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金融工学の応用と実践天候デリバティブのすべて

天候デリバティブのすべて 金融工学の応用と実践

A5判 218ページ 上製
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-501-61960-2(4-501-61960-0) C3033
奥付の初版発行年月:2003年02月 / 発売日:2003年02月上旬

内容紹介

金融工学を利用した人気の金融商品を平易に解説

 金融工学を利移用して天候リスクを取り除く技術を“天候デリバティブ”とよぶ.社会的に,天候リスクへの意識が高まり,比較的新しい種類の金融商品として急速にその市場規模を拡大している.
 本書では,天候デリバティブの全貌を知るにはもちろん,天候デリバティブの導入や販売を検討する担当者にとっても役立つようにまとめている.

前書きなど

 筆者が天候デリバティブという言葉を初めて聞いたのは4年ほど前のことだった.当時の周囲の反応は「確かにニーズはあるだろうけど,ビジネスとして成り立つのかな」と少々懐疑的なものだったことを記憶している.その後,メディアでも度々取り上げられ,取引高も新商品としては例を見ない勢いで拡大してきたのはご承知の通りである.
 一つには,確かにニーズがあったからである.多くの産業が天候と密接な関係を持ち,天候のリスクを内包する形で日々の業務が行われているにも関わらず,今までは有効なリスクヘッジ手段がほとんど存在していなかったのであり,受け入れられる素地は十分にあったと言えよう.
 理由のもう一つとしては,デリバティブという商品形態があげられる.保険・銀行・証券のいずれの業界においても取り扱い可能な商品である上に,顧客企業の本業に対するリスクヘッジ手段として有効なツールであったことから,各金融機関がこぞって市場に参入したのも不思議はないところである.
 上記の商品的な特性に加えて,時代の要請という側面も無視できない.本邦におけるエネルギー関連の規制緩和の動きや,世界的に高まってきた地球環境に対する関心の高まり,そして何より本邦における記録的な暖冬や猛暑をはじめとする世界各地で発生している数々の異常気象により,あらゆる事業活動において「天候リスク」がより一層クローズアップされる時代になってきたと言える.
 このような状況のもと,天候リスクマネジメント手段としての天候デリバティブは一般的な金融商品として認知されてきている感がある.その一方で,商品登場以来の歴史が浅いことや相対取引が取引の大半を占めていたことから,市場としてのコンセンサスが十分に形成されないまま市場規模が拡大してきた面は否めないものと思われる.
 本書ではこれらの状況を踏まえて,
●天候デリバティブとはどのようなものか
●どのような理論的背景があるか
●実務でどのように活用されているか
など,天候デリバティブに関する様々なトピックについて,天候デリバティブビジネスの第一線で活躍する執筆陣が体系的に分かりやすくかつ詳細に解説している.歴史が浅いがゆえに変化の激しい市場であるが,最新の情報も可能な限り盛り込んだ.
 すでに天候デリバティブビジネスに関与している方には知識の再整理および現状の再確認として,興味・関心をもっている方にとっては天候デリバティブについて体系的に理解できるツールとして,いずれにも活用していただけるものと確信している.
 本書が天候デリバティブ市場のより一層の発展に資することができれば,これに勝る幸いは無い.
 最後に,本書の内容については筆者らの見解に基づくものであり,契約書例やリスク管理手法,時価評価,会計処理などについては,筆者らの所属する金融機関等で実際に採用されているものとは限らないことをあらかじめお断りしておく.また筆者らの未熟さから生じる誤りが少なからずあると思われるが,ご寛容いただき,ご指摘いただければ幸いである.
 本書の出版にあたり,筆者らの所属機関の上司,先輩,同僚をはじめ,内外の多くの方から直接的・間接的なご支援を頂いた.また,東京電機大学出版局の菊地雅之氏を始めとする編集スタッフの方にはたいへんお世話になった.筆者らの都合により原稿の調整に手間取り,当初の刊行予定から随分と遅れてしまい,ご迷惑をおかけしたことをお詫びしたい.そのかわり,新しい情報を盛り込み,より深い考察のもと執筆を行うことがきた.この場を借りて深くお礼申し上げる.

