災害対応の地域研究3
国際協力と防災 つくる・よりそう・きたえる
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-87698-500-5 C1336
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年04月上旬
日本と持ちつ持たれつの関係にある東南アジアは災害多発地域である。タイ洪水、フィリピン台風、カンボジア内戦、東ティモール独立紛争などの災禍に対する地域社会の対応を辿りながら、防災・復興と外部者の果たす役割、国際協力のあり方を考える。地域の抵抗力をつくり、回復力によりそい、支援力をきたえるために我々に出来ることとは?
牧 紀男(マキ ノリオ)
京都大学防災研究所教授
京都大学大学院工学研究科博士課程修了
研究分野:復興、防災、災害とすまい
主な著作に、『復興の防災計画――巨大災害に向けて』(鹿島出版会、2013)、『災害の住宅誌――人々の移動とすまい』(鹿島出版会、2011)、『組織の危機管理入門――リスクにどう立ち向えばいいのか』(京大人気講義シリーズ、丸善、2008、共著)など。
山本 博之(ヤマモト ヒロユキ)
京都大学地域研究統合情報センター准教授
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了
研究分野:東南アジア地域研究、災害対応と情報
主な著作に、『脱植民地化とナショナリズム――英領北ボルネオにおける民族形成』(東京大学出版会、2006)、『復興の文化空間学――ビッグデータと人道支援の時代』(災害対応の地域研究1、京都大学学術出版会、2014)など。
目次
口絵
「災害対応の地域研究」シリーズの刊行にあたって
凡例
はじめに――アジアと災害・防災 [牧 紀男]
アジアは災害で繋がっている / アジアの災害の変化 / どのようにして災害とつきあうのか / 打たれ強いアジアを目指して
第一部 地域の抵抗力をつくる
第1章 水害は不平等に社会を襲う――二〇一一年タイ大洪水 [星川圭介]
自然の恵みと災い
1 水害の特質と社会対立
2 タイの洪水の特徴と社会
3 二〇一一年大洪水と氾濫水を巡る対立
4 被害を踏まえた治水対策
5 望ましい治水とは
第2章 自然災害のリスクとともに生きる――二〇一三年フィリピン台風災害とサマール島 [細田尚美]
近隣地域間の共助
1 実践から読み解く共助のありかた
2 フィリピンの地域社会と防災
3 台風ヨランダとサマール島
4 近隣地域からの共助の諸相
5 フィリピンの共助の特徴と国際協力
コラム1 サマール島のセイフティネット、「ブオタン」な人の連鎖 [細田尚美]
第二部 回復力によりそう
第3章 紛争とその後の復興が教えること――一九七〇~九三年カンボジア紛争 [小林 知]
国際関与と生活再建
1 災害としての紛争とカンボジア
2 カンボジア紛争は何だったのか
3 コミュニティの再構築――経験の壁と向かい合う
4 地雷除去と開発
5 人間社会の発展
第4章 「小さな物語」をつなぐ方法――一九七五~九九年東ティモール紛争 [亀山恵理子]
「物語」と社会の再生
1 東ティモールを知っていますか
2 東ティモールの独立をめぐって
3 「いかに傷ついたのか」――ある対話集会と人権侵害の調査
4 「いかに闘ったのか」――抵抗博物館と苦難の意味づけ
5 痛みと多様な語り
6 南相馬を舞台にしたある映画に学ぶこと
7 「私たちの物語」を紡ぐ
コラム2 災害の記憶――津波遺構に託される生存者の思い [西 芳実]
第三部 支援力をきたえる
第5章 研究所の成長と共に歩む――インドネシアとの防災協力 [小林英之]
住宅・都市
1 災害体験を共感できる列島国インドネシア
2 マジャレンカ地震(一九九〇年七月六日、マグニチュード五・二)
3 パレンバンの復興市街地訪問
4 リワ地震(一九九四年二月一五日、マグニチュード七・〇)
5 イリアンジャヤ津波災害(一九九六年二月一七日、マグニチュード八・一)
6 バンダアチェ住宅被害調査と復興支援
7 防災協力とは何だったか
第6章 災害でも止まらない社会へ――コミュニティ・企業・アジア [小野高宏]
企業防災と地域協力
1 自然災害とアジア
2 地域コミュニティ防災から企業防災へ
3 防災・減災を普及促進する国際機関と地域的取組み
4 ASEAN諸国の自然災害と防災体制
5 アジアに依存する日本――産業集積構造の構築
6 タイ大洪水による自動車産業への影響
7 大災害を経験した日本企業の対応
コラム3 大規模災害時の遺体の管理――救援者が知っておきたい知識 髙田洋介
おわりに――アジアの防災モデル確立に向けて [山本博之]
都市化するアジアとその回復力 /「現地の人は満足している」と「現地の仕組みが貧弱」を超えて / 完全には解決しない状況に折り合いをつける /「あそび」をもった専門性 / アジアの防災モデルを世界へ
索引
編著者略歴