高等教育シリーズ158
学びの質保証戦略
価格:2,860円 (消費税:260円)
ISBN978-4-472-40454-2 C3037
奥付の初版発行年月:2012年04月 / 発売日:2012年05月上旬
世界に通用する市民を育成することを目標に、世界の大学はさまざまな取り組みを行っている。学生の学習成果の評価や学びの質保証、大学ランキングをめぐる国際的競争、高大接続など、日本と共通して直面する諸問題に、各国の大学はどのように対処しているのか。成長著しいアジア諸国や英米豪の大学の事例・戦略を紹介する。
山田 礼子(ヤマダ レイコ)
同志社大学社会学部教授、同大学高等教育・学生研究センター長
1978年同志社大学文学部社会学科卒業。1991年カリフォルニア大学ロサンゼルス校教育学大学院博士課程修了。同大学Ph.D.取得。プール学院大学国際文化学部助教授等を経て現職。専門分野:アメリカの高等教育、初年次教育
著書:『プロフェッショナルスクール』(玉川大学出版部,1998)、『社会人大学院で何を学ぶか』(岩波アクティブ新書、2002)、『一年次(導入)教育の日米比較』(東信堂、2005)、『アメリカの学生獲得戦略』(玉川大学出版部、2008)、『大学教育を科学する―学生の教育評価の国際比較』(編著、東信堂、2009)ほか
目次
序章 学びの質保証戦略
第1部 大学の国際化、個性化戦略の方向
1海外の大学における教育の国際化戦略―スタディ・アブロードプログラム
世界的に急速に進展する教育の国際化/学位の提携など大学制度も国際化/ノッティンガム大学のスタディ・アブロードプログラム/アメリカにおける日本学を学ぶプログラム/海外にキャンパスを設置する動きも活発に
2海外の高等教育の国際化の動向
はじめに/日本の高等教育の国際化政策/国際的な大学間競争/国境を越えて移動する高等教育/アジアの高等教育改革の共通点/日本への示唆
3大学ランキングとアジアの動向―大学ランキングとワールドクラス・ユニバーシティ
はじめに/THEと上海交通大学のランキング/研究拠点大学へ―浦項工科大学/国際的な質保証を目指す台湾の大学/中国・シンガポールの動向/マレーシアのエクセレント大学ランキング
4歴史的ブラックカレッジの意義と役割―アフリカ系アメリカ人のリーダーを養成
はじめに/アメリカの高等教育機関における多文化主義を取り入れた教育プログラム/アフリカ系アメリカ人男性のための大学
5アメリカにおける女子大学の意義―女性リーダーを育成するためのプログラムと支援
はじめに/女子大学が直面してきた問題/女子大学の新たな意義/マウント・ホリヨーク大学/ウェズリー大学/おわりに
6経済危機とアメリカのビジネススクール―普遍的な教育プログラムの強み
2008年経済危機とビジネススクール/アメリカにおけるMBA教育の内容と不況下でのビジネススクールの教育改善の動向/ビジネススクールのランキングと将来/ビジネススクール志願者への調査
第2部 学生の成長を支援するプログラム
7アメリカのカレッジ・スポーツとアスリートの支援
カレッジ・スポーツの由来/NCAAの設立/学生アスリートへの支援/カレッジ・スポーツと地域コミュニティ
8APプログラムとコンカレント・プログラム―アメリカにおける多様な高大接続
APプログラムとは/APプログラムの効果/従来のエリートから受講者も多様化/コンカレント・プログラム制度の利用者/高大接続に活用する例も
9アメリカにおける教員免許資格と大学での教員養成プログラム
―地方分権における教員養成の特色
はじめに/カリフォルニア州の教員免許制度の概要/テキサス州の教員免許資格制度/UCLAの教員養成プログラム/教員養成プログラムの詳細/「No Child Left Behind 」法案と教員養成プログラム/おわりに
10教養教育、一般教育を通じて育成される力とは?
―グローバル社会と異文化リテラシー
はじめに/ハーバード大学の一般教育に関する最終報告書/ハーバード白熱教室 Justice/オーストラリアの大学でのアトリビュート/共通課題としての異文化リテラシー
11アメリカの初年次教育―初年次の支援という総合的なプログラム
はじめに/初年次教育の広がり/初年次教育の意味と位置づけ/サウスカロライナ大学のUniversity 101
第3部 質の保証に向けての多様な制度とアセスメント
12アクレディテーションのアウトカム・アセスメント―ミッションと個性にもとづいた大学評価
アメリカのアクレディテーション最新動向/地域基準協会ごとに異なる評価基準/ラーニング・アウトカムによる評価/アーケディア大学の取り組み/国際化プログラム3つの強み
13IRと学生調査―プロセス評価としての学生調査の意義
はじめに/IRとデータベース/IRと学生調査/学生調査の利用方法/日本におけるIRと学生調査
14アメリカの高等教育の情報公開の現状―透明性にもとづく情報公表の方法
日本における情報公開の議論/スペリングス・レポートでのデータベースをめぐる議論/TheCollege Portrait/ CSUノースリッジ校とCSUロングビーチ校の比較
15アメリカの大学の入試とアドミッション
―高大接続にもとづいた入学者選抜制度
「高大接続テスト」と問われる入試の意味/SATとACT/アメリカのアドミッション選考のプロセス/カリフォルニア大学ロサンゼルス校/オレゴン州立大学/数か月かけて高校の学習到達度を審査
16アメリカの大学の学費と奨学金の関係―高騰する学費を視野に入れた奨学金政策
はじめに/ペルグラント(給付型奨学金)とローン(貸与型奨学金)/最高の増加率となったペルグラント/目立つ州立大学の授業料高騰/学生や保護者のためのコスト公表システム/ポモナカレッジのコスト情報公表/UCLAの同窓会独自の奨学金
17日本における質保証システムの構築―大学間連携教学IRによる相互評価
はじめに/連携大学間の「相互評価」から連携を活かしての質保証の枠組みづくりへ/大学間連携による教学IRの意味は?/直接評価と間接評価としての学生調査の信頼性/おわりに
終章 世界の大学改革に見られる共通性と普遍性
「国際的通用性」を基準に求められている変容/各国に遅れる日本の国際戦略/アメリカとイギリスに見戦略の動向/教育の国際化と「アカウンタビリティ」
参考文献
用語解説
初出一覧