シェイクスピア 残酷劇からの誕生 『タイタス・アンドロニカス』の劇作術
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-87698-692-7(4-87698-692-4) C3098
奥付の初版発行年月:2006年12月 / 発売日:2006年12月上旬
シェイクスピアの第3作『タイタス』は,エリザベス朝時代に一世を風靡した残酷劇に挑戦したものである.しかし,詩人は,これを単なる残酷劇だけに終わらせていない.観客の容易な感情移入を阻止したり,多面的キャラクターの登場人物を配するなど,後期四大悲劇に通ずるさまざまな工夫をほどこす.その作劇術の詳細な分析を通して大作家の誕生を予告する.
依田 義丸(ヨダ ヨシマル)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
1948年 京都市生まれ
1971年 京都大学農学部卒業
1973年 京都大学文学部卒業
1978年 京都大学大学院文学研究科博士課程
英語学英米文学専攻単位修得退学
滋賀大学経済学部講師、京都大学教養部助教授、
同総合人間学部助教授、教授を経て2003年より現職
著書
詩集『けいおす』(思潮社)
目次
まえがき
序文 『タイタス・アンドロニカス』をめぐって
第1章 第1復讐枠の設定
1.タイタスの登場——主人公の特異な性格づけ
2.復讐者タモラ
第2章 第1復讐枠の空洞化
1.悪党エアロンとヴァイスの伝統
2.劇作家エアロン
3.ラヴィニアの強姦——現実と言葉の乖離
第3章 第2復讐枠の構築
1.タイタスの嘆きとその無効化
2.タイタス対エアロンとタイタス対タモラ
3.復讐者タイタスと復讐対象の欠如
第4章 タイタスの復讐の開始
1.復讐対象の確定
2.悪党エアロンとタイタスの相対化
3.復讐者タイタスの狂気と正気
第5章 タイタスの復讐の成就と悲劇
1.タモラによる道徳劇的劇中劇
2.劇中劇と劇中現実
3.劇の中の劇としての復讐
第6章 残酷劇からの誕生
1.後の悲劇作品とのつながり
2.残酷さの変容
——『タイタス・アンドロニカス』から四大悲劇へ
3.復讐の枠組と『ハムレット』
結びにかえて 残酷劇としての悲劇『タイタス・アンドロニカス』
注
参考書目
補論1 劇作家と演出家
——『タイタス・アンドロニカス』の
1955年のピーター・ブルック演出
補論2 日本における『タイタス・アンドロニカス』上演
人名・作品名索引