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ディリバティブ価格の決定についてファイナンスの数理

ファイナンスの数理 ディリバティブ価格の決定について A Course in Financial Calculus

A5判 282ページ 上製
価格:3,630円 (消費税:330円)
ISBN978-4-501-62060-8(4-501-62060-9) C3041
奥付の初版発行年月:2005年03月 / 発売日:2005年03月中旬

内容紹介

ファイナンス数学の入門書

前書きなど

 ファイナンス数学は,学術界と産業界の共同研究によって成功した特筆すべき一例だ.大学と銀行で発展した高度な数学的技法は,デリバティブ・ビジネスを数兆ドル市場へと変貌させた.このことによって高度に訓練された学生の需要が生まれ,この需要からテキストの必要性がでてきたのだ.
 本書はファイナンス数学への入門書で,Martin Baxter&Andrew RennieのFinancial Calculusから大きな影響を受けている.MartinとAndrewには,彼らの指導と彼らの本にあるいくつかの題材の使用を許可してくれたことに,大いに感謝している.
 このテキストの構成はFinancial Calculusに準じているが,数学,特に確率解析の議論は大学の数学科コースに適したレベルにまで拡張して,数多くに演習問題をつけてある.教科に適した妥当な長さにするために犠牲にした部分もかなりある.特に利子率モデルに関する議論のために紙幅を割けなかったが,よく知られているモデルのほとんどは演習問題にあげておいた.部分的な補足として,利子率モデルを厳密に学ぶために必要な数学的背景は第7章に含め,そこではファイナンス数学の中級コースで取り上げる若干のトピックスを簡単に紹介してある.演習問題は,このテキストの不可欠な部分と見なされている.これらの解答は,solutions@Cambridge.orgから正真正銘の先生方なら利用できる.
 本書では確率的な方法に重きをおいているが,その他の方法を排除しているわけではない.多くの実務的な本で一般的となっているが,ここでも裁定価格決定の考え方を導入するために2項ツリー(分枝木)を採用していた.Financial Calculusにしたがって,2項ツリーの枠組みの中でマルチンゲールや確率解析に関するカギとなる重要な定義や結果の離散バージョンも提示してある.この重要な考え方は,解析的技法によってその輝きが奪われるものではなくて,むしろ後の章で扱う,より技術的な結果にいたる道を拓くものだ.偏微分方程式による方法は,デルタ・ヘッジ法およびFeynman−Kacの確率表現定理の両者によって裁定価格決定と結びついている.いずれの方法を取るにせよ,強調したい要点は,この理論は裁定が存在しないという仮定に基づいているから,ヘッジが核心になるということである.価格決定方式が意味をもつのは,「複製ポートフォリオ」が存在するときだ.
 このテキストの初期のバージョンは,もともと1997/8年度にオックスフォード大学の最終学年の学部生と初学年の院生に配布したものだ.確率論的にいくらか通じていることを前提としてはいたが要件とは見なしていなかったし,それに何よりこのコースを履修した学生たちは,授業が進むにつれて必要な概念をほとんど苦もなく習得したものだ.適切な背景的読み物として,参考文献を推薦する.初級コースでは主題の引っかく程度に過ぎないものであるから,知識を追加したりさらに先に進むためには,手に入る書物は戸惑うほど書棚に並んでいるので,それらを読むとよい.
 このプロジェクトはEPSRC Advanced Fellowshipの支援を受けた.Magdalen Collegeで仕事ができることをうれしくもあり,名誉に思う.それとともに,あのような素晴らしい環境でこの仕事ができたことに対して,学長はじめ教員やスタッフそして学生たちに感謝する.多くの人々が有益な提案をしてくれたり初期の原稿を読んでくれた.特に私は,Ben HamblyとAlex JacksonおよびSaurav Senに感謝する.また,この仕事を形あるものにするのに重要な役を担ってくれたCambridge University PressのDavidTranahにも感謝する.彼の助言はこの上なく貴重なものだった.とりわけ私は,Lionel Masonに対して,彼の不断の援助と激励には感謝したい.

 2001年6月 アリソン・イーサリッジ


目次

第1章 1期間モデル
 1.1 ファイナンス用語の定義
 1.2 フォワードの価格決定
 1.3 1期間2値モデル
 1.4 3値モデル
 1.5 無裁定の条件
 1.6 リスク中立確率測度
 演習問題
第2章 2値モデルと離散時間マルチンゲール
 2.1 多期間2値モデル
 2.2 アメリカン・オプション
 2.3 離散時間マルチンゲールとマルコフ過程
 2.4 重要なマルチンゲール定理
 2.5 2値表現定理
 2.6 連続時間モデルへの序曲
 演習問題
第3章 Brown運動
 3.1 Brown運動の定義
 3.2 Levyの構成法
 3.3 反射原理と伸縮性
 3.4 連続時間マルチンゲール
 演習問題
第4章 確率解析
 4.1 株価系列は微分できない
 4.2 確率微分
 4.3 伊藤の公式
 4.4 部分積分と確率的Fubiniの定理
 4.5 Girsanovの定理
 4.6 マルチンゲールのBrown運動表現
 4.7 幾何Brown運動が有効な理由
 4.8 Feyman−Kacの表現
 演習問題
第5章 Black−Scholesモデル
 5.1 基本的Black−Scholesモデル
 5.2 ヨーロピアン・オプションに対するBlack−Scholesの価格決定とヘッジ
 5.3 外国為替
 5.4 配当
 5.5 債券
 5.6 リスクの市場価格
 演習問題
第6章 いろいろなペイオフ
 6.1 不連続なペイオフをもつヨーロピアン・オプション
 6.2 多段階オプション
 6.3 ルックバック・オプションとバリアー
 6.4 アジアン・オプション
 6.5 アメリカン・オプション
 演習問題
第7章 拡張モデル
 7.1 一般的な株式モデル
 7.2 複数銘柄の株式モデル
 7.3 ジャンプのある資産価格モデル
 7.4 モデルの誤差
 演習問題

記号
参考文献
索引


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