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通信工学の基礎

通信工学の基礎

A5判 216ページ 並製
価格:2,860円 (消費税:260円)
ISBN978-4-501-33300-3 C3055
奥付の初版発行年月:2018年09月 / 発売日:2018年09月上旬

内容紹介

はじめて通信工学を学ぶ人向けにまとめたテキスト。全13章構成とし、通信工学を体系立てて学べる。各章には演習問題を設け巻末には解答を掲載。前半でアナログ通信、後半でデジタル通信について学習できるようまとめた。通信工学の理論とシステムに関する基礎知識が習得可能。

前書きなど

 社会の基盤を支える技術の中で,土木,建築,機械などは,紀元前の時代から今日に至るまで長く続いている技術である。現代文明の勃興期である19 世紀後半

からは,これらに電気の技術が加わり,技術に多様性が生まれると同時に,社会への影響力も拡大した。通信の技術は,電気の技術と歩調をあわせながら進展し,

19 世紀終盤には電信および電話の業務が行われるようになった。20 世紀に入ると真空管が発明され,電気信号を電子の流れとして扱うことにより,信号波形を操

作(増幅など)できるようになった。そして20 世紀中盤には,半導体を材料とした電子デバイス(トランジスタ)が開発され,それによって,それまでの真空管

とは桁違いに小型・低消費電力でかつ高速動作が可能な電子回路が実現されるようになった。さらには,集積回路によって,電子回路の高度化に拍車がかかった。

その結果として,20 世紀後半には電子回路の能力を駆使した高性能コンピュータがつくられるようになり,さまざまな情報をデータとして数値化し,高速に処理

することができるようになった。これにより,情報という新たな技術分野が生まれることになった。また,20 世紀終盤には,光ファイバや半導体レーザが開発さ

れ,それまでの金属線を大きく凌駕する性能の通信路が利用できるようになった。コンピュータと光ファイバは,今日多くの人々が利用しているインターネットを

実現するうえで不可欠な要素となっている。
 このように,各種の技術を展望してみると,土木,建築,機械などは,人体にたとえれば手足の部分に相当し,社会のハードウェア的な意味での基盤となる技術

である。電気,通信,情報など,比較的新しい時代に生まれた技術は,人体でいえば血流,神経,脳,五感などに相当している。これらは,どちらかというと社会

のソフトウェア的な意味での基盤となる技術である。
 本書では通信技術の基礎について解説する。通信では,離れた地点間で情報をやりとりするために,特殊な信号を用いる。信号は,電流や電波,光に変化を与え

ることで生み出され,金属線や空間,光ファイバを媒体として遠方に伝えられる。電流や電波,光は,時間の経過とともに連続的に変化する物理現象である。本書

の前半では,このような物理現象に基づく信号をアナログ的にとらえて処理する技術領域について解説している。他方,コンピュータを代表とする情報機器の発展

にともない,通信の分野では,パルスを信号として用いるディジタル技術が主流となっている。本書の後半では,信号をディジタル的にとらえて処理する技術領域

について解説している。これらの解説では数学の助けが必要であり,数式を多用している。
 通信の分野では,これまでに数多くの優れた書物が刊行されている。本書を著すにあたって内容を引用あるいは参考にさせていただいた書物を,本書の末尾に示

している。
 本書は,大学の工学系学部生に通信の理論とシステムに関する基礎知識を修得してもらうためにまとめたものである。勉学に取り組む際の一助となれば幸いであ

る。
 出版にあたっては,東京電機大学出版局の吉田拓歩氏から適切なご指示ならびにご助言をいただいた。深く感謝いたします。

 2018 年8 月
 松本 隆男
 吉野 隆幸


目次

まえがき
1章 通信システムと基礎理論
 1.1 「通信」と「システム」
 1.2 通信システムの構成
 1.3 本書で取り上げる基礎理論
 コラム 通信システム発展の歴史
2章 フーリエ級数とフーリエ変換
 2.1 通信理論でフーリエ級数やフーリエ変換が必要とされる理由
 2.2 フーリエ級数
 2.3 フーリエ変換
 2.4 たたみ込み積分と伝達関数
 2.5 電力スペクトル
 コラム 負の周波数
 コラム パーセバルの公式
 演習問題
3章 歪と雑音
 3.1 歪
 3.2 雑音
 演習問題
4章 変調の基礎
 4.1 変調の意味
 4.2 いろいろな変調
 4.3 変調の目的
 演習問題
5章 振幅変調
 5.1 時間領域での信号表現
 5.2 周波数領域での信号表現
 5.3 振幅変調をするための電子回路
 5.4 変調波の電力と効率
 5.5 振幅変調の改良
 5.6 振幅変調波の検波
 5.7 振幅変調と雑音
 コラム 複素数平面上の信号表現
 演習問題
6章 角度変調
 6.1 周波数変調と位相変調
 6.2 周波数変調波のスペクトル
 6.3 周波数変調波の発生
 6.4 周波数変調波の検波
 6.5 周波数変調の信号対雑音電力比
 6.6 雑音電力が大きいときの振る舞い
 6.7 エンファシス
 演習問題
7章 PCM
 7.1 標本化
 7.2 量子化
 7.3 符号化
 7.4 符号化器と復号化器
 7.5 非直線量子化
 7.6 高能率符号化
 演習問題
8章 ディジタル変調
 8.1 ディジタルベースバンド信号の符号誤り率
 8.2 ASK
 8.3 FSK
 8.4 PSK
 8.5 多値PSK とQAM
 8.6 OFDM
 演習問題
9章 伝送媒体
 9.1 金属からなる伝送線路
 9.2 光ファイバ
 9.3 電波伝搬
 9.4 電力の表示
 コラム 受動部品における電圧と電流の関係
 コラム 電圧(電流)の比を表す方法
 コラム 表皮効果…
 演習問題
10章 多重化
 10.1 時分割多重
 10.2 周波数分割多重
 10.3 波長分割多重
 10.4 空間分割多重
 10.5 符号分割多重
 10.6 そのほかの多重化技術
 演習問題
11章 媒体共有型ネットワークと多元アクセス
 11.1 ALOHA
 11.2 CSMA
 演習問題
12章 伝送符号
 12.1 伝送符号に求められる条件
 12.2 いろいろな伝送符号
 演習問題
13章 符号誤り制御
 13.1 垂直パリティ方式…
 13.2 垂直・水平パリティ方式
 13.3 CRC 方式
 13.4 ハミング距離と符号誤り制御
 13.5 ハミング符号
 13.6 たたみ込み符号
 演習問題

演習問題略解
引用文献・参考文献
索 引


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