ブリテン問題とヨーロッパ連邦 フレッチャーと初期啓蒙
価格：5,500円 (消費税：500円)
ISBN978-4-87698-256-1 C3022
奥付の初版発行年月：2013年01月 ／ 発売日：2013年01月中旬
「市民」の再生と国家経済の自立へ——スコットランドを拠点に，諸国民の「自由と独立」を唱えた知られざる思想家・フレッチャー．ジョン・ロックやダニエル・デフォーとの比較を交え，ブリテンとの合邦，アメリカ新植民地・ウェールズ・アイルランドとの「複合国家」関係史に位置づけ，従来の「イギリス史」に新たな一頁を加える．
村松 茂美（ムラマツ シゲミ）
1950年 静岡県掛川市に生まれる
1974年 横浜国立大学経済学部卒
1980年 一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学
現在 熊本学園大学経済学部教授 社会思想史専攻
主要著書・論文：共編著『はじめて学ぶ西洋思想』（ミネルヴァ書房，2005年），'Andrew Fletcher's criticism of commercial civilization and his plan for European federal union' ( Sakamoto and Tanaka（eds.）The Rise of Political Economy in the Scottish Enlightenment, Routledge, 2003），「フレッチャーにおける「国民的政治共同体」と国際世界」（佐々木・田中編著『啓蒙と社会—文明観の変容』京都大学学術出版会，2011年）
目次
まえがき
序章 フレッチャーとその研究史
1 研究史の整理と課題
（１）コモンウエルスマンと初期啓蒙
（２）シヴィック的伝統
（３）「国家理性」と「ブリテン問題」
（４）本書の構成
2 フレッチャーとその時代
（１）亡命と反乱
（２）名誉革命と国際的戦争
（３）一七〇三年のスコットランド議会
（４）合邦問題
第Ⅰ部 歴史叙述と国民的政治共同体
第1章 イングランド常備軍論争
1 常備軍論争の経過
2 「ゴシック的」均衡の形成と解体
（１）「ゴシック的」均衡の形成
（２）商業文明の浸透と「ゴシック的」均衡の解体
（３）『民兵論』の歴史認識の特徴と意義
3 商業文明と民兵キャンプ—トランドとフレッチャー—
4 「ゴシック的」均衡と「真実の均衡」—フレッチャーとデフォー—
（１）戦闘様式と国際情勢の変化
（２）庶民階級の興隆と議会の確立
（３）土地所有と主権
むすびにかえて—常備軍論争の意義—
第2章 スコットランドの歴史叙述と国制論
1 歴史叙述の変遷—メイジャーとブキャナン—
2 合邦期の「古来の国制」論—ジョージ・リドパス—
（１）王権制限論と「古来の国制」
（２）「古来の国制」の歴史的起源
（３）古来の国制と封建制
3 合邦と歴史叙述—シートンとクラーク—
（１）人類の「本源的構成」
（２）「ブリテン人」の歴史
4 ゴシック政体論と「古来の国制」論
（１）ヨーロッパ史とスコットランド史
（２）軍事・統治の世界と労働の世界
むすびにかえて
第3章「奢侈」と「貧困」—外国貿易、家内奴隷制、農業改革
1 「奢侈」と「壮麗」
2 「ダリエン計画」と経済発展
（１）「計画」の出現
（２）「計画」の思想史的意義
（３）「計画」による利益
3 貧困の救済策—「家内奴隷制」論と農業改革論—
（１）「家内奴隷制」の復活
（２）農業制度の改革
（３）軍人的精神とインダストリの精神
むすびにかえて
第Ⅱ部 世界君主制とヨーロッパ連邦
第4章 専制と世界の奴隷化—陸上帝国と海洋帝国
1 一七世紀における「国家的利益」をめぐる言説—ロアンとテンプル—
2 『スペイン論』の意図
3 スペイン衰退の原因と復興案
（１）スペイン衰退の原因
（２）領土の「譲渡・交換」
4 世界帝国への道
5 危機への対応—ダヴナント、リドパス、トランド、フレッチャー—
第5章 農業主義と国際平和—貿易の利益と真実の利益
1 『対話の説明』の課題と構成
2 ロンドンの習俗の腐敗
3 王権制限論
4 合邦論争の論点—法、教会、貿易—
5 包括的合邦批判
6 対アイルランド政策批判
7 「真実の利益」と国際平和の構造
むすびにかえて
第6章 「ブリテン問題」と政治算術
1 国家理性と必要性の原理
2 政治算術と貿易観
3 「アイルランドのイングランド人」—モリニーとブルースター—
4 合邦と富の集中—マックスウエルとトランド—
5 世界市民と統治の技術
むすびにかえて
終章 〈合邦〉から〈啓蒙〉へ—洗練と産業の都市
はじめに
1 合邦後の貴族とジェントリ
2 農業知識改良者協会
3 都市の改善と国民の繁栄
4 習俗と産業の歴史叙述
5 洗練の都市とインダストリ
おわりに
あとがき
注
文献目録
人名索引
事項索引