国宝の政治史 「中国」の故宮とパンダ
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-13-026156-2 C3022
奥付の初版発行年月:2017年08月 / 発売日:2017年08月下旬
近代国家「中国」が,どのようにして故宮とパンダを国宝と呼ばれるようにしたのか? その歴史的変遷を考察し,本来的には恣意的な線引きにすぎない近代国家の「領土」や「国民」の境界線が,現代においていかに固定化され,維持されているのか,本書を通じてその一端を解明する.
家永 真幸(イエナガ マサキ)
東京医科歯科大学准教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
序 章
1 問題はどこにあるのか
2 本書の目的と意義
3 どのような視点で分析するのか
4 本書の構成
I 中国の近代国家建設と国宝形成
第1章 ミュージアム概念の受容——清末中国における「博物館」(一八四〇年代─一九〇〇年代)
1 「博物館」という語の登場
2 外来文化としての「ミュージアム」
3 清末の博物館創設事業
おわりに
第2章 「保護」の思想と歴史の継承——清朝皇室コレクションの「博物館」化(一九〇〇年代─一九二八)
1 清末期の文物「保護」
2 北京政府期の清朝皇室コレクション
3 「故宮博物院」の成立
おわりに
第3章 文物の移動と「国宝」化——南京国民政府による接収と「故宮文物」形成(一九二八─一九四九)
1 故宮博物院の接収と文物選別
2 海外出展と「国宝」化
3 故宮文物の台湾移転
4 毛公鼎の接収——中央博物院との合流
おわりに
第4章 近代的シンボルの創出——南京国民政府期における「パンダ外交」の形成(一九二八─一九四九)
1 海外発のパンダ・ブーム
2 無関心から禁猟へ
3 国際宣伝戦とパンダ
4 「パンダ外交」のルーチン化
おわりに
II 分断国家の国宝をめぐる中台関係の展開
第5章 国際冷戦体制下の文化内戦——故宮文物をめぐる国共対立の展開(一九四九─一九七二)
1 台中における保管
2 中国共産党による北京故宮の接収
3 分断国家問題の「文化内戦」化
4 故宮文物の海外出展に込められた期待
5 「台北故宮」の成立
おわりに
第6章 文化内戦の脱冷戦化と国際レジーム化——中華人民共和国による「パンダ外交」の継承(一九四九─二〇一一)
1 首都北京におけるパンダの飼育・展示
2 国際冷戦下のパンダ外交
3 対日パンダ外交
4 パンダの新たな政治的地位
おわりに
第7章 分断の解消,肯定,迂回をめぐる力学——「台湾化する台湾」における中国国宝問題(一九七二─二〇一六)
1 台湾の政治変動と故宮博物院
2 台湾に対するパンダ「贈呈」
3 「分断」故宮の現況
おわりに
終 章
1 故宮文物とパンダの国宝化過程の共通点
2 「国境の存否」を政治問題化し続ける「国宝の移動」
3 複数の「国宝」観を並存させる政治
4 国宝を国宝たらしめてきた政治力学
あとがき
Redefining“Chinese”National Treasures: A Political History of the Palace Museum and Pandas
Masaki IENAGA