北海道大学大学院法学研究科研究選書
アメリカの環境訴訟
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-8329-6684-0 C3032
奥付の初版発行年月:2008年01月 / 発売日:2008年01月下旬
アメリカ環境法研究の第一人者が1970 年代から最近までの環境訴訟の動向を,原告適格論の流れに焦点を合わせて全体的,かつ簡明に叙述。 単なる判例紹介に止まらず,事件の背景や関連する法律の概要,当事者の歴史や沿革,活動内容,社会的評価等にも言及する.
畠山 武道(ハタケヤマ タケミチ)
1944年 北海道旭川市生まれ
1967年 北海道大学法学部卒業
1972年 北海道大学大学院法学研究科博士課程修了
1973年 立教大学法学部専任講師。その後,同助教授,教授
1989年 北海道大学法学部教授
2005年 上智大学大学院地球環境学研究科教授,現在にいたる
主 著
『アメリカの環境保護法』北海道大学図書刊行会,1992年
『環境法入門』〈共著〉日本経済新聞社,初版2000年,第2版2003年,第3版2007年
『環境影響評価実務—環境アセスメントの総合的研究』〈共著〉信山社,2000年
『自然保護法講義』北海道大学出版会,初版2001年,第2版2004年
『生物多様性保全と環境政策—先進国の政策と事例に学ぶ』〈共著〉北海道大学出版会,2006年)
目次
第一章 アメリカ環境訴訟手続
第一節 裁判制度のあらまし
一 二本立ての裁判制度
二 事物管轄権
三 対人管轄権
四 裁判地
第二節 司法審査訴訟の種類
一 個別制定法による司法審査訴訟
二 一般制定法による司法審査訴訟
三 制定法によらない司法審査訴訟
第三節 司法審査訴訟と訴訟要件
一 司法判断適合性とその根拠
二 司法判断適合性の内容
三 行政救済の完了(exhaustion of administrative remedies)
四 第一次的管轄権(primary jurisdiction)
第四節 環境訴訟の手続
一 トライアル前手続
二 トライアル(正式事実審理)
第五節 環境訴訟と司法審査規定
一 連邦環境法の司法審査規定
二 APA(連邦行政手続法)の司法審査規定(条文番号は、合衆国法典による)
三 市民訴訟規定とAPA
第二章 合衆国における原告適格法理の変遷
第一節 政府を被告とする訴訟と私権訴訟モデル
第二節 行政国家の到来と原告適格法理の登場
一 公的規制の増加と司法権の反発
二 司法消極主義の支配と「法的権利」テスト
三 新たな受益者の登場と「法的に保護された利益」テスト
四 連邦行政手続法の制定と「法的損害」規定
第三節 市民運動の台頭と原告適格論
一 司法積極主義への転換
二 公益の代弁者としての環境団体──ハドソン川揚水式発電所事件
第四節 原告適格の拡大と新たな混迷の始まり──「事実上の損害」テストへの転換
一 フラスト対コーエン事件
二 データ処理サービス団体連合会事件
三 「事実上の損害」テストの意義と評価
第五節 環境の時代の原告適格論
一 ミネラルキング渓谷事件──事実の経過
二 訴えの提起と下級審裁判所判決
三 最高裁判所判決
四 SCRAP事件判決と原告適格の究極の拡大
第六節 保守化の時代の原告適格論
一 憲法訴訟・納税者訴訟等における原告適格の制限
二 原発訴訟の原告適格──デューク電力会社事件
三 小括
四 余録──日本捕鯨協会事件
第三章 スカリアの時代と現代原告適格論の完成
第一節 スカリア裁判官の原告適格論
第二節 全米野生生物連盟事件(ルハンⅠ判決)
一 事実の概要
二 最高裁判所判決
第三節 野生生物の防衛者事件(ルハンⅡ判決)
一 事実の概要
二 最高裁判所判決
三 ルハンⅡ判決(スカリア理論)の評価と批判
第四節 現代原告適格論の構造
一 原告適格要件の定式化
二 「事実上の損害」の態様
三 「事実上の損害」の発生要件
第四章 利益の圏内テストとライプネス
第一節 利益の圏内テスト
一 利益の圏内テストの意義
二 環境訴訟と利益の圏内テスト
三 市民訴訟条項と利益の圏内テスト(ベネット対スピア事件)
第二節 ライプネス(紛争の成熟)
一 ライプネスの意義
二 環境訴訟とライプネス
三 国有林管理計画を争う訴訟
四 オハイオ森林協会事件
第五章 手続違反を主張する者の原告適格
第一節 NEPA訴訟の原告適格
一 NEPAとNEPA訴訟
二 問題の整理
三 ルハンⅠ・Ⅱ判決以前の控訴裁判所判決
四 全米野生生物連盟事件(ルハンⅠ判決)
五 野生生物の防衛者事件(ルハンⅡ判決)
六 ルハンⅡ判決以降の控訴裁判所判決
七 判例の分析と要約
第二節 エイキンズ事件
第六章 レイドロー事件判決とその波紋
第一節 レイドロー事件
第二節 レイドロー事件以後の控訴裁判所判決
一 「事実上の損害」に関する控訴裁判所判決
二 「手続的損害」、「情報的損害」に関する控訴裁判所判決
三 規則制定を争う原告の「損害」立証の程度
第三節 レイドロー事件以後の最高裁判所判決
第七章 市民訴訟と原告適格
第一節 市民訴訟の概要
一 市民訴訟の意義
二 市民訴訟の沿革
三 主要な市民訴訟条項
第二節 市民訴訟の手続的要件
第三節 市民訴訟の原告適格
一 「事実上の損害」の要否(ルハンⅡ判決)
二 団体の原告適格
三 過去の違法行為に対するペナルティの賦課
第四節 スチール会社事件
第五節 市民訴訟と訴訟手続上の制約
第六節 市民訴訟の推移と評価
第八章 動物に原告適格はあるのか
第一節 種の保存法と捕獲禁止規定
一 種の保存法と「捕獲」の禁止
二 ESAの捕獲禁止規定
第二節 ハワイ島マウナケアにて
一 パリラ(キムネハワイマシコ)
二 事件の発端
三 パリラⅠ判決
四 パリラⅡ判決
五 パリラⅢ判決
六 パリラⅣ判決
第三節 スイートホーム事件
一 事実の概要
二 最高裁判所判決
第四節 フロリダ海岸のウミガメ
一 ウミガメの直面する過酷な生存状況
二 アカウミガメⅠ判決
三 その後の本案審理
四 アカウミガメⅡ判決
五 アカウミガメⅢ判決
六 アカウミガメ判決の波紋
第五節 パリラⅣ判決を引用して動物の原告適格を認めた判決
一 マダラウミスズメ事件
二 アカウミガメ事件
第六節 原告適格を否定された動物達
一 ハワイガラス(アララ)
二 イルカ(愛称カマ)
三 オポッサム
四 ギンザケ
五 判例集に登場するその他の動物達
第七節 そして、クジラ・イルカ
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