電気回路は，電気磁気学とともに電気・電子工学の基礎科目であり，改めてその重要性を説くまでもない。これらの科目の十分な理解のもとにその応用能力を十分涵養することが，専門科目の学修のうえにも，また将来技術者・研究者として，能力を発揮するうえにも大きなエネルギーとなろう。
　現在，電気回路に関する教科書あるいは参考書に類するものは枚挙にいとまないほど多数に上っている。そのいずれをとってみても，それぞれに特色を有している。
　著者らは，大学において長く電気回路の講義や演習を担当し，電気回路を教える難しさや，学生の理解しにくい点はどこにあるのかを日常体験している。そのような背景から，より理解しやすい本をつくりたいと念願していた。
　電気回路は，大学入学後1年次に直面する学生諸君にとって難解な科目の1つであり，また避けて通れない科目でもある。それだけに，本書を執筆するに際しては，基本的事項をなるだけ容易に理解し，応用能力を培うことができるよう配慮したつもりである。特に，図表や用語解説，そして例題を多く導入し理解を深める工夫を行った。また，学習の励みとして，演習問題を各章末に掲載した。
　このような意図のもとにつくられた本書ではあるが，まだ補足すべき点，あるいは説明上留意すべき箇所も多々あると思われる。読者諸氏からのご指摘，あるいは当方の努力により漸次改善を図っていきたいと考えている。本書が，初学者諸君にとって電気回路への手引書となり，基礎学力を培うのに少しでもお役に立てば，著者らにとって望外の喜びである。
　なお，出版にあたりお世話になった東京電機大学出版局へ感謝の意を表します。
　2008年2月
　執筆者らしるす