デジタルサイネージ入門 世界の先進事例に学ぶビジネス成功の条件
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-501-32840-5 C3055
奥付の初版発行年月:2011年06月 / 発売日:2011年06月上旬
デジタルサイネージとは、デジタル技術を活用して、従来の印刷ポスターに代わって、映像や情報を表示する新たな広告媒体(電子看板)のこと。公共的な案内や個人に焦点を絞った表示などが可能になる。駅や空港などに設置される大型ディスプレイだけでなく、中小店舗用の小型ディスプレイや、一般家庭向けのデジタルフォトフレーム、タブレットPC、スマートTVなど用途がどんどん拡大している。本書は、北米における20のケーススタディをとりあげ、デジタルサイネージの歴史、しくみ、トレンド、ビジネスチャンスなどについて解説した入門書。
デジタルサイネージを取り巻く環境は,わが国においてもこの数年で大きく変貌を遂げた。従来は,駅や大規模商業施設などに設置される大型ディスプレイと専用システムによる映像配信ソリューションとしてのやや重厚長大なデジタルサイネージを中心に市場が形成されてきたが,昨今では,大型ディスプレイに加え,中小規模の店舗に設置される小型ディスプレイや,デジタルフォトフレーム,タブレット端末,さらにはスマートTVなどの一般家庭向けの汎用端末を対象としたものにまで範囲が拡大しつつある。
デジタルサイネージは,既存のマスメディアとは異なり,場所・時間・見る人の属性に紐付いた,新たなターゲットメディアとして,これまでにはないコミュニケーションを実現する可能性を持っている。「プッシュ型」で情報提供を行うものであるため,公共性への配慮は必要であるものの,パソコンなどの操作に精通していなくても等しく情報を得ることができる,というユーザメリットがある。
こうしたデジタルサイネージの有用性が再認識されたのは,まさに, 2011年3月11日に起きた東日本大震災という未曾有の事態の最中であった。広域に被害が及んだことから,テレビなどによる,東京を中心としたいわゆる「スター型」の情報流通では,被災地間あるいは避難所間の「横−横」の情報流通をカバーすることができず,そもそも被災現場には,テレビやPCなどのデジタルデバイスも十分にはなかった。そこで,安否情報などの提供も,非効率ながら掲示板,ロコミというアナログな情報伝達手段に頼らざるをえなかった。また,首都圏においても,地震直後に街にあふれた多くの帰宅困難者が正確な情報を迅速に得ることは容易ではなく,リアルタイムで緊急情報などを送る機能を備えたデジタルサイネージが,その数少ない情報源であった。今回の震災を契機として,クラウド型のデジタルサイネージはその普及が加速し,生活に必要な地域に密着した情報を,「デジタルデバイド」なく伝える21世紀型の「コミュニティメディア」として,公共情報や緊急速報提供の要ともなる社会インフラの一つとして根づいていくことは,まず間違いないだろう。
一方,さまざまなディスプレイ/デバイスと,携帯/スマートフォンとの連携技術,あるいはコンテンツ分野に関しては,わが国が技術的にも市場的にも世界をリードする可能性を秘めていることは衆目の一致するところだろう。そこで,最近では,デジタルサイネージがまったく新たな情報流通の基盤として国内で発展を遂げ,復興の一翼を担う可能性だけに留まらず,わが国の国際競争力を強化する新たな領域としても注目が集まって,グローバルなレベルでの普及を加速させていくために,政府・民間が協調した国際標準化への動きも具体化しはじめている。
今後は,ウェブの技術を積極的に取り入れ,誰もが簡単に使いやすい次世代デジタルサイネージシステムが主流となって,さらなる発展を遂げていくと考えられるが,そうした時代を予見しつつ,これまでの各国,殊に欧米の先進事例から,デジタルサイネージの導入,運用など,ビジネス全般に関わる成功あるいは失敗の要因を学ぶことは,たいへん意義深いことであろう。本書は,まさにそうしたタイミングに好適なものと考え,NTTにおいてデジタルサイネージの技術開発とビジネス推進に関わる有志メンバーが共同で翻訳を行った。豊富な図や写真を用いた多くのケースを紹介しながら,デジタルサイネージ展開に必要な基本的な要素,ならびに今後のトレンドについて解説をしている。デジタルサイネージ業界関係者だけでなく,これからデジタルサイネージを活用したビジネスをしてみたいと考えるすべての方々にご一読をお勧めしたい。
目次
第1章 デジタルサイネージの全体像
デジタルサイネージとは?
デジタルサイネージのスコープ
主たる好機と課題
デジタルサイネージの目的
画面かディスプレイか
ハードウェアインフラ
コンテンツ
配信
デジタルサイネージの普及
デジタルサイネージのステークホルダ
コスト
消費者の許容度
デジタルサイネージの未来
第2章 デジタルサイネージとは何か?
歴史
形態
技術
ソフトウェア
ハードウェア
導入
保守
主要プレーヤ
トレンド
課題
好機
第3章 デジタルサイネージを牽引するもの
成功を牽引する鍵となる10のポイント
使われる場所で使い方が変わる
利用者:誰がデジタルサイネージを成功に導くか?
好機
課題
将来性がデジタルサイネージを牽引する
第4章 いつ,どこで,デジタルサイネージは使われるか?
デジタルサイネージの利用形態
ディスプレイ
運用形態
第5章 コンテンツ
視聴者の理解
コンテンツの選定
コンテンツのタイプ
消費者の滞留時間
コンテンツの未来
第6章 誰がデジタルサイネージを使うべきか
デジタルサイネージ導入の基本条件
追加条件
業種ごとの概説
第7章 デジタルサイネージの構成を決める
ターンキーソリューションの採用
システムを段階的に作り上げる
信頼性
成功要因
第8章 ビジネスモデルと利益
目標に対する利益率
投資収益率
ビジネスモデル
テストケース
第9章 世界のデジタルサイネージ
アジア
ヨーロッパ
その他
第10章 どこで,どのように,デジタルサイネージの検討を始めるか?
どこから始めるか?
いつ開始するか?
第11章 デジタルサイネージの未来
デジタルサイネージのインパクト
付録 用語集
謝辞
索引
著者について