理工学講座
電力系統工学
価格:3,850円 (消費税:350円)
ISBN978-4-501-11300-1(4-501-11300-6) C3054
奥付の初版発行年月:2006年07月 / 発売日:2006年07月中旬
電力系統技術を体系的にまとめた教科書
電力系統技術は,電気の利用を支えてきた重要な技術である。日本におけるこの技術は,電気の需要がほとんどない約100年前から出発し,欧米に遅れることなく発展してきた。この間の,先人の先見性と卓越性は素晴らしいの一言に尽きる。発電方式は大きく移り変り,発電設備の大容量化だけでなく,地球温暖化防止の観点から太陽電池発電や風力発電など分散電源についても避けて通ることはできなくなった。
送電の分野においても,世界ではパワー半導体の進歩により,交流送電だけでなく長距離大容量直流送電も採用されている。また,すでに1000kV送電を実施しているロシアに続き,中国などでも1000kV送電が現実のものとなろうとしている。
一方,戦後の情報処理技術の進歩も忘れてはならない。計算機の進歩とあいまって,系統解析技術の発展が,複雑化する電力系統の制御を可能にし,安定な運用を実現しているのである。
さらに,近年の電力自由化の流れのもと,電力系統も単に工学的側面から学ぶだけでなく,経済的問題も論じる必要がある。このように,電力系統工学は枯れた技術ではなく,新しい要素も関連させて学ぶ必要が生じてきたし,これまでの蓄積を再検討することも必要になってきた。
本書はその電力系統技術を体系的に取りまとめたものである。東京電機大学には,本書に先んじて廣瀬淳雄先生や故・荒井聡明先生による授業用教科書があったが,最近の新しい技術も取り入れてまとめなおすことにした。系統工学の中級程度の技術が網羅されており,一般の学生には多少難しいところがあるかもしれない。しかし,将来このような分野で活躍するであろう学生,また現役の技術者にとって,書いてあることが直ちに役に立つ教科書をと考え,多少高度な項目,実際的な項目も含めている。電力系統工学を学んだ人が,社会に入ってすぐに役立てられることを考えた。この教科書が,勉強のためだけでなく,実務にも利用されることを切に願っている。
平成18年7月 著者ら
目次
第1章 電力系統の概要
1.1 電力系統の歴史
1.2 交流送電と直流送電
1.3 系統技術の最近の問題点
第2章 電力系統と三相回路の基礎
2.1 電力
2.2 複素電力
2.3 単位法
2.4 対称三相交流と送電系統
2.5 負荷のYおよびΔ結線
2.6 対称三相回路の解析
2.7 三相系統おける単位法
第3章 変圧器
3.1 理想変圧器
3.2 実際の変圧器
3.3 単位法
3.4 三相変圧器
3.5 単巻変圧器
3.6 タップ付き変圧器のモデル
第4章 送電線路
4.1 線路のインダクタンスと静電容量
4.2 電力ケーブル
4.3 線路インダクタンス
4.4 線路の静電容量
第5章 潮流計算
5.1 潮流計算と交流回路計算
5.2 ノードアドミタンス行列
5.3 潮流方程式
5.4 Newton−Raphson法
5.5 潮流計算へのNewton−Raphson法の適用
5.6 直流法潮流計算
第6章 同期発電機
6.1 同期機の基本構造
6.2 電機子の誘導起電力
6.3 電機子反作用
6.4 端子電圧
6.5 磁気突極効果
6.6 電力およびトルク
6.7 電力公式
6.8 無限大母線に接続された発電機の運転
第7章 故障計算
7.1 対称故障
7.2 対称座標法
7.3 非対称故障
第8章 安定度
8.1 安定度の種類
8.2 発電機の運動方程式
8.3 電力相差角方程式
8.4 定態安定度−同期化力係数−
8.5 等面積法による過渡安定度判定
第9章 電力系統における有効電力と周波数の関係
9.1 周波数制御の必要性
9.2 有効電力と周波数の関係
9.3 連系系統の周波数−潮流特性
9.4 負荷周波数制御−単独系統の場合−
9.5 負荷周波数制御−連系系統の場合−
9.6 連系系統における周波数制御の例
第10章 電力システムにおける無効電力と電圧の関係
10.1 無効電力と電圧の関係
10.2 電圧変動の感度
10.3 無効電力の供給源
10.4 電圧無効電力制御
第11章 電力システムの経済運用
11.1 経済運用
11.2 火力発電ユニットの経済負荷配分
11.3 火力,水力発電ユニットの経済負荷配分
11.4 火力発電ユニットの起動停止計画
章末問題の解答
索引