト・ペテルブルグの誕生(栗生沢猛夫)
はじめに
一 イジョラの地−−ネヴァ河流域地方
二 ピョートル・アレクセーエヴィチ
三 新都の建設
四 新首都建設と遷都の理由
五 新首都建設の結果−−サンクト・ペテルブルグの光と影、結びにかえて
ライプニッツとロシア−−ヨーロッパ史のなかのサンクト・ペテルブルグ科学アカデミー創設(橋本伸也)
はじめに
一 科学革命の時代と知の世界の変容
二 ヨーロッパとロシア−−初期近代から近代へ
三 ライプニッツの「普遍」構想とロシア
四 ロシアとの接触と科学アカデミー設立提案
おわりに
科学都市としてのサンクト・ペテルブルグ(梶 雅範)
はじめに−−ロシアにおける自然科学の導入と時代区分
一 科学アカデミーとサンクト・ペテルブルグ
二 大学とサンクト・ペテルブルグ高等教育の整備と専門学会
三世代のロシアの化学者たち/第三世代の化学者メンデレーエフ/ロシア化学会の発展
三 転換期のサンクト・ペテルブルグの科学者たち
イパーチエフ−−亡命した科学者/ヴェルナツキー−−祖国に残った科学者/
ガモフの場合−−新世代の物理学者
四 その後−−科学アカデミー体制
革命の時代のペテルブルグ/ペトログラード(土屋好古)
はじめに
一 ペテルブルグの近代化
人口/労働力/住環境
二 第一次世界大戦のインパクト
戦争と労働力の動員/原燃料問題/生産拡大/労働条件/食糧供給
三 革命のなかのペトログラード
革命と都市のトポス/場の名前/革命と秩序
むすびにかえて
ペテルブルグの言語学−−二〇世紀言語学への貢献(三谷惠子)
はじめに
一 ペテルブルグの言語研究の主な流れ
ペテルブルグの学者たち/マールの遺産
二 ペテルブルグの音韻論
ペテルブルグ音韻学派/シチェルバの音韻論/モスクワ学派、プラハ学派との違い/
形態音韻論との関係/ロシア語の音素はいくつあるか
おわりに
第二部 都市のイメージ/文芸の歴史
ペテルブルグのエネルギー−−文学はそれをどう捉えてきたか(郡 伸哉)
一 狂気と光のあいだ
二 都市と人間
三 洪水のエネルギー
四 「スチヒーヤ」という言葉
五 人間を動かす力の諸相
六 ペテルブルグの原初性
七 「スチヒーヤ」の二面性
八 自己と世界のシンクロナイズ
九 光の変奏
一〇 最 後 に
ペテルブルグの芸術−−美術都市と反コンセプチュアリズム(鈴木正美)
一 ペテルブルグと情報
二 人工都市ペテルブルグの美術
三 エルミタージュ美術館と世界モデル
四 破壊と再創造の二〇世紀ロシア美術
五 「地方都市」レニングラードの美術
六 ロシア・アヴァンギャルドの継承
七 なぜペテルブルグにコンセプチュアリズムはなかったのか
さいごに
ナルキッソスの水に映る街−−劇場都市ペテルブルグ(楯岡求美)
はじめに
一 メディアとしての都市空間
二 語られるものとしての都市の歴史
三 「劇的」な都市、ペテルブルグ
四 仮面、そしてペテルブルグの演劇性
男性性と女性性/石と水/直線と迷宮
五 幻想のなかのペテルブルグ
六 ユートピアとしての都市ペテルブルグ(または記憶の創造と奪還)
七 ナルキッソスの水に映るペテルブルグ−−ペテルブルグの位相
八 もうひとつのペテルブルグ−−未来へのプロジェクト
過去と現在−−ペテルブルグ文学のレトリック(望月哲男)
はじめに
一 ペテルブルグ文学の表情
二 修辞的環境
三 ペテルブルグ・コンシャスな現代小説
ワシーリー・アクショーノフ『三つの外套と鼻』(一九九六)/ドミートリー・ゴルチェフ
『カエル』(二〇〇二)/アンドレイ・リョーフキン『ロシア民話としてのドストエフスキー』
(二〇〇〇)/オレーグ・ストリジャーク『少年』(一九九三)/ナタリヤ・ガルキナ
『聖ペトロ群島』(一九九九)/レフ・グニン『ペテルブルグ』(二〇〇三?)
む す び
サンクト・ペテルブルグ関連歴史年表