外国人介護士と働くための異文化理解
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-87259-751-6 C1036
奥付の初版発行年月:2022年02月 / 発売日:2022年02月上旬
介護職は異文化理解の時代へ―介護観・死生観を理解するポイント・ともに働きやすくなるコツとは―
人手不足が予想される介護分野では、外国人介護士の存在が欠かせなくなっている。経済連携協定(EPA)、日本語学校や介護福祉士養成校への留学、技能実習制度といったルートのほか、新しい在留資格「特定技能」により更に門戸が広がって、外国人介護福祉士は大幅に増えることが予測されている。
しかし、人手不足の解決策として外国人介護士を受け入れた施設などの現場では、日本人職員の負担増にともなう反対運動や離職、外国人介護士の孤立や退職など、様々な問題が発生している。
外国人介護士の受け入れを円滑に進めるために考慮すべきなのは、教育体制、待遇、国家試験支援制度、日本語教育、人間関係などであるが、実は「それぞれの文化が行動に与える意味の違い」を理解することが最も重要である。日本人によくある「言わなくてもわかってもらえる」、「報連相や時間厳守はできて当然」という考え方は、同じ文化を共有する日本人に特化した感覚であり、外国人にも通じるものではないということを自覚して、意識的に行動することが求められる。
本書は、主に外国人介護士の受け入れを推進している施設管理者や現場の介護福祉士、医療福祉系の職種を目指す学生を対象として、文化背景の異なる外国人介護士への理解を深め、なぜそのように行動するのか、行動の背景にある文化的視点に立った解釈を身に付けるためのヒントやコツを伝授する。制度的背景、多国間の制度比較に加え、送り出し国における文化や死生観、介護観に焦点をあて、日本との違いや指導上のポイントを詳しく解説する。他国の文化的視点から介護を捉え、自国の伝統的介護観、家族観、死生観を考え直すことで、外国人介護士と共に実現する高齢者ケアのあり方を展望する。介護現場で使える英語・インドネシア語・ベトナム語・ミャンマー語の用語リスト付き。
渡辺 長(ワタナベ オサム)
帝京科学大学医療科学部理学療法学科講師
大阪大学非常勤講師、兵庫県立大学非常勤講師、Aisyiyah Yogyakarta 大学客員教授
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。
国内の総合病院にて理学療法士として勤務、米国カイザー病院にて理学療法技術研修参加(9ヶ月)、青年海外協力隊にてネパール総合病院で活動(2年間)、マヒドン大学ASEAN 保険開発研究所プライマリーヘルスケア管理修士課程修了。専門はグローバルヘルス、アジアの高齢者福祉、地域社会学。主な著作として「タイの伝統的ケアの揺らぎー高齢者ケアを担う家族に対する質的分析―」『東南アジア研究』(59 巻2 号、2022 年)など
がある。所得、社会保障、マンパワー、地域資源が限定的な東アジア諸国の中で深刻化する高齢化に対し、医学、疫学、社会学、地域学を踏まえた分野横断的観点からどういう貢献ができるのかを国境を越えて模索している。
小島賢久(コジマヨシヒサ)
学校法人森ノ宮医療学園理事、森ノ宮医療大学特任教授、森ノ宮医療学園ウェルランゲージスクール教務事務部長
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程修了。博士(保健学)。
2019 年4 月森ノ宮医療学園ランゲージスクール(現森ノ宮医療学園ウェルランゲージスクール)を開校し、外国人日本語教育を開始。2021 年4 月からは同校で介護福祉学科を開設し、日本語学科、介護福祉学科が一体となった外国人のための介護福祉士養成教育を行っている。
米田 裕香(ヨネダ ヒロカ)
独立行政法人国際協力機構(JICA)職員