2003年2月
著者一同


目次

まえがき
本書の使い方

第1章 天候デリバティブの歴史

1.1 米国の天候デリバティブ市場
  1.1.2 天候デリバティブ市場化への取組み
  1.1.3 天候リスクの証券化
  1.1.4 短期の天候デリバティブ取引の開始
  1.1.5 エンロンの破綻
1.2 欧州の天候デリバティブ市場
  1.2.1 天候デリバティブ市場化への取組み
1.3 日本の天候デリバティブ市場
  1.3.1 電力自由化の動向
  1.3.2 日本の天候リスク
  1.3.3 金融機関による市場の形成
  1.3.4 定型化商品の販売
  1.3.5 エネルギー業界の参入
  1.3.6 取引市場創設への動き

第2章 事業法人市場について
2.1 事業法人市場の現状と問題点
  2.1.1 天候デリバティブリスクコントロールの基本的な考え方
  2.1.2 事業法人市場の特徴と問題点
  2.1.3 天候デリバティブ市場の主要プレイヤーとそのリスクについて
  2.1.4 問題の解決に向けて
2.2 保険サイドから見たマーケット
  2.2.1 天候リスクと損害保険会社
  2.2.2 異常気象保険と天候デリバティブ
  2.2.3 異常気象保険の特徴
  2.2.4 天候デリバティブの媒介
2.3 インターバンクマーケット
  2.3.1 プレイヤーの現状と将来
  2.3.2 取引形態

第3章 オプションプライシングの基礎
3.1 オプションとは
  3.1.1 コールオプション
  3.1.2 プットオプション
3.2 リスク中立確率とオプション価格
3.3 CRR(Cox-Ross-Rubinstein)モデル
3.4 確率微分方程式とブラック・ショールズ方程式
  3.4.1 ブラウン運動
  3.4.2 伊藤の公式とギルサノフの定理
  3.4.3 オプション価格

第4章 気象データ
4.1 気象データの取得
  4.1.1 国内気象データの取得
4.2 海外気象データの取得
4.3 気象データの修正
  4.3.1 欠測値の修正
  4.3.2 不連続データの修正

第5章 分布と予測
5.1 天候デリバティブはデリバティブか?
  5.1.1 デリバティブと原資産
  5.1.2 原資産の挙動:ブラウン運動
  5.1.3 原資産の挙動:周期性
  5.1.4 原資産:二つのとらえ方
5.2 インデックスの予測
5.3 定常過程
  5.3.1 データの分解
  5.3.2 平滑化(Smoothing)
5.4 定常モデル
  5.4.1 因果性と反転可能性
  5.4.2 定常性
  5.4.3 最良予測
  5.4.4 状態空間表示とパラメータ駆動モデル
5.5 分布の推定
  5.5.1 パラメトリックな方法:最尤法
  5.5.2 ノンパラメトリックな方法
  5.5.3 主な分布
5.6 Implied Average
5.7 マーケット・クオテーション
5.8 予報の応用(1ヶ月,3ヶ月,寒暖候期)
5.9 時系列分析のまとめ

第6章 時価評価
6.1 会計処理上の時価評価
  6.1.1 時価評価の必要性
  6.1.2 天候デリバティブの時価評価
6.2 顧客に提示する時価評価
  6.2.1 時価評価提示の必要性
  6.2.2 提示すべき時価

第7章 天候リスクのマネジメント
7.1 天候リスク
  7.1.1 天候デリバティブの特徴
  7.1.2 個別の天候デリバティブのリスク評価
  7.1.3 統計分布を利用した評価
  7.1.4 天候デリバティブポートフォリオのリスク評価手法
7.2 信用リスク
  7.2.1 信用リスク額の算出
7.3 その他のリスク
  7.3.1 市場リスク
  7.3.2 金利リスク
  7.3.3 モデルリスク

第8章 会計実務について
8.1 天候デリバティブの会計処理
  8.1.1 オプションの時価会計
  8.1.2 オプションの取得原価会計
  8.1.3 スワップの時価会計
8.2 税務上の取扱
  8.2.1 天候デリバティブの法的性格について
8.3 金融商品販売法の観点から
  8.3.1 金融商品販売法の基本的な考え方
  8.3.2 媒介取引に関して

第9章 実際のプロダクツ
9.1 CDD/HDDコール・プット
  9.1.1 CDDコールオプション
  9.1.2 CDDプットオプション
  9.1.3 CDDカラー
  9.1.4  CDDスワップ
  9.1.5 HDDコール・プット・カラー・スワップ
9.2 平均気温オプション
9.3 気温デイカウントオプション
9.4 降水量オプション
  9.4.1 累積降水量オプション
  9.4.2 降水量デイカウントオプション
9.5 降雪量・積雪深オプション
  9.5.1 降雪量デイカウントオプション
  9.5.2 積雪深デイカウントオプション
9.6 風速デイカウントオプション
9.7 その他のオプション
  9.7.1 時間指定型オプション
  9.7.2 複数地点オプション
  9.7.3 バリアオプション
  9.7.4 複合オプション
9.8 今後開発が予想される商品
9.9 契約書について

索引


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