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ディジタルIC回路のすべて

ディジタルIC回路のすべて

B5変 308ページ 並製
価格:4,070円 (消費税:370円)
ISBN978-4-501-32620-3 C3055
奥付の初版発行年月:2008年03月 / 発売日:2008年03月中旬

前書きなど

 本書の前身である「ディジタルICのすべて」の初版が東京電機大学出版局から発行されたのは1984年11月のことです。それから20余年が経過しました。その間におけるディジタル回路技術の進歩は驚異的なものでしたが,幸いにも,変化の激しいIC関連書籍のなかで同書はその内容を改訂しないまま15刷まで増刷を重ねることができました。
 これは,同書執筆の時期がたまたまマイコンや携帯電話など新たなディジタル技術が急展開する直前であったこと,およびその時点で汎用ディジタルIC技術がある意味においてひとつのピーク点にさしかかった時期でもあったことなどの理由から,その後のマイコンや携帯電話などが引き起こしたディジタル革命の大きな波には直接影響されず,いわゆる汎用ディジタル技術の範疇においてそれなりにまとまっていたからなのではないかと考えます。
 しかし,この20余年の歳月を無視することはもはや不可能な状況となりました。そこで,東京電機大学出版局のお勤めもあり,この際全面的に見直しを行い,改訂版をまとめることにいたしました。
 この改訂版の執筆にあたり,筆者は以下のような点に配慮しながら内容をまとめました。
1.本書は,高校,専門学校の学生諸君を中心に,大学前期,社会人一般までの幅広い読者層を想定しています。そしてディジタル回路の電気的,論理的な働きをできるだけ平易な文書で解説し,ディジタルIC全般の基本的な機能を体系的に学ぶことができるように工夫しました。
2.どんな技術でも,自分の手で実験し確かめてみなければ,本当の意味で理解し習得することはできないと思います。ところが最近の超小型化,超高集積化,ブラックボックス化する技術環境のもとでは,かつてのように実験に適した個別部品を入手することは非常に困難です。そこで本書では,可能な限り実験またはそれに近い条件下での回路例を豊富に掲載することに努めました。
3.本書で用いる「図記号」や「IC機能表」などには,従来から慣用的に使われているMIL記号,真理値表(論理表),論理式などのほかに,IEC 60617/JIS C 0617シリーズに準拠した2値論理素子図記号を積極的に使用するように努めました。
4.本書の目的は,ハードウェアとしてのICについて学ぶことです。したがってマイコン関連の章では,あくまでもハードウェア/ディジタルICとしてのCPU/周辺ICという観点から記述します。ソフトウェアに関する部分では,初期設定/条件設定などハードウェアに直接関係のある事項に限りました。関連するアセンブラその他ソフトウェア全般について興味をお持ちの方は,他の参考文献で勉強されるようにお願いします。
5.全章にわたり,本文はできるだけ簡潔にまとめ,不足するところはサイドノートの充実で補うように配慮しました。また数式はできるだけ使わず,文書だけで理解できるように努めました。

 以上のような考えでまとめた本書ですが,これがディジタルICの概要を理解する上で読者の皆さんにいささかなりともお役に立てば,これは筆者にとって望外の喜びです。技術の勉強は一生終わることがありません。これからも皆さんとともに勉強を続けていきたいと願っております。
 末尾になりましたが,この改訂版の執筆を勧めてくださった東京電機大学出版局長 植村八潮氏,および,編集を担当された石沢岳彦氏に,この場を借りて厚くお礼を申し上げます。特に植村局長は二十数年前,旧版の編集を担当されたご縁でもあり,感慨無量です。
 2008年2月
 白土 義男 記


目次

第1章 電子回路とIC
 1.1 電子回路の構成要素
 1.2 個別部品回路からICへ
 1.3 ディジタルICの内部構造
 1.4 ディジタルICのパッケージ(外形構造)
 1.5 ICピンの役割
第2章 ディジタル回路とIC
 2.1 ディジタル回路とアナログ回路
 2.2 ディジタルICの種類
第3章 ゲートとMIL記号
 3.1 2値論理回路とMIL記号
 3.2 ゲートIC
 3.3 論理動作の変換と入/出力ピンの拡張
 3.4 ゲートを使ったパルス回路
第4章 JIS C 0617/IEC60617規格による2値論理素子図記号
 4.1 2値論理素子図記号
 4.2 2値論理素子図記号の表記方法
第5章 ディジタルICの電気的特性,および取り扱い上の注意
 5.1 IC規格の読み方
 5.2 ICの使用条件,環境など
第6章 フリップフロップ
 6.1 R−S−FF
 6.2 T−FF
 6.3 ラッチ
 6.4 D−FF
 6.5 J−K−FF
 6.6 FF機能の相互変換
第7章 マルチバイブレータ
 7.1 単安定マルチバイブレータ
 7.2 無安定マルチバイブレータ
第8章 レジスタ/シフトレジスタ
 8.1 FFを使ったレジスタ
 8.2 直列入力/並列出力シフトレジスタ
 8.3 並列入力/直列出力シストレジスタ
 8.4 並列入力/並列出力双方向シフトレジスタ
第9章 エンコーダ/デコーダ
 9.1 2進数,BCDコード,16進数
 9.2 エンコーダ
 9.3 デコーダ
 9.4 BCD→7セグメントデコーダ/ドライバ
第10章 カウンタ(計数回路)
 10.1 2進カウンタ
 10.2 N進カウンタ(1/Nカウンタ)
 10.3 カウンタICの種類と機能
 10.4 汎用カウンタIC
 10.5 カウンタICの多桁接続
 10.6 特殊なカウンタ
第11章 マルチプレクサ/デマルチプレクサ
 11.1 ディジタルマルチプレクサ
 11.2 アナログスイッチ
 11.3 アナログマルチプレクサ/デマルチプレクサ
第12章 算術演算回路
 12.1 加算器
 12.2 パリティゼネレータ
 12.3 ディジタルコンパレータ
第13章 スイッチドキャパシタフィルタ
 13.1 スイッチドキャパシタ
 13.2 スイッチドキャパシタフィルタ
第14章 オーディオ回路
 14.1 ディジタルアンプ
 14.2 ディジタル可変抵抗器
第15章 電源回路
 15.1 チャージポンプ直流レギュレータ
 15.2 スイッチング直流レギュレータ
 15.3 マイクロプロセッサ監視回路
第16章 ディジタルとアナログの変換
 16.1 D/A変換
 16.2 A/D変換
第17章 インタフェース
 17.1 異なる電源系統の論理レベルインタフェース
 17.2 トランジスタ/FET,フォトカプラなどによるインタフェース
 17.3 機械的接点とのインタフェース
 17.4 バスドライバ/バススイッチ
 17.5 シリアルインタフェース
第18章 特定用途のLSI
 18.1 ディジタル電圧計
 18.2 周波数カウンタ
第19章 ICメモリ
 19.1 ICメモリの種類
 19.2 RAM
 19.3 ROM
第20章 CPUとマイコン回路の働き
 20.1 マイコン回路の構成要素
 20.2 CPUの内部構造
 20.3 マイコン回路の働き
 20.4 プログラムの流れと割り込み
第21章 ワンチップマイコン
 21.1 PIC16F84Å
 21.2 H8/3048F
第22章 マシン語とアセンブラ
 22.1 プログラムがCPUに組み込まれるまで
 22.2 アセンブル作業の流れ
参考文献
索 引


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