文化政策の現在
文化政策の現在1 文化政策の思想
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-13-003495-1 C3300
奥付の初版発行年月:2018年02月 / 発売日:2018年02月下旬
文化振興を社会の根幹に据える文化芸術基本法の施行により,文化政策は注目を集めている.そこで,文化政策に関係する多様な事例を取り上げ,課題と可能性を抽出し,基礎づけることで今後の多様な要請に応え,目指すべき方向性を提言する.
小林 真理(コバヤシ マリ)
東京大学大学院人文社会系研究科教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
シリーズ刊行にあたって
はじめに
第I部 国家との相克
第1章 文化と政治(武田康孝)
1 はじめに
2 「積極的文化政策」への転——ナチ文化政策の示唆
3 大政翼賛会発会と文化部長・岸田のビジョン
4 「政治の文化性」をめぐる議論,文化人の期待そして翼賛会の変質
5 おわりに
第2章 検閲(李 知映)
1 はじめに
2 演劇統制の芽生え
3 演劇統制の法制化の始まり
4 思想統制による演劇統制
5 国家による演劇統制
6 おわりに
第3章 文化国家(中村美帆)
1 文化と国家に関する問題意識
2 ドイツの「文化国家(Kulturstaat)」概念と日本への影響
3 戦後日本で掲げられた「文化国家」論の盛衰と特徴
4 「文化国家」から「文化芸術立国」へ
第4章 文明の思想——帝国主義・植民地主義の胎動(山内文登)
1 はじめに
2 植民政策思想における文明・文化と平等・差異
3 文明論的植民政策と平等言説(1)——同化主義と「文明化の使命」
4 文明論的植民政策と平等言説(2)——間接統治と「旧慣尊重」
5 おわりに
第5章 文化の思想——帝国主義・植民地主義の転生(山内文登)
1 はじめに
2 文化論的植民政策と差異言説(1)——「文化国家」から「文化帝国」へ
3 文化論的植民政策と差異言説(2)——「民族自決」と植民政策の相対論的展開
4 ファシズムと「文化創造=破壊」の弁証法
5 文明・文化の近代と脱帝国化・脱植民地化の課題
6 おわりに——国民帝国における文化の自律・他律
第6章 文化政策論(新藤浩伸)
1 はじめに
2 文化政策論の一〇〇年
3 文化政策論の成立
4 「戦時」文化政策論
5 「戦後」の文化政策論
6 文化政策論が内包する思想
第II部 権利概念の創出
第7章 文化権(中村美帆)
1 文化論をめぐる議論の二つの次元
2 国際社会での議論の動向
3 文化芸術振興基本法以前の日本における文化権の議論
4 文化芸術振興基本法以後の日本における文化権研究の論点
第8章 芸術の自由(小林真理)
1 「芸術の自由」概念の成立——比較法的アプローチ
2 「芸術の自由」の検討——文化の専門職とは何か
第9章 アーツ・カウンシル(菅野幸子)
1 アーツ・カウンシルの理念と政策目標
2 一九七〇年代,アーツ・カウンシルのジレンマ
3 アーツ・カウンシルの持続可能性——アームズ・レングスの原則とリーダーシップ
4 アーツ・カウンシルの未来
第10章 分権(長嶋由紀子)
1 自治体「文化行政」の根源的課題
2 一九七〇年代フランスにおける革新自治体の伸張
3 参加民主主義を支えた自治体文化政策の思想
4 「地方分権」後の「分権」へ
第11章 文化の民主化,文化デモクラシー(土屋正臣)
1 はじめに
2 埋蔵文化財行政をめぐる今日的課題
3 市民参加論の源流
4 日本の文化財保護行政における文化の民主化を構成する複数の流れ
第III部 制度規範と文化
第12章 社会教育(新藤浩伸)
1 はじめに
2 一九四〇年代——社会教育の消滅/総合政策としての文化政策へ
3 戦後改革期——社会教育行政の復活と文化政策の挫折
4 一九七〇年代以降——文化行政の進展と社会教育批判
5 論争を超えて
6 おわりに
第13章 文化的発展(長嶋由紀子)
1 「大衆の文化的生活への参加及び寄与を促進する勧告」の意義と採択経緯
2 勧告における「文化的発展」の基本概念と論点
3 底流にある思想——フランスでの議論から
4 文化と市民性への問題意識
第14章 文化と経済(阪本 崇)
1 文化政策における二つの変化
2 芸術・文化と市場の失敗
3 経済政策としての文化政策
4 文化政策と文化の多様性
5 規範としての市場
第15章 地域・コミュニティ(友岡邦之)
1 日本における文化政策のメインターゲットとしての「地域」
2 「行政の文化化」再考
3 「芸術」とリベラリズム的価値観の共通性と,八〇年代文化施設建設ブーム
4 パターナリズム批判再考
5 創造都市と文化政策の新しいステージ
6 NPMの帰結としてのリバタリアニズム
第16章 文化多様性(河野俊行)
1 はじめに
2 オーディオ・ビジュアル産業をめぐる欧米対立の歴史的ルーツ
3 第二次世界大戦後——ハバナ憲章一九条
4 一九四七年GATT四条(露出済みフィルムの例外)
5 国境なきテレビ指令
6 ウルグアイ・ラウンド交渉——「文化的例外」
7 グローバリゼーションと文化支配——ウルグアイ・ラウンド前後のオーディオ・ビジュアル部門をめぐる状況
8 ウルグアイ・ラウンド以後における貿易と文化
9 WTOの枠組み外における文化
10 分析と今後の検討の方向——文化的例外から文化多様性へ
第17章 文化資源(小林真理)
1 はじめに
2 「活用可能性」を語る言葉
3 文化資源という言葉の必要性
4 文化資源の保存・公開・活用
第18章 仲介者(佐藤李青)
1 はじめに——アートマネジメントと「つなぎ手」
2 「アートマネジメント」という舞台
3 「アートマネージャー」の役回り
4 おわりに——「つなぎ手たち」のこれから
第19章 アーツアドミニストレーション(鬼木和浩)
1 アーツアドミニストレーションの意義
2 横浜市における文化行政の歴史とアーツアドミニストレーション
3 アーツアドミニストレーションにおける専門性
4 アーツアドミニストレーションにおける課題
Cultural Policy Studies
Vol.1 Concepts
Mari KOBAYASHI, editor