LibreOfficeで学ぶ情報リテラシー
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-501-55430-9 C3004
奥付の初版発行年月:2016年05月 / 発売日:2016年05月上旬
フリーソフトのLibreOfficeを用いて、パソコンの基礎・ワープロ・表計算・プログラミング・図形・プレゼン・データベース等のスキルを修得するためのテキスト。課題学習型で実力がつく。情報教育実習の教材や自学自習のテキストに。課題として最近のトピックや基礎教養(レポートの書き方、情報倫理など)を取り上げているので、ソフトの操作とあわせて関連知識も自然と習得できる。
本書は,タイトルに書いてあることを可能な限り適切に実現することを目的に執筆されました.つまり,グローバル化する知識経済において必須とされる情報リテラシーを,フリーソフトウェアの代表格の1つであるLibreOfficeの活用を通じて習得できるようにすることを目指したものです.
多くの方々は,スマートフォン(以下,スマホ)でテキストや音声を使ってコミュニケーションをとることを違和感なくできるのではないかと思います.それ自体も,この時代には重要なスキルであり,大切にしていってください.しかし,スマホで情報を簡単にやりとりするには,個々の情報がきれいにそろっていて,かつ,ごく少ない操作でやりとりできるような約束事も取り決めておかなければなりません.例えば,LINEやTwitterをスマホで簡単に扱えるのは,それらが持っているデータが高度に構造化されており(いつ,誰から誰にやりとりされたか,本文はどれか,どれに対する返信か,といった情報がコンピュータにとって取り出しやすい形式で作成保存されているということです),そして,適切なAPI(Application Programming Interface,ほかのプログラムから機能やデータなどを呼び出すためのしくみです)が提供されているからです.スマホの小さな画面の中で,フリックやスワイプといった操作で簡単に作業をこなせるようなしくみを用意するためのハードルは結構高く,まだまだ,パソコンのキーボードとマウスを使って細々と作業をしなければならない状況は続いていくと思われます.やがて,スマホ的な操作で何もかもできるようになることを待ちつつ,今のところは,普通のパソコンの使い方も習得しておくことが必要です.
すでに高校までに「情報」の授業などでパソコンの使い方を十分に習得している人もいると思いますが,本書は,必ずしもそういう人でなくとも,情報リテラシーについて一通り学ぶことができるように,Windows 10を前提として1から学ぶ形式となっています.特に,タッチタイピングとキーボードショートカットについては,これまで身に付けてなかった人はぜひここで身に付けてください.作業効率が格段にあがって,仕事をするときにもとても重宝します.キーボードショートカットについては,詳しくは第2章を見てください.
本書で扱っているソフトウェアは,Microsoft Officeの主要ソフトウェアに対応するLibreOfficeのソフトウェアが主となっています.Micrisoft OfficeのワープロソフトWordにあたるものがWriter,表計算ソフトのExcelにあたるものがCalc,プレゼンテーションソフトのPowerPointにあたるものがImpress,データベースソフトのAccessにあたるものがBase,といった案配です.そして,それ以外に,描画ソフトとしてDrawも扱っています.また,Microsoft Officeの使い方との違いについても適宜紹介しています.内容としては,プログラミングやデータベースの使い方など,パソコンにあまり習熟していない人が1年間で学ぶにはちょっと難しそうな範囲まで含んでいます.1年間かけて勉強してみて,取り組めなかったところも,その後,独習できるように工夫していますので,いそがず慌てず,いつか取り組んでみてください.
最後に,「なぜLibreOfficeで?」と思われる人もいらっしゃると思います.それは,「情報リテラシー」を身に付けることを目的としているのであって,LibreOfficeの使い方を覚えることを目的としているのではないからです.ソフトウェアは日進月歩,どのソフトの使い方を覚えても,数年経てば覚え直しです.でも,数年経っても覚え直さなくていい知識,かなり長い間使い続けられる知識もあります.例えば,データの構造を意識しながら文書作成をしたり,関数を使ってデータを処理したりするという考え方は,なかなか変わりません.本書で身に付けてもらおうと意図しているのは,そのようなことです.自分がLibreOfficeで作ったファイルを他人に渡したとき,「LibreOfficeがないからファイルを開けない」と言われたら,LibreOfficeも渡すことができるのです.あるいは,自分でウェブからダウンロードしてインストールしてもらうこともできるのです.商用ソフトウェアでは,そのようなことは禁止されていますが,LibreOfficeは自由にできるのです.その制約のなさが,色々な場面で役立つことがありますので,それを実感していただくことがLibreOfficeを採用している理由です.
長くなってしまいましたが,みなさんが本書を通じて情報リテラシーを涵養し,知識経済の時代をうまく迎えられるようになっていただくことを楽しみにしています.
