内容紹介
地域のなかで演じられていた芸能が,社会全体に浸透するまでにいたった背景を,作品の内容や芸能者を輩出した座の構造から明らかにする,日本中世史学の第一人者による待望の能楽論.庶民の生活に根ざしつつ,時の権力者に受容されてきた寿祝性のなかに,中世社会の特質と文化的側面を明らかにする.
目次
総論 総合芸能としての猿楽能——老若男女貴賤都鄙の芸能
第I部 神々と地域社会の中世
第一章 神能の位置——猿楽能の寿祝性と在地共同体
第二章 夢幻能の変成——栄光を語る亡霊の出現
第三章 時代を映しだす物狂能——異性・子売り・母性
第四章 虚構の「中世神話」の形成——能楽・神道集・縁起を中心に
第II部 表現のなかの女性たち
第5章 着衣する身体——能楽における女装束
第六章 能楽における女の語り
第III部 芸能の場の成立
第七章 中世芸能座の構造と差別
第八章 中世猿楽座の組織構成——結崎座・円満井座の座規約を中心に
あとがき