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概説 中華圏の戦後史

概説 中華圏の戦後史

A5判 276ページ
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-13-022028-6 C3022
奥付の初版発行年月:2022年10月 / 発売日:2022年10月下旬

内容紹介

中国大陸、香港、マカオ、台湾という日本社会と隣接する地域が第二次世界大戦終結後、いわゆる戦後の約80年のなかでどのような歴史をあゆんできたのか。揺れ動く世界の状況のなかで大国中国の動向がますます注目される現在、その歴史を理解し、未来を展望する道筋を示す。

著者プロフィール

中村 元哉(ナカムラ モトヤ)

1973年名古屋に生まれる。2003年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。主要著書に『中国、香港、台湾におけるリベラリズムの系譜』(有志舎、2018年)、『概説 中華圏の戦後史』(編、東京大学出版会、2022年)などがある。

森川 裕貫(モリカワ ヒロキ)

関西学院大学文学部教授

関 智英(セキ トモヒデ)

津田塾大学学芸学部准教授

家永 真幸(イエナガ マサキ)

東京女子大学現代教養学部准教授

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき──日本社会の隣人、中華圏を知ろう! (中村元哉)
 中華圏とは何か
 日本の鏡としての中華圏の戦後史
 ITとAIの時代の教養書兼講義用教科書

序 章 近代国家中国のあゆみ──変革の時代(1900年代-40年代)
 1.文明と近代と革命という時代性
  中華文明の動揺
  混沌とした時代
 2.第二次世界大戦後の風景──出発点としての1945年
  憲政と革命の二大主旋律
  戦勝国としての中国
 3.中国国民党から中国共産党への政権交代
  戦勝国中国の苦悩
  憲政から革命へ

史料解読1 胡適「近代西洋文明に対する吾人の態度」

第一章 大陸中国─建設と混乱の時代(1950年代-70年代)
 1.毛沢東体制の始動と展開
  毛沢東という存在
  人民共和国の理念
  共産党の優位 
  民族区域自治の成立
  人民共和国初期の中ソ関係
  朝鮮戦争の衝撃
  台湾と香港
  統制の強化
  人民共和国初期の社会の状況
  社会主義の実現をめぐって
  外交の新機軸
  「大躍進」の虚と実
  中ソ対立と日中関係の変化

図版解説1 政治運動に動員された人びと
史料解読2 日本人が観察した「大躍進」

 2.毛沢東体制の動揺と終焉
  調整政策の推進と反発
  文化大革命の発動
  林彪の台頭と没落
  対外関係の混乱と立て直し
  毛沢東の死

図版解説2 筆を執る毛沢東
史料解読3 鄧小平「どのようにして農業生産を回復させるか」
 
 3.混迷のなかの知識人
  思想・文化の担い手としての知識人
  新聞の統制
  思想改造の開始
  『武訓伝』批判
  知識人批判の展開
  「百花斉放・百家争鳴」と反右派闘争
  調整期の緩和ムード
  文化大革命の衝撃
  学術の紆余曲折

図版解説3 壁新聞
史料解読4 巴金「胡風を偲ぶ」
コラム1 人民解放軍の歴史

第二章 大陸中国──発展と強国の時代(1970年代-)
 1.対外開放と体制改革
  改革開放の起源をめぐって
  文化大革命から改革開放へ
  「四つの近代化」と華国鋒
  鄧小平と北京の春と「四つの基本原則」
  対外開放期の憲法
  歴史決議と改革の新たな論理
  経済改革の動向
  対外開放を支える独立自主の外交政策
  政治改革をめぐる攻防──「社会主義初級段階」論
  天安門事件と南巡講話

史料解読5 1982年憲法の主な部分改正
史料解読6 趙紫陽「中国の特色のある社会主義の道に沿って前進しよう」

 2.経済成長の光と影
  改革開放と日本、香港、台湾
  改革開放による変容
  社会の自立と管理
  共産党の変容と集団指導体制
  調和のとれた社会を目ざして
  経済と民族の歪み
  社会の歪みと陳情の圧力──世代間のギャップ、戸籍制度、一人っ子政策 
  「収」と「放」を反復する中国政治──2010年代の地平
  国際社会のなかで大国化から強国化へと向かう中国
  強国化を目ざす中国と日本、香港、台湾