MA in Disability and Global Development, University of Leeds 修了。金沢大学旧医学部保健学科理学療法専攻卒業。民間病院経験を経て、旧青年海外協力隊(理学療法士)としてガーナで活動、JICA ジュニア専門員(社会保障、障害者、高齢者、職業訓練等関連事業担当)、JICA タイ国高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト専門家を経て2020 年から現職。主な著作として、「タイにおける高齢者支援分野でのソーシャルワーク、ケアマネジャー育成等の取り組み」『世界の社会福祉年鑑』(旬報社、2018 年)がある。
中込 節子(ナカゴミ セツコ)
医療法人理事社会福祉法人理事、社会福祉法人評議員。
20 年以上、高齢者介護施設の経営及び運営にかかわる。また、民生委員として地域の福祉活動やボランティア団体にも参加し、国際的、社会的なボランティア活動を行っている。
糠谷 和弘(ヌカヤ カズヒロ)
1971 年東京生まれ。株式会社JTB で企業による海外視察の企画を行った後、株式会社船井総合研究所に入社。2000 年の介護保険施行に合わせて、介護・障害サービス・保育専門の部署を立ち上げ統括責任者として全国各地の法人、事業所立ち上げを支援。2012 年に介護事業に特化した株式会社スターコンサルティンググループを立ち上げ、のべ顧問先数は500 法人以上となる。ほかに介護・保育事業会社、外国人技能実習生受入監理団体などを経営。
ガイアの夜明けの出演をはじめ、連載、執筆多く、著書に『ディズニー流!みんなを幸せにする「最高のスタッフ」の育て方』(PHP 研究所、2012年)、『あの介護施設はなぜ人が集まるのか』(PHP 研究所、2013 年)、「やさしくわかる!すぐに使える!「介護施設長&リーダー」の教科書」(PHP研究所、2018 年)などがある。
渡辺幸倫(ワタナベ ユキノリ)
相模女子大学学芸学部教授
早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。大東文化大学非常勤講師、立教大学兼任講師などを経て、現職。専門は多文化教育、言語教育。主な業績に、『多文化共創社会への33 の提言:気づき愛GlobalAwareness』(共著、都政新報社、2021 年)、『多文化社会の社会教育公民館・図書館・博物館がつくる「安心の居場所」』(編著、明石書店、2019 年)、『買い物弱者とネット通販在外子育て家庭からの示唆』(共編著、くんぷる、2019 年)、『多文化「共創」社会入門移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』(共著、慶應義塾大学出版会、2016 年)、『多文化社会の教育課題:学びの多様性と学習権の保障』(共著、明石書店、2014 年)などがある。
坂内 泰子(バンナイ ヤスコ)
(一財)自治体国際化協会地域国際化推進アドバイザー
東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。神奈川県立外語短期大学、神奈川県立国際言語文化アカデミア教授として、日本語教育、日本語ボランティア養成、および公務員への「やさしい日本語」関連研修等に携わるとともに、神奈川県内で入職後の介護の技能実習生を対象とした日本語研修を担当。主な著作として「やさしいにほんごの普及をめぐって」(2013『神奈川県立国際言語文化アカデミア紀要』第2 号)、「やさし
い日本語―「優しい」と「易しい」で伝えることから」(『多文化共創社会への33 の提言』都政新報社、2021 年)、そのほか地域日本語教育用教材として『つながるにほんごかながわでともにくらす』(神奈川県、2013年)、『やさしいにほんごでつながるコミュニケーション・シート』(神奈川県、2018 年)などがある。
河森 正人(カワモリ マサト)
大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は高齢者福祉。
主な著作に『タイの医療福祉制度改革』(御茶の水書房、2009 年)、『東アジア新世紀』(大阪大学出版会、2013 年)がある。
郭 芳(カク ホウ)
同志社大学社会学部助教
