初めて学ぶ
PID制御の基礎
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-501-41600-3(4-501-41600-9) C3053
奥付の初版発行年月:2006年07月 / 発売日:2006年07月下旬
PID制御器設計に必要な基礎理論を解説
工学は時代の流れとともに変る。工学の発展が社会を変えていくし,社会の要求に合わせて大学の工学部も変革していく。昭和30年代に華々しく登場した制御工学も,今ではもう決して新しい部類の学問ではなくなった。その後,電子工学が一世を風靡しやがて情報工学,生体工学へと発展してきた。最近ではロボット工学とかメカトロニクスと呼ばれる分野も活発である。しかし新しい分野の学問に押されて制御工学が古くなってしまったかといえば決してそうではない。因みに最近のロボット工学やメカトロニクス関係の本を開いてみればその基本が計測と制御にあることにすぐに気付くだろう。
本書は高専や大学の学生向きの制御工学用テキストとして古典制御理論を中心に簡潔にまとめたものである。従来制御理論の入門書は特に複素関数論の分野で難解な部分が少なくなかった。そこで本書では著者の30年以上にわたる制御系設計の現場での経験を生かし,PID制御器設計に必要となる基礎理論に絞って,しかも例題を多用することにより理解を深める工夫をした。逆に,大学の講義で難解でありながら実際の設計の現場ではほとんど使うことのなかったニコルス線図や根軌跡の幾何学的な作図法などは大胆に省略した。基本の意味さえ理解しておけば,最近では便利なパソコンソフトがたちどころに計算してくれるからである。
本書の構成は第1章から第6章までが古典制御理論を理解するうえでの基本の流れである。半期の講義用テキストとして用いる場合はここまでがひとつの目安だろう。第7章は古典制御理論と現代制御理論の橋渡しである。第8章は本書の最も特徴とするところである。ロケットのロール姿勢角制御問題という具体例を通じてPID制御器による制御系設計の一連の流れを示した。制御系設計という技術に大いに興味を持ってもらえるのではないかと期待している。
本書に取り上げた例題の殆どはサイバネットシステム株式会社の制御系設計ツールMATLABで確認している。ただ本書に記載したグラフはExcelによるものである。大半の問題はExcelVBAでも概略の解を求めることができるし,結果をグラフにする場合にはExcelのほうが便利な面もあるからである。本書で用いたExcelプログラムはすべて東京電機大学出版局のホームページからダウンロードして用いることができる。プログラムのほとんどは出力としてのグラフを得るためのものであるが,例えば本文第8章図8.22や図8.24に用いたフィードバック形式のプログラムを組めば制御系解析の学習用としても有用であると思う。是非,活用して頂きたい。
最後に,筆者が制御工学を志して以来一貫して丁寧なご指導を賜っている山下忠九州工業大学名誉教授,職場の先輩後輩として常に切磋琢磨してきた久保英彦氏(現:多摩川精機(株)顧問),また前著「MATLABによる誘導制御系の設計」以来,出版に際し貴重なご指導を頂いている東京電機大学出版局植村八潮氏,詳細な校正を頂いた吉田拓歩氏に心から感謝致します。
2006.7 著者
目次
第1章 制御工学とは
1.1 制御ということ
1.2 制御工学発展の歴史
1.3 制御系の構成
練習問題
第2章 ラプラス変換
2.1 複素数
2.2 ラプラス変換
2.3 ラプラス変換の諸定理
2.4 ラプラス逆変換
練習問題
第3章 システムのモデル化
3.1 モデル化
3.2 ブロック線図
3.3 ブロック線図の等価変換
練習問題
第4章 制御系の応答
4.1 制御系の応答
4.2 過渡応答
4.3 定常応答
4.4 フィードバック制御系の応答
練習問題
付録1 たたみこみ関数のラプラス変換
付録2 二次遅れ系の応答解析
第5章 制御系の周波数応答
5.1 制御系の周波数応答
5.2 周波数伝達関数
5.3 ベクトル軌跡
5.4 ボード線図
練習問題
第6章 制御系の安定性
6.1 制御系の安定性
6.2 安定判別法
6.3 根軌跡法
練習問題
第7章 制御系の状態空間表現
7.1 線形系の状態空間表現
7.2 状態方程式と伝達関数
7.3 状態方程式
7.4 安定性
練習問題
第8章 PID制御系の設計
8.1 ロケットのロール角制御問題の概要
8.2 PID制御器
8.3 PID制御器とIPD制御器
8.4 ロール制御系の設計
練習問題
章末問題の解答
ExcelVBAプログラムについて