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メカニカルバイブレーションの機能評価生体のふるえと振動知覚

バイオメカニズム・ライブラリー
生体のふるえと振動知覚 メカニカルバイブレーションの機能評価

A5判 176ページ 上製
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-501-32700-2 C3047
奥付の初版発行年月:2009年05月 / 発売日:2009年06月上旬

前書きなど

 生理的振戦(振戦)を中心とした機械的振動や外部刺激による触覚などについての執筆を2年ほど前に依頼され,準備を進めてきた.全体の構想はスムーズにでき上がったが,いざ執筆にとりかかる段になると過去の膨大な論文や著書に圧倒された.そのため,脱稿が執筆依頼から2年半ほど遅れた.
 全体の構成は,第1部「生体内部から発生する機械的振動」と第2部「生体外部から発生する機械的振動」とした.第1部では生体から発生する生理的振戦(physiological tremor),震え(shivering),マイクロバイブレーション(microvibration,MV),筋音(muscle sound,MMG)について取り上げ,第2部では生体に外部から与える機械的振動による生体の反応(触覚や痛覚など)について取り上げた.各項目について,振動項目の定義,研究史,メカニズム,応用の4事項を記述するように努めた.
 われわれの研究室で博士論文の課題として,機械的振動の1つである”生理的振戦”の研究に携わってこられた苗鉄軍(発生モデルの数理方程式:現在,コンピューターコンビニエンス社),真壁寿(パーキンソン症の生理的振戦:現在,山形県立保健医療大学),山路雄彦(関節疾患者の生理的振戦:現在,群馬大学)の3氏の研究内容は,生理的振戦の執筆に欠かせない論文で引用させていただいた.
 機械的振動を執筆した主な理由を以下に述べる.

①機械的振動に属す生体情報を調べると,振戦のほかに多くの生体情報が存在し,古くから研究されていることを改めて認識させられた.機械的振動は,振戦,マイクロバイブレーション,震え,心弾動図,全身振動,筋音図などがあり実に多彩である.これらの機械的振動のなかから,振戦,マイクロバイブレーション,震え,筋音図の4種の機械的振動を執筆の対象にした.これらの機械的振動はそれぞれに特徴があり,生体機能評価に有用な情報を与えると考えて取り上げた.
②生体が電気振動を発生することは,カエルの筋肉の実験で1771年にGalvani L.が発見した.しかし,その後,生体の電気振動である筋電図,心電図,脳波などの研究は20世紀に入ってからである.一方,機械的振動の研究は,19世紀初頭にParkinson J.(1817)が病理的振戦を発見し,この分野の研究が行われてきた.つまり,人類は機械的振動を最初に興味をもち研究を始めたといっても過言ではない.しかるに現在,機械的振動の利用は電気的振動と比較して少なく,その有効性が広く知れわたっていないように思われる.機械的振動は身体の末端から得る身体全体の生体情報であり,電気的振動が局所的な振動であるのと比べると,より豊かな生体情報を含んでいる.最近の解析技術の進歩により有用な生体情報を抽出可能である.このことも,機械的振動を取り上げた理由の1つである.

 最後に,執筆者一同,たびたびの執筆延長にもかかわらず,心よくかつ我慢強く応対していただいたバイオメカニズム・ライブラリ企画担当の東京農工大学大学院共生科学技術研究院藤田欣也教授に心から感謝申し上げます.
 2009年4月
 著者しるす


目次

第1部 生体内部から発生する機械的振動
 第1章 機械的振動とは何か?
  1.1 機械的振動と電気的振動
  1.2 機械的振動の分類
  1.3 機械的振動のまとめ
 第2章 機械的振動の測定方法 —センサーと増幅器について—
 第3章 振戦の特性と発生メカニズム
  3.1 振戦の発生メカニズム
  3.2 振戦の実験的研究
  3.3 振戦の理論的研究
  3.4 振戦のまとめ
 第4章 マイクロバイブレーションの特性と発生メカニズム
  4.1 MVの発生メカニズムの研究史
  4.2 MVの実験的研究
  4.3 MVのまとめ
 第5章 震えの特性と発生メカニズム
  5.1 震えとは何か?
  5.2 震えの発生メカニズム
  5.3 震えのまとめ
 第6章 筋音
  6.1 筋音とは何か?
  6.2 筋音の発生メカニズム
  6.3 筋音の測定手法
  6.4 筋音の基礎的研究
  6.5 筋音のまとめ
第2部 生体外部から受ける機械的振動
 第7章 機械的振動の生成法
  7.1 機械的振動の呈示条件
  7.2 機械的振動呈示のためのアクチュエータ
  7.3 機械的振動生成法のまとめ
 第8章 触覚における機械的振動の受容
  8.1 触覚様相における機械的刺激覚
  8.2 能動的触受容と受動的触受容
  8.3 触覚と力覚
  8.4 触覚における機械的振動受容のまとめ
 第9章 機械的振動受容の生理的特性
  9.1 機械的刺激受容の生理的機序
  9.2 機械的振動の受容機構
  9.3 機械的振動受容の周波数依存性
  9.4 機械的振動受容の生理特性のまとめ
 第10章 機械的振動受容の心理的特性
  10.1 振動覚の絶対閾
  10.2 振動覚の閾上特性
  10.3 順応とマスキング
  10.4 機械的刺激点に対する仮想の定位や運動の知覚
  10.5 痛覚への影響
  10.6 機械的振動受容の心理特性のまとめ
 第11章 機械的振動の応用
  11.1 感覚代行への応用
  11.2 触覚表示と制御システムへの応用
  11.3 機械的振動応用のまとめ
参考文献
索 引


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