JISによる機械製図法
価格:3,410円 (消費税:310円)
ISBN978-4-501-41680-5 C3053
奥付の初版発行年月:2008年03月 / 発売日:2008年03月下旬
序
機械類を設計製作する場合はいうまでもないが,機械を取り扱う場合や,これを十分に理解したい場合には,機械の形や寸法,材料その他,機械を作るために必要な情報を正確に,また細大漏らさずに盛り込んである製作図をはじめとして,各種の図面の助けを借りることが必要となる.このため,各種工業に従事する技術者は,学校において少なくとも一度は,機械製図,あるいは,その他の製図(電気製図,建築製図など)の講義を受け,また,実習を行って図面の見方や描き方を身につけることになっている.なお,最近においては,技術者でなくても工業に関係する人ならば,図面の見方ぐらいはできなければならないとされている.それほど工業と図面の関係は深いものである.
これに従って,世の中には製図関係の図書が数多く発行されている.ところで,従来の図書では,製図に関係のある日本工業規格(JIS)その他の解説を主体としているものが多いようである.このことは極めて大切なことではあるが,初めて製図を学ぼうとする人にとっては,これだけでは必ずしも十分でなく,さらにさかのぼって製図についての考え方,具体的な図面の描き方といったことに触れた記事も必要であると思われる.もとより,真に優れた製図ができるためには,機械の基礎知識のうえに立って,製図しようとする機械の構造機能が分かっていることはもちろんであるが,機械の部品の製作法の要点についても十分な知識が必要となる.しかし,この能力を身につけることは,短時日に行うわけにはいかず,かなりの期間の各種の実地経験の結果をまたなければならない.それにしても,まず必要なことは,当初に述べたような機械図面で,実際に通用するものの描き表し方は,どのようにして行われるものかということを習得することであろう.
本書は,以上のような考えにより,JISを十分に活用できるための製図の基礎知識に重点を置き,また,実社会に通用できる製図技能を身につけるための製図教科書として役立つことを念願してまとめてみたものである.
なお,旧著「機械製図法」とその改訂版「六訂JISによる機械製図法」については,幸いにして多くの方々の御支援により,初版以来通算20版余を数えるに至った.しかしながら,旧著は,学校向けの教科書というよりは,むしろ独習者の参考書に近かった.また,内容に繁簡当を得ない個所その他があった.なお,いままでのJIS Z8302製図通則か廃止となり,新しい製図規格の体系が制定されて,JIS Z8310製図総則 以下,JIS Z8318製図における寸法の許容限界記入法 までとなった.またこれに続いてJIS B0001機械製図も改正された.これらのことを考慮し,さらに,20年にわたる大学の機械工学科における製図教育の経験に基づき,今回稿を新たにしたものが本書である.機械製図の教授者および学習者にとって,本書が学習効果をあげるうえに役立つとするならば,著者らとして幸いこれに過ぎるものはない.なお,独習者に対しては,他の機械工学関係の参考書などを併用することによって,十分に機械製図学習の目的を達することができるように配慮してある.もとより,著者らの浅学非才のため,至らぬ点も多いことと思われるが,これらについては,今後多くの方々の御教示によって改めていきたいと考えている.
1992年3月
蓮尾 諭吉 安部 政見 山本 唯雄
新訂にあたって
本書初版は,昭和41年11月に発刊されました.初版執筆者当初から著者らは,機械製図に関連するJIS規格に則して,分かりやすい図を用いた詳細な説明と広く機械製図を解説した内容とを心掛け本書を発行し,また改定してまいりました.爾来,機械製図を初めて学ぶ友から実際に図面を描く方々の参考書として,また大学や学校等の教書として本書が広く愛用されてまいりましたことは著者らの喜びです.
本書は,平成8年に当時のJIS規格に則して新版3訂が発行されましたが,平成12年(2000年)に機械製図に関するJIS規格JIS B0001:2000が国際標準規格であるISO規格との整合のため,大きく改訂されました.改定されたJIS規格では,機械製図としての基礎,基本は変わりないものの,ねじ製図の描き方,面の粗さの表示方法等が大きく変更されました.このISO規格と整合したJIS規格の改定によって,今後新しいJIS規格に則って描かれた機械製図は,広く世界に通用すると期待されております.このJIS規格の改定を受け,この度本書は宗川浩也,伊藤公雄の2名を新たに著者に加え,新しいJIS規格に則した新版4訂を発行することとなりました.改定された本書が,また広く機械製図を志す方々のお役に立てることを望んで止みません.著者らは改定されたJIS規格に則って,本書を修正いたしましたが,未だ至らぬ点もあろうかと思います.今後とも本書を愛用される多くの方々のご教授を求める次第です.
吉田 幸司
追記
本書は昭和41年(1966年)11月の初版発行以来,(株)山海堂から刊行され,幸いにも長きにわたって多くの読者から愛用されてきました.このたび修正を加え,東京電機大学出版局から新たに刊行されることとなりました.今後とも読者のご教示によって,よりよい教科書になるように改めていきたいと思います.
2008年3月
吉田 幸司
目次
1章 機械製図概説
1.1 諸論
1.2 図面の種類
1.3 図面の作成
1.4 工業規格と製図規格
1.5 品物の形状表示
1.6 ISO
2章 製図の基礎
2.1 製図用具とその使用法
2.2 図面の大きさおよび様式
2.3 機械製図に用いる尺度
2.4 機械製図に用いる線
2.5 文字
2.6 用器画法
3章 機械製図法
3.1 機械製図における品物の形状表示
3.2 寸法
3.3 機械製図の手順
3.4 照合番号(部品番号),標題欄および部品欄(部品表)その他
4章 機械製図に必要なその他の表示事項
4.1 寸法公差およびはめあい
4.2 表面性状(表面粗さ)の表示
4.3 幾何公差の表示
4.4 リベットおよび溶接の表示
4.5 材料記号
5章 主要な機械要素の製図および標準部品の呼び方
5.1 概説
5.2 ねじの製図
5.3 歯車製図
5.4 ばね製図
5.5 転がり軸受の製図
5.6 標準部品の呼び方
6章 検図
6.1 検図の意義
6.2 検図方法の一例
7章 製図に関する工作法の要点
7.1 概説
7.2 機械部品の形状
7.3 機械部品の製作工程の概略
7.4 鋳造部品の形状に関する要点
7.5 鍛造部品の形状に関する要点
7.6 機械加工による形状に関する要点
7.7 取扱いその他の点からの形に関する要点
8章 見取図
8.1 見取図の意義とフリーハンドによる作図
8.2 見取図に必要な器具
8.3 機械の取扱い
8.4 見取図の作成
8.5 寸法測定に関する二,三の要領
8.6 材料の見分け方
付表1〜16
付図1〜4