アメリカやイギリスで誕生,発展してきた「障害学」とはどのような理論と実践なのか.「社会モデル」理論をはじめ,障害をめぐるさまざまな考え方や論争点,成果と課題についてわかりやすく解説し,日本における「障害学」の可能性を探る.
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目次
序章 障害学の理論視角
1 障害学の誕生と危機
2 社会モデルの理論射程
1章 障害学を担うのは誰か?
1 障害学は当事者のもの?
2 「非障害研究者」論争
3 日本の障害者運動で論じられたこと
4 「研究の自由」論争
5 研究と運動の線引き問題
6 「当事者の視点」はいかに担保されるのか?
7 「実践」としての障害学会
8 「観衆」としての当事者とアクセス
2章 障害学とリハビリテーション学——ICFをめぐる論争
1 障害学のインパクト
2 国際障害分類改訂の経緯
3 障害学からの批判——ファイファーによる批判
4 WHOの改訂チームによるファイファーへの反論
5 論争が障害学に与えた影響——社会モデル理論の分類と整理
6 死人に口なし
3章 マイノリティ・モデルと普遍化モデル——アーヴィング・ゾラの障害学
1 「アメリカ障害学の父」
2 ゾラが語る個人史とアイデンティティの探求
3 障害アイデンティティとマイノリティ・モデル
4 医療化批判と自己決定
5 障害の普遍化戦略
6 ゾラのラディカリズム
4章 社会モデルの広がりと再編——イギリス社会モデルの展開
1 混迷する論争と文脈依存性
2 社会モデルの功績
3 オリバー障害理論の真価——労働の近代化と障害
4 オリバー後の社会モデル論争——内在的批判と外在的批判
5 社会モデルの拡張作業——インペアメントの社会学
6 社会モデルの再編成——唯物論的モデルと観念論的モデル
7 「個人的経験」の社会性
5章 「障害」の政治と障害学——マイノリティ・モデルの展開
1 アメリカ障害学に関するいくつかの疑問
2 「公民権」としての障害者の権利
3 「人種」としての障害者——アメリカ社会モデルの淵源
4 リハビリテーション理念と「メルティングポット」
5 戦後リハビリテーション施策の展開
6 「貧困との戦争」におけるリハビリテーション理念の挫折
7 自立生活運動と利用者の権利
8 リハビリテーションから公民権へ
9 障害者権利運動——504条施行規則からADAへ
10 消極的な司法判断
11 障害文化——マイノリティの主張
12 障害の政治とマイノリティ・モデル
6章 障害学の課題——日本における論争点
1 日本の障害学——国際比較の視点から
2 障壁としての「家族」——脱「家族」と障害者福祉改革
3 「能力主義」をめぐる問題と差別禁止法
4 フェミニズム理論と障害学——「平等派対差異派」論争
5 障害学の実践課題——実践モデルとしての社会モデル
6 「利用者主権」と「当事者主権」——個人モデル実践の改革に向けて