生物資源から考える21世紀の農学2
家畜生産の新たな挑戦
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-87698-337-7 C3361
奥付の初版発行年月:2007年07月
和牛は、今や世界一の品質を誇る。それを可能にしたのは何か。その生産の実態を中心に歴史的にたどり、畜産の最前線を総覧する。京都大学は、和牛研究においてはわが国を代表する拠点の一つであり、貴重な資料なども公開される。また、BSE問題などで表面化した社会との接点にも積極的に言及し、畜産の問題点や安全性を取り上げつつ、その近未来像を究明する。
今井 裕(イマイ ヒロシ)
京都大学大学院農学研究科教授(家畜繁殖学、生殖生物学専攻)
1953年 山口県生まれ
1983年 京都大学大学院農学研究科博士課程修
1984年 米国国立がん研究所研究員
1986年 農林水産省畜産試験場研究員
1989年 豪州連邦科学技術研究機構客員研究員
1991年 農林水産省畜産試験場研究室長
1998年より現職
主要論文:
The mitochondrial bottleneck occurs without reduction of mtDNA content in female mouse germ cells. Nature Genetics, 39: 386-390 (2007)
『食の未来を考える』,健康と食を問い直す生物学,岩波書店(2003)
『クローン動物はいかに創られるのか』,岩波科学ライブラリー,岩波書店(1997)
目次
序 文
第1章 和牛はわが国固有の遺伝資源—佐々木義之
はじめに
1 野生動物がどうして家畜になったか
—イノシシを家畜にしたものが豚である
2 反芻動物の不思議
3 和牛はどこから来たか
4 和牛改良と線形代数とコンピュータ
5 和牛でもゲノム解析
6 上質牛肉の輸出を考えてみては
第2章 牛をふやす—今井 裕
はじめに
1 人工的に牛をふやすということ
2 雌側からの家畜改良
3 牛は生涯で何頭の子牛を生産する?
4 生命操作の時代
5 クローン(核移植)技術
おわりに
第3章 肉牛を育てる—矢野秀雄・木村信熙
はじめに
1 日本の肉用牛の特徴と飼育の歴史
2 肉牛の成長
3 肉牛の肥育技術
4 脂肪交雑のメカニズム
5 牛肉のおいしさとそのコントロール
6 安全な牛肉の生産
おわりに
第4章 スーパーカウとそれをとりまく環境—牛乳生産の未来—久米新一
はじめに
1 乳牛の泌乳能力に限界はあるのか?
2 スーパーカウの誕生
3 乳牛に骨粗鬆症は発生しないのか?
4 地球の温暖化は牛によってもたらされる?
おわりに
第5章 風土が育んだ家畜—熱帯の在来反芻家畜の特性—川島知之
はじめに
1 伝統的な飼養管理
2 栄養生理学的特性評価
3 持続的農業と家畜の役割
おわりに
第6章 畜産と社会の接点—広岡博之
はじめに
1 日本の畜産と牛肉生産
2 世界の牛の生産システム
3 生産システムの評価法
4 牛肉の価格の決定要因—BMSナンバ−とBSEの影響
5 最先端技術の応用
6 21世紀における家畜生産の展望
おわりに
第7章 古くて新しい近未来型家畜生産—守屋和幸・北川政幸
1 家畜管理の基本となる個体識別技術
2 家畜生産に伴う環境負荷とその対応
3 循環型農業のなかでの動物生産
第8章 家畜生産の問題点と安全性の確保—BSEを中心に—小澤義博
1 BSE(牛海綿状脳症)の発生とその起源
2 鳥インフルエンザの発生とその起源
3 家畜生産の現状と問題点(病気,ズーノーシス,抗生物質)
4 食肉の安全性を確保するための手段
5 食の安全性とリスク分析
6 リスクアセスメントとリスクコミュニケーション
7 動物福祉の考え方
索 引
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