自動車の限界コーナリングと制御
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-501-41970-7 C3053
奥付の初版発行年月:2015年06月 / 発売日:2015年06月中旬
自動車の限界領域における、走行安定性の制御技術について解説。学生フォーミュラ大会でのサスペンション制御の例も掲載。横滑り制御や衝突被害軽減ブレーキ(アイサイト)など、最新の技術についても解説。交通事故「0」を目指し、走行安定性技術の確立に挑む!
自動車の基本性能に関する良書は,多数存在する。一方,自動車の操縦性・安定性(特に,アクティブセーフティー)において,特に重要な課題となっているのは,車の限界コーナリングのダイナミクスと制御が考えられる。しかし,この領域を中心にして書かれた書籍は,ほとんど見当たらない。そこで,今日,安全の観点からも向上が望まれているこの分野に的を絞って,本書を執筆した。
本書では,最初に限界コーナリング性能の基本的な考え方として,モーメント法による解析手法および解析例を紹介する。次に,限界コーナリング性能の向上手法として,内外輪制駆動力制御,キャンバ角制御,ステアバイワイヤの制御(新しい操舵方式制御)について,研究を行った内容を紹介した。さらに車両のサスペンション&ステアリング系の制御のみでは,今後の予防安全の観点からも不十分であると考えられるため,外界センサーを用いた制御についての研究例,そして,自動運転についての今後の展望等についても紹介する。
今日,自動車は,人と自動車のインタラクションの面から,よりドライバーに適合した車両特性が望まれている。種々のドライバーに適合する自動車開発が望まれているのである。これらの研究は,ドライビングシミュレータの発展とともに,急速に進化している状況である。そこで本書では,この人~自動車系のインタラクションの面から,ドライバーにとって違和感のない制御を念頭に置き,研究を進めた内容について紹介している。
また,近年,学生フォーミュラ大会が推進され,自動車の運動性能向上チューミングの関心も高まっている。これらについてのサスペンションのメカニカルコントロールの一例も紹介する。
本書が,至らぬ点は今後の課題とし,車の限界コーナリングのダイナミクスと制御に興味のある方に,少しでもお役に立てれば幸いである。
最後に,第1章のモーメント法解析,および,第3章のキャンバ角制御の実験等で協力をいただいた,当時筆者の研究室に所属の大学院生であった吉野貴彦君に感謝する。また,出版に当たりお世話いただいた,東京電機大学出版局の石沢岳彦氏ほか,ご協力いただいた関係者の方々に深く御礼申し上げる。
2015年5月
筆 者
目次
第1章 限界コーナリングのダイナミクス
1.1 車に作用する横力とモーメントについて
1.2 モーメント法とMagic Formula
1.3 モーメント法を用いた非線形領域の車両運動解析
1.4 モーメント法を用いた限界領域でのキャンバ角制御の効果の解析
1.5 加速・減速時でのキャンバ角制御の効果
第2章 内外輪制駆動力制御について
2.1 SH-AWDについて
2.2 横滑り制御装置について
2.3 新しい内外輪制駆動力制御の研究例について
第3章 キャンバ角制御について
3.1 キャンバ角制御が最大コーナリングフォース特性に及ぼす影響
3.2 4輪アクティブキャンバコントロール
3.3 キャンバ角制御によるコーナリング限界の向上
3.4 キャンバ角制御の横滑り制御への適用の研究例
3.5 大キャンバ角制御車両の製作および実験例について
第4章 ステアバイワイヤについて
4.1 ステアバイワイヤについて
4.2 微分操舵アシストの適用の研究例について
4.3 走行シチュエーションに応じた操舵方式制御実験
4.4 ステアバイワイヤ機構の実車搭載による検討
第5章 外界センサーを用いたアシスト制御について
5.1 予防安全~事故回避の性能の向上
5.2 アイサイト(Eye Sight)の例
5.3 外界センサーを用いた研究例の紹介
第6章 自動運転の方向と運転する歓びとの両立について
6.1 自動運転と運転をする歓びの両立について
6.2 自動運転の開発状況
6.3 自動運転の今後
第7章 フォーミュラカーの限界コントロール性向上手法について
7.1 パッシブなキャンバ角コントロールとは
7.2 タイヤにかかる横力と揺動サスペンションメンバーの関係
7.3 揺動サスペンションメンバーのジオメトリー変化
7.4 シミュレーションモデルの概要
7.5 最速走行シミュレーション結果
7.6 設計検討
7.7 まとめ
参考文献
索 引