写真文学論 見えるものと見えないもの
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-13-080069-3 C3090
奥付の初版発行年月:2024年06月 / 発売日:2024年06月上旬
写真がその成立に大きな役割はたしている文学作品――写真文学――とは何かを探求する。ローデンバック『死の都ブリュージュ』、ブルトン『ナジャ』、モディアノ『ドラ・ブリュデール』、デュラス『愛人』、ゼーバルト『アウステルリッツ』などの主要作品からその核心に迫る冒険の書。
塚本 昌則(ツカモト マサノリ)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。
1959年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退、パリ第12大学文学部博士課程修了。文学博士。専門はフランス文学、ヴァレリー研究。主な著書に『目覚めたまま見る夢――20世紀フランス文学序説』(岩波書店、2019年)、『フランス文学講義』(中公新書、2012年)、『声と文学』(共編著、平凡社、2017年)、『写真と文学』(編著、平凡社、2013年)、『〈前衛〉とは何か? 〈後衛〉とは何か?』(共編著、平凡社、2010年)、『ヴァレリーにおける詩と芸術』(共編著、水声社、2018年)、『文学と映画のあいだ』(共著、東京大学出版会、2013年)、『写真との対話』(共著、国書刊行会、2005年)、その他翻訳多数。
目次
はじめに
序章 写真文学とは何か
1 小説の危機と写真文学の誕生
2 顔の物語
3 言葉のイメージと写真イメージの交点――風景としての人間
4 顔の消滅、顔の出現――写真文学の世界へ
第Ⅰ部 顔、風景、ドキュメント――写真の中の見えないもの
第1章 風景写真の使用法――ジョルジュ・ローデンバック『死の都ブリュージュ』(一八九二)
1 無人の街路――風景写真の使用法
2 写真都市ブリュージュ
3 絵葉書とは何か
4 出現のモチーフ
第2章 肖像写真の使用法――アンドレ・ブルトン『ナジャ』(一九二八、一九六三)
1 肖像写真の使用法Ⅰ――ヒロインの顔を示さないこと
2 「取り乱した証人」
3 肖像写真の使用法Ⅱ――男たちの写真
4 風景写真の使用法――凡庸さの外観、扉としての写真
第3章 ドキュメント写真の使用法――谷崎潤一郎『吉野葛』(一九三一、一九三七)
1 「初音の鼓」――『吉野葛』における写真の使用法
2 虚構の手紙の写真
3 手帳の写真――W・G・ゼーバルト「アンブロース・アーデルヴァルト」をめぐって
4 写真は実物に似ているのか
第Ⅱ部 空白のスクリーン、不在の写真
第4章 戦争の記憶、空白のスクリーン――ジョルジュ・ペレック『Wあるいは子供の頃の思い出』(一九七五)、パトリック・モディアノ『ドラ・ブリュデール』(一九九七)
1 子供の写真――空白の部屋(ペレック『Wあるいは子供の頃の思い出』Ⅰ)
2 偽りの記憶――批評的自伝(ペレック『Wあるいは子供の頃の思い出』Ⅱ)
3 透かし模様のスクリーン(モディアノ『ドラ・ブリュデール』Ⅰ)
4 ドラの顔(モディアノ『ドラ・ブリュデール』Ⅱ)
第5章 不在の写真――マルグリット・デュラス『愛人』(一九八四)、アニー・エルノー『娘の回想』(二〇一六)
1 「絶対の写真」――行為としての写真(デュラス『愛人』Ⅰ)
2 「絶望の写真」――イメージの場所(デュラス『愛人』Ⅱ)
3 撮られなかった写真――エルノーの場合(『娘の回想』)
4 写真が作り出す現実――アニー・エルノー『写真の使用法』
第6章 記憶の想起と写真――W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』(二〇〇一)
1 迷子の写真――主人公の肖像写真
2 リヴァプール・ストリート駅の情景――見えない写真
3 『アウステルリッツ』と『失われた時を求めて』――見出された時と写真の使用法
4 母親の肖像
第Ⅲ部 日常生活と写真
第7章 日常礼讃――ロラン・バルト『ロラン・バルトによるロラン・バルト』(一九七五)
1 伝記素――私的な生活
2 写真と俳句
3 「存在の増幅器」としての写真――ジル・モラ/クロード・ノリ『写真宣言』(一九八二)
4 肖像写真に写らないもの