図版解説4 改革開放と経済成長率
史料解読7 「復興の道」展を参観した際の習近平による講話

 3.多様化する思想文化と管理される社会
  高まる改革論──20世紀前半からの水脈
  再燃する文化論争
  リベラル派と新左派の攻防
  メディア空間とネット空間の拡大と監視

図版解説5 中国共産党と『中国青年報』
史料解読8 胡平「言論の自由を論ず」
コラム2 人民共和国期の映画史

第三章 香港・マカオ──中国と世界の狭間(1950年代-)
 1.植民地としての展開と矛盾
  珠江デルタの二つの要衝
  日本の敗戦とイギリスによる香港統治の再開
  継続されたポルトガルのマカオ統治
  香港民主化の模索──ヤング・プラン
  人口流入と経済回復
  共産党の香港政策
  人民共和国の成立と朝鮮戦争の勃発
  諸勢力の梁山泊としての香港
  文化大革命の影響─一二・三事件と六七暴動
  香港政庁の「積極的不介入」政策 
  香港アイデンティティの醸成

図版解説6 日本軍票の交換を求める老人
図版解説7 九龍石硤尾の新興集合住宅
図版解説8 香港の映画雑誌

 2.返還への動きと社会の変容
  人民共和国の国連代表権獲得と香港
  カーネーション革命とマカオへの影響
  中英交渉の開始と中英共同声明
  民主化をめぐる中英の相剋と香港基本法
  天安門事件とパッテン改革
  マカオ返還交渉とマカオ基本法
  大陸中国とのつながりと経済発展
  香港特別行政区の成立と経済危機
  国家安全条例制定の模索と50万人デモ
  「中港融合」の限界
  雨傘運動──行政長官普通選挙をめぐって
  民主派の分派──自決派・本土派・独立派
  逃亡犯条例の改正問題と200万人デモ
  香港国家安全維持法の制定──「一国二制度」の形骸化
  マカオの返還──中国化の進展とマカエンセ文化の探求

図版解説9 マカオ半島にあるホテルリスボアとビル群
コラム3 オリンピックの代表権

第四章 台湾──民主化の成熟(1950代-)
 1.中国国民党一党体制の確立と展開
  台湾とはどこか 
  二・二八事件と省籍矛盾
  中華民国憲法下の台湾
  冷戦下での分断固定化
  一党支配体制の確立
  日中戦争の講和
  台湾海峡の軍事的緊張
  経済発展
  国民党への反対運動
  台湾独立運動
  対外危機

図版解説10 国立故宮博物院(台北)
史料解読9 彭明敏・謝聰敏・魏廷朝「台湾人民自救運動宣言」

 2.体制の動揺と民主化
  尖閣諸島領有権をめぐる社会運動の発生
  対外危機への対応
  党外運動の興隆
  美麗島事件
  「平和統一」攻勢への対応
  民主進歩党の結成
  憲法改正による民主化
  大陸中国との関係の再編
  陳水扁政権と二大陣営の形成
  馬英九政権と大陸中国への接近
  蔡英文政権と近年の動向

図版解説11 金門包丁
史料解読10 李登輝「Always in My Heart」

 3.中華文化の優勢から多元社会の尊重へ
  中国国民党による「中国化」政策
  中国の伝統文化をめぐる対立
  蔣経国の文化建設と郷土文学論争
  社会運動の拡大
  多文化主義の出現
  女性運動と性の多様性 
  歴史和解という課題
  台湾アイデンティティと中国ファクター

図版解説12 ひまわり学生運動 
史料解読11 李筱峰「台湾史は中国史の一部分なのか?」
コラム4 中華圏のジェンダー

終 章 中華圏と中華文明のゆくえ
 日本と中華圏
 中国共産党と中華文明

文献案内
中華圏を知るための年表


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