同志社大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会福祉学)。専門は高齢者福祉。主な著作として『中国農村地域における高齢者福祉サービス―小規模多機能ケアの構築に向けて―』(明石書店、2014 年)、「中国の介護市場に進出した『日本式介護』の特徴を探る―事例調査を通しての分析―」(『評論・社会科学』124 号、107-124 頁、2018 年)、「中国における福祉の『市場化』の展開と特徴に関する考察」(『社会政策』10(2)、
105-116 頁、2018 年)がある。
後藤 美恵子(ゴトウ ミエコ)
東北福祉大学総合福祉学部社会福祉学科准教授
専門は社会福祉学(ベトナム・カンボジア高齢者福祉、認知症ケア)。
2011 年11 月、2013 年9 月にベトナム障害児・スポーツ教育協会(OSEDC)より功績賞、2013 年12 月ベトナム赤十字社より感謝状を受賞。主な著作として「ベトナム社会における高齢者福祉の動向」(『社会福祉研究』13-136 頁、2016 年)、「ベトナム農村部における高齢者の生活課題―コミュニティの社会的関係からの示唆」(『東北福祉大学研究紀要』第42 巻、17-30 頁、2018 年)、「ベトナムの人口構造と高齢者の生活の
関連性―農村部のおける地域機能」(『東北福祉大学研究紀要』第43 巻、19-34 頁、2019 年)などがある。
細田 尚美(ホソダ ナオミ)
長崎大学多文化社会学部/研究科准教授
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程修了。博士(地域研究)。
専門は文化人類学、東南アジア地域研究、国際労働移民研究。主な著作として『湾岸アラブ諸国の移民労働者―「多外国人国家」の出現と生活実態』(編著、明石書店、2014 年)、『幸運を探すフィリピンの移民たち―冒険・犠牲・祝福の民族誌』(明石書店、2019 年)がある。
柳澤 沙也子(ヤナギサワ サヤコ)
長崎大学生命医科学域(保健学系)助教、特定非営利活動法人Rehab-Care for ASIA インドネシア事業リーダー。
甲南女子大学大学院看護学研究科博士前期課程修了。修士(看護学)。専門は国際保健、在宅看護学、老年看護学等。病院、有料老人ホーム等で勤務した後、旧青年海外協力隊(JICA 海外協力隊)看護師隊員としてインドネシア共和国に派遣。甲南女子大学看護リハビリテーション学部実習助手、兵庫県立大学地域ケア開発研究所非常勤研究員等を経て2021 年より
現職。旅と電車と読書と高齢者が好き。
岩田 研二(イワタ ケンジ)
ユニ・チャーム株式会社
藤田医科大学大学院修士課程修了。旧青年海外協力隊(理学療法士)としてタイの障害者施設で活動後、有限会社医療福祉科学研究所にてタイにおけるリハビリテーション事業に関する基礎調査を実施。その後、2020 年から現職で、顧客の外国人介護士に対して排泄ケアの勉強会などを実施する機会もある。主な著作として、「グローバルヘルス、途上国の健康問題」『国際リハビリテーション学~国境を越えるPT・OT・ST』(羊土社、
2016 年)、『日本にいれば普通の人、海外にいれば特別な人:タイで過ごした2 年間』(kindle 版、2017 年)296
目次
序章 外国人介護士が現場にもたらすもの
第1部 受け入れ制度と諸外国の情勢
第1章 外国人介護士受け入れ制度
第2章 諸外国における外国人介護人材の受け入れ事情
第2部 外国人介護士受け入れの手順
第3章 受け入れ施設における体制構築のポイント
第4章 外国人介護士の育成・定着と活躍できる環境づくりのポイント
第3部 異文化介護を考える視点
第5章 文化背景が異なる人々との介護コミュニケーション
第6章 やさしい日本語―同僚は外国人
第7章 異文化の死生観と看取り
第4部 主要送り出し国の異文化介護観
第8章 中国における介護観とその実践
第9章 ベトナムにおける介護観とその実践
第10章 フィリピンにおける介護観と実践
第11章 インドネシアにおける介護観と実践
第12章 タイにおける介護観とその実践
付録 介護現場で使える挨拶
あとがき
著者紹介