2016年4月
永崎研宣
目次
<WinwowsとLibreOfficeの基礎>
第1章 Windowsの基本操作
1・1 Windowsへログイン
1・2 LibreOfficeの画面デザイン
1・3 文書の保存とフォルダーの取扱い
演習1
第2章 キーボードの基本と日本語入力
2・1 キーボードの使い方
2・2 文字の入力
2・3 文字の種類
2・4 日本語の入力方法
演習2
<Writer>
第3章 レポートの作成:基礎知識と文書の構造化
3・1 文書の構造化とスタイル
3・2 レポート作成の基礎知識
3・3 スタイルを用いた構造化の方法
3・4 ナビゲーター
演習3
Microsoft Officeの場合
第4章 レポートの作成:引用の方法,注の付け方と参考文献の書き方
4・1 引用の方法
4・2 注の挿入
4・3 参考文献の書き方
4・4 ヘッダー,フッターの追加
4・5 様々な形式でのファイルの保存
演習4
第5章 表と画像の挿入
5・1 表の挿入
5・2 表の操作
5・3 画像の操作
演習5
Microsoft Officeの場合
第6章 検索と置換と目次の作成
6・1 検索ダイアログボックス
6・2 検索の方法
6・3 文字の置き換え
6・4 正規表現
6・5 目次の作成
演習6
Microsoft Officeの場合
<Calc>
第7章 表計算ソフトの概要とセルの書式設定
7・1 Calcの起動と画面
7・2 簡単な表の作成
7・3 ファイルの保存と既存のファイルの読み込み
7・4 Calcの編集機能
7・5 セルの書式設定
7・6 シートの印刷
演習7 Microsoft Officeの場合
第8章 数式を使った計算処理
8・1 簡単な計算処理
8・2 セル番地を使った計算処理
演習8
Microsoft Officeの場合
第9章 関数を使った計算処理(1)
9・1 関数の基本
9・2 よく使われる関数
演習9
Microsoft Officeの場合
第10章 関数を使った計算処理(2)
10・1 準備
10・2 配列数式
10・3 そのほかの関数
演習10
Microsoft Officeの場合
第11章 グラフ作成(1)
11・1 準備
11・2 グラフの作成と編集
11・3 図形描画
演習11
Microsoft Officeの場合
第12章 グラフ作成(2)
12・1 準備
12・2 様々なグラフの作成
演習12
Microsoft Officeの場合
第13章 統計データの活用(1)
13・1 準備
13・2 回帰分析
13・3 グラフの近似曲線
演習13
Microsoft Officeの場合
第14章 統計データの活用(2)
14・1 準備
14・2 誤差バー付きグラフの作成
14・3 検定
14・4 F分布のグラフ
14・5 多重比較
演習14
Microsoft Officeの場合
第15章 表集計(1)
15・1 準備
15・2 テキストファイルのインポート
15・3 データベース関数
15・4 小計
演習15
Microsoft Officeの場合
第16章 表集計(2)
16・1 準備
16・2 関数のネスト
16・3 ピボットテーブル
演習16
Microsoft Officeの場合
第17章 表集計(3)
17・1 準備
17・2 文字列の操作
17・3 VLOOKUP関数
17・4 クロス集計
演習17
Microsoft Officeの場合
第18章 表計算ソフトによるプログラミング(1)
18・1 プログラムの作成
18・2 変数
18・3 算術演算
18・4 配列
演習18
Microsoft Officeの場合
第19章 表計算ソフトによるプログラミング(2)
19・1 繰り返し処理
19・2 2次元配列
19・3 2重ループ
演習19
Microsoft Officeの場合
第20章 表計算ソフトによるプログラミング(3)
20・1 条件分岐
20・2 繰り返し処理と条件分岐
演習20
Microsoft Officeの場合
第21章 表計算ソフトにおけるプログラムの利用(1)
21・1 オブジェクトの操作
21・2 並べ替えのアルゴリズム
演習21
Microsoft Officeの場合
第22章 表計算ソフトにおけるプログラムの利用(2)
22・1 フローチャートを利用したプログラム作成
22・2 関数の利用
演習22
Microsoft Officeの場合
<Draw>
第23章 図形描画ソフトの基礎と論理表現
23・1 Drawの画面構成
23・2 オブジェクトの基本的な取扱い
23・3 オブジェクトのプロパティ
23・4 ベン図の作成
23・5 「すべて」と「ある」
23・6 and,or,not
演習23
第24章 フローチャートの作成
24・1 Drawを利用したフローチャートの書き方
24・2 条件分岐を用いたフローチャート
演習24
第25章 繰り返し処理を組み込んだフローチャートの作成
25・1 単純な繰り返し処理の表現方法
25・2 入れ子状の繰り返し処理
演習25
<Impress>
第26章 プレゼンテーション資料作成の基本
26・1 Impressの起動と編集画面
26・2 スライドの作成
26・3 スライドショー
26・4 表示モードについて
演習26
第27章 デザインとアニメーションの設定
27・1 マスターページの選択
27・2 文字の挿入
27・3 文字の装飾
27・4 アニメーションの設定
27・5 コネクターの扱い方
演習27
第28章 グラフの作成とほかのソフトウェアとの連携
28・1 Impressにおけるグラフの表示
28・2 Calcで作成したグラフのコピー
28・3 Impressのグラフ作成機能
28・4 OLEオブジェクトとしてのCalcとの連携
演習28
Microsoft Officeの場合
<Base>
第29章 データベースソフトの基礎
29・1 基本的なBaseの使い方
29・2 データの取り出し
演習29
第30章 データベースを用いた文献管理
30・1 準備
30・2 データの入力
30・3 テーブルの結合
30・4 正規化
30・5 データベースの活用
演習30
参考文献
索引
Column
OSとアプリケーション
LibreOffice Math
10進数から2進数への変換
デファクトスタンダードとサステナビリティ
LibreOfficeとODF
暗号化とプライバシー
フリーソフトウェアの考え方
オープンソースの考え方
関連リンク
・ダウンロード:課題・演習問題のデータ