UP plus
UP plus 習近平の中国
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-13-033306-1 C1031
奥付の初版発行年月:2022年11月 / 発売日:2022年11月上旬
異例の3期目にはいる政権は何をめざすのか?
経済発展、少子高齢化、イノベーション、環境問題、統治体制、民主化、人民解放軍、新疆ウイグル、香港、台湾、外交戦略、日中関係など様々な課題・政策・理念を最新の知見をもとに分析し、今後を見通す中国研究の最前線。
【「はじめに」より】
……習近平政権の輪郭を理解することはある程度できるのだが、日本から見ていると中国はわかりにくい。日本社会には、中国は分裂するものであるとか、社会にまとまりがないとか、権力闘争があるとか、一君万民、上位下達であるとか、さまざまな見方が流布している。隣国ゆえの経験則の結果だとも言えるだろう。かつて、共青団vs.太子党vs.上海派という見方が広がった。これは三国志的な理解と重なったのだろう。そして現在も、この三派の対立、あるいはそのようなものを敢えて探そうとする向きが強い。一旦、ステレオタイプ化した見方が広がると、なかなかそこから脱することができない。また、近代以降に日本が身につけた西洋近代、先進国的価値観や、冷戦期前後に形成された、社会主義、共産主義への懐疑も根強い。そして、日中間の(すでに中国側にも、日本の若年層にもないかもしれない)ライバル意識があるためか、日本を抜き去る/去った中国への懐疑や衰退願望などもあるのかもしれない。いずれにしても、中国を観る際には、さまざまな「眼鏡」が眼前に立ちはだかり、またいろいろなバイアスが思考のプロセスに入り込んでいるようでもある。これはその日本社会で中国研究をおこなっている研究者にも言えることかもしれない。
川島 真(カワシマ シン)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門はアジア政治外交史。著書に『中国のフロンティア』(岩波書店)、『21世紀の「中華」』(中央公論新社)、『20世紀の東アジア史』(共編著、東京大学出版会)、『よくわかる 現代中国政治』(共編著、ミネルヴァ書房)、『アフターコロナ時代の米中関係と世界秩序』(共編著、東京大学出版会)など多数。
小嶋 華津子(コジマ カズコ)
慶應義塾大学法学部教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに――問いの解説(川島 真)
I 中国の発展は保たれるのか 中国の経済発展はサステイナブルなのか(川島 真)
1 中国経済はバブルだったのか もしそうならバブルは弾けるのか(岡嵜久実子)
1 経済バブル膨張の可能性
2 経済の減速と“灰色のサイ”への警戒
3 不動産バブル膨張の要因
4 中国の不動産バブルは崩壊するか
5 中国政府は“灰色のサイ”をどうコントロールしていくのか
2 中国はイノベーション大国となれるのか(高口康太)
はじめに
1 コピー天国と革新
2 人と金の物量作戦
3 草の根のイノベーション
4 中国のイノベーションは持続可能か
3 高齢化は中国に何をもたらすか(片山ゆき)
1 人口問題──長寿リスクの出現
2 中国の社会保障制度と福祉ミックス体制
3 社会保障財政──老後の生活をだれが支えるのか
4 富の分配──共同富裕と再分配機能
5 高齢化とイノベーション──高齢化は何をもたらすか
4 環境問題の解決はどこまでできるのか(大塚健司)
はじめに
1 党中央主導の「生態文明建設」下の環境政策
2 党中央主導の環境政策の背景
3 環境汚染対策の成果
4 環境汚染対策の課題
5 気候変動政策の展開
6 気候変動対応の展望と課題
おわりに
II 中国共産党の統治は保たれるのか(小嶋華津子)
5 共産党は「良い統治」を実現できるか
──法の支配、党組織の健全化、社会の安定化(金野 純)
はじめに
1 習近平政権における法治の諸相
2 法規・組織・巡視─党組織健全化のための制度構築
3 テクノロジーとアーキテクチャ──複雑化する社会の安定装置
おわりに──今後の展望
6 「中華民族の父」を目指す習近平、あるいは「第二のブレジネフ」か「第二のプーチン」か──権力、理念、リーダーシップ、将来動向(鈴木 隆)
はじめに
1 制度による集権、集権によるシステムの変革
2 「中華民族の偉大な復興」をめぐる習近平の政治的思惟
3 「家族と個人の時代」における父権主義的リーダーシップ
4 「習近平時代」の政治発展のゆくえ
おわりに──「習近平時代」における習近平個人と支配体制のリスク
7 中国は民主化しないのか(小嶋華津子)
1 中国は民主化しないのか──近代化論の亡霊
2 中国共産党の応答
3 中国共産党の統治と中国の民意
4 中国共産党のリスク管理能力
5 日本はどうするべきか
8 人民解放軍は暴走しないのか(八塚正晃)
はじめに
1 党と軍隊、政府と軍隊との関係はどのようなものか
2 党に対する軍の影響力とクーデター未遂事件
3 党軍の専門集団化をめぐる問題
4 習近平による軍改革と党軍関係
5 軍事の智能化と党軍関係
おわりに
III 中国はどう世界で振る舞うのか(川島 真)
9 中国では「人権」をどのように考えているのか
──「少数派」と周辺地域への帰順の強制(倉田 徹・熊倉 潤)
1 中国政府と人権
2 新疆ウイグル自治区の人権
3 香港の人権
4 「中国式」人権概念の問題点
10 中国の目指す覇権と国際秩序とはなにか(山口信治)
1 中国は米国にとって代わる覇権国となることを目指しているのか
2 中国はどのような世界を目指しているのか
3 中国は世界からどのように思われているのか
おわりに
11 習近平は台湾を「統一」できるのか──対台湾政策の理念・政策・課題(福田 円)
はじめに
1 「台湾統一」の重要性──理念
2 「台湾統一」の手段とその可能性──政策
3 台湾や国際社会から見る「一つの中国」──課題
おわりに
12 日本は中国とどう付き合うべきか
──崩れゆく五要因と新たな関係構築の可能性(川島 真)
1 日中国交正常化五〇周年の難局
2 第一要因──米中関係を中心とする国際環境
3 第二要因──台湾問題などの東アジアの国際関係
4 第三要因──日中間の経済関係
5 第四要因──日中双方の内政
6 第五要因──日中双方の国民感情
おわりに──崩れゆく五要因と新しい日中関係
あとがき