社会が現れるとき
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-13-050192-7 C3036
奥付の初版発行年月:2018年04月 / 発売日:2018年04月中旬
社会がごく自然に存在してしまうことへの疑いと驚き.社会の現れはどのように経験され,思考され,人びとの行為や関係と結びついてゆくのか.そこに立ち止まることから始まる社会学的な問いは,多様な研究対象や分析方法へとひろがる.研究の最前線を示す新しい社会学論集.
若林 幹夫(ワカバヤシ ミキオ)
早稲田大学教育・総合科学学術院教授
立岩 真也(タテイワ シンヤ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
佐藤 俊樹(サトウ トシキ)
東京大学大学院総合文化研究科教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに——「社会が現れるとき」と「社会学(のようなもの)が現れるとき」
1章「都市」をあることにする(若林幹夫)
1 「都市」をめぐる三つの言葉
2 「都市」という概念
3 「魚」はどう存在するか(あるいは、存在しないか)
4 「都市」はどのように社会的か
5 「大都市」——大きさの社会性
6 同時代的問題としての「都市」
7 「都市」をあることにする
2章 空間の自由/空間の桎梏——都市空間への複数のリアリティ(西野淑美)
1 都市の空間と社会
2 「地域」という括りのレリヴァンス
3 「都市生活」が反転するとき
4 「地域移動」をめぐるリアリティ
5 「社会」の現れ方の非均質性
3章 近代日本における地位達成と地域の関係——戦前期生まれ著名人の中等教育歴が語るもの(中村牧子)
1 問い——「著名人」はどこで生まれたか
2 なぜ中等教育に注目するのか
3 中学校教育の地域間格差
4 エリート著名人を生み出す教育の仕組み
5 エリートの出自と活躍領域の分化
6 非エリート著名人を生み出す教育の仕組み
7 戦前期日本社会の「階層構造」のすがた
4章「商売の街」の形成と継承——(五十嵐 泰正)
1 はじめに——アメ横というアポリア
2 アメ横における「歴史の不在」
3 「アメ横商法」とエスニシティをめぐる視線の交錯
4 変わり続ける「商売の街」
5 「商売の街」を継ぐということ
5章 誰が自治体再編を決めるのか——「平成の大合併」における住民投票の再検討(砂原庸介)
1 はじめに
2 「平成の大合併」における住民投票の位置づけ
3 住民投票の分析
4 おわりに
6章「素人」の笑いとはなにか——戦後日本社会とテレビが交わるところ(太田省一)
1 はじめに
2 テレビ東京から見る戦後
3 「素人」という鉱脈
4 社会的存在としての「素人」
5 おわりに
7章 でも、社会学をしている——(立岩 真也)
1 それでも社会学をしていると思う1
2 そう思う2——社会の分かれ目について
3 社会的、はパスした
4 もっとよくできた話も結局パスした
5 代わりに
6 ポスト、もパスした
7 戻って、素朴唯物論は使えるかもしれない
8章 社会が溶ける?——日韓における少子高齢化の日常化とジレンマ(相馬直子)
1 少子高齢化の日常化
2 少子高齢化社会があらわれるとき——少子高齢化社会におけるケアをめぐる問い
3 日韓社会の対応
4 「よさ」のコンセンサスなきジレンマ
5 二重化される課題と新たなケアワークの発見——ダブルケアがあらわれる瞬間
6 おわりに
9章 境界としての「思想」——歴史社会学的試論(遠藤知巳)
1 「思想」——弱化と分散
2 思想研究は何をしているか
3 「社会思想」と社会学——隠れた相互依存
4 「思想」の言説史へ
5 一九世紀西欧(1)——「思想」の実体化と発展史観
6 一九世紀西欧(2)「真理」の分立と潜在的相対化
7 日本社会と「思想」
10章 想像のネットワーク——シベリア・極東ユダヤ人におけるアイデンティティのアウトソーシング(鶴見太郎)
1 共同体のアナロジーを超えて
2 相補的ハイブリッド性
3 シベリアのシオニスト
4 ハルビンのシオニズム
5 むすび
11章 映画に社会が現れるとき——「ステラ・ダラス』(一九三七)の言語ゲーム(中村 秀之)
1 映画の解釈という言語ゲーム
2 フェミニズム映画理論の「女性観客」
3 スタンリー・カヴェルの「普通の人間」
4 〈階級の顕な傷〉と映画の身体
12章 自己産出系のセマンティクス——あるいは沈黙論の新たな試み(佐藤俊樹)
1 自己産出系論の公理系
2 理解社会学の二つのモデル
3 自己産出系の syntax との対応
4 制度の挙動をとらえる
5 「行為の意味を理解する」ことの定式化
6 ベイズ統計学の枠組み
7 行為の意味を推定する
8 解釈度を変数としてあつかう
9 自己産出系と解釈度
10 意味を「分布」としてあつかう
11 沈黙を測る
社会は現れる——一つの解題として(佐藤俊樹)
How We Meet Society?
Mikio WAKABAYASHI, Shin’ya TATEIWA, and Toshiki SATO, Editors