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分断の時代をサバイブするために普遍主義の可能性/不可能性

普遍主義の可能性/不可能性 分断の時代をサバイブするために

有賀 誠:編著, 田上 孝一:編著, 松元 雅和:編著
四六判 370ページ 上製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-588-15135-4 C3031
奥付の初版発行年月:2024年02月 / 発売日:2024年02月中旬

内容紹介

文化や言語、人種や性の多様性・特殊性が尊重されるべきグローバル世界のなかで、いま「普遍主義」はどのように可能なのか。西洋中心主義的・植民地主義的な価値の押しつけではなく、排他的なナショナリズムによる反西洋・反合理主義でもなく、新自由主義に回収されてしまうポストモダンでもない、真に平等なコスモポリタニズムの可能性を問う共同研究論集。分断を超える理論と実践のために。

著者プロフィール

有賀 誠(アリガ マコト)

有賀 誠(アリガ マコト)[第10章]
1960年生。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。防衛大学校人文社会科学群公共政策学科教授。主要業績:『ユートピアのアクチュアリティ』(共編著、晃洋書房、2022年)、『徳と政治』(共編著、晃洋書房、2019年)、『臨界点の政治学』(晃洋書房、2018年)。

田上 孝一(タガミ コウイチ)

田上 孝一(タガミ コウイチ)[第5章]
1967年生。社会主義理論学会事務局長・立正大学人文科学研究所研究員。哲学・倫理学専攻。博士(文学)。主要業績:『はじめての動物倫理学』(集英社新書、2021年)、『マルクスの名言力』(晶文社、2023年)、『原子論の可能性』(共編著、法政大学出版局、2018年)。

松元 雅和(マツモト マサカズ)

松元 雅和(マツモト マサカズ)[第4章]
1978年生。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。日本大学法学部教授。主要業績:『公共の利益とは何か──公と私をつなぐ政治学』(日本経済評論社、2021年)、『人口問題の正義論』(共編著、世界思想社、2019年)、『正義論』(共著、法律文化社、2019年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

■著者(章順)
伊藤 恭彦(イトウ ヤスヒコ) [第1章]
1961年生。大阪市立大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得。博士(法学)。名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。主要業績:『多元的世界の政治哲学』(有斐閣、2002年)、『貧困の放置は罪なのか』(人文書院、2010年)、『タックス・ジャスティス』(風行社、2017年)。

上原 賢司(ウエハラ ケンジ) [第2章]
1980年生。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。藤女子大学文学部文化総合学科准教授。政治学(博士)。主要業績:『グローバルな正義──国境を越えた分配的正義』(風行社、2017年)、「グローバル正義論と「公正な」貿易」(『思想』第1155号、2020年)。

施 光恒(セ テルヒサ) [第3章]
1971年生。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。九州大学大学院比較社会文化研究院教授。主要業績:『リベラリズムの再生』(慶應義塾大学出版会)、『英語化は愚民化』(集英社新書)、『本当に日本人は流されやすいのか』(角川新書)。

中村 隆志(ナカムラ タカシ) [第6章]
1982年生。関西大学大学院法学研究科博士課程後期課程修了、博士(法学)。東海大学政治経済学部准教授。主要業績:「コミュニタリアニズムと徳──「陶冶の政治」は可能か」(菊池理夫・有賀誠・田上孝一編著『徳と政治──徳倫理と政治哲学の接点』晃洋書房、2019年)。

松山 聡史(マツヤマ サトシ) [第7章]
2018年、名古屋大学大学院法学研究科博士前期課程修了。修士(現代法学)。同研究科博士後期課程在籍中。主要業績:「シティズンシップ教育研究における「学校中心主義」──イバン・イリイチの「脱学校論」に依拠して」(『名古屋大学法政論集』第283–284号、2019年)。

菊池 理夫(キクチ マサオ) [第8章]
1948年生。1975年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。博士(法学)。三重中京大学名誉教授。主要業績:『共通善の政治学──コミュニティをめぐる政治思想』(勁草書房、2011年)、『ユートピア学の再構築のために』(風行社、2013年)。

轟 孝夫(トドロキ タカオ) [第9章]
1968年生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。防衛大学校人文社会科学群人間文化学科教授。主要業績:『存在と共同』(法政大学出版局)、『ハイデガー『存在と時間』入門』『ハイデガーの哲学』(講談社現代新書)、『ハイデガーの超‐政治』(明石書店)。

大場 優志(オオバ マサシ) [第11章]
1998年生。名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程在学中。修士(法学)。日本学術振興会特別研究員DC2。主要業績:「性的マイノリティは政治的に代表されうるのか──構築主義的代表の枠組みから」(『政治思想研究』第23号、2023年)。

見崎 史拓(ミサキ フミヒロ) [第12章]
1990年生。2020年、名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。名城大学法学部准教授。主要業績:「実験主義と法的安定性」(『法律時報』93巻8号、2021年)、「批判法学は乗り越えられたのか?」(『岡山商科大学法学論叢』30号、2022年)。

目次

まえがき  【有賀 誠】

第1部 グローバル化のなかの普遍主義

第1章 「帝国」の普遍主義とコスモポリスの普遍主義──対話するコスモポリタニズムの可能性 【伊藤恭彦】

はじめに──グローバルな正義とコスモポリタニズムの挫折?
1 コスモポリタニズムの社会的背景
2 対話的コスモポリタンの可能性
おわりに──コスモポリティクス

第2章 正義の探求にあたってコスモポリタニズムはもう不要なのか? 【上原賢司】

はじめに──今の時代におけるコスモポリタニズム
1 「コスモポリタニズム」をつかまえる──いくつかの分類と評価
2 私たちは「誰しもコスモポリタン」である?──コスモポリタニズム不要論の含意
3 コスモポリタニズムとグローバルな政治共同体──新たなコスモポリタニズムの可能性
おわりに──私たちは「誰しもコスモポリタン」ではない!

第3章 グローバル化は「進歩」「時代の趨勢」だと言えるのか──新自由主義的な通俗的歴史観を疑う【施 光恒】

はじめに──今なお進む「グローバル化」「英語化」
1 「グローバル化史観」と「進歩」のイメージ
2 近代社会の成立の条件としての翻訳の意義
3 現在のグローバル化は「退歩」の側面を持つのでは?
4 「近代主義」のネイション論への疑念
5 多元的世界の必要性
6 「国際化」ビジョンという代替案
おわりに

第4章 パトリオティックな配慮とその限界──国際社会における消極的/積極的義務 【松元雅和】

はじめに
1 国際社会の四つの義務
2 選好テーゼ
3 同等テーゼ
4 優先テーゼ
おわりに

第2部 西洋/反西洋の思想と普遍主義

第5章 マルクスにおける普遍と特殊 【田上孝一】

はじめに
1 階級闘争の真実
2 普遍的解放を目指すヒューマニズム
3 普遍的解放の主体としてのプロレタリアート
4 私的所有否定の真意
5 普遍的価値としてのヒューマニズム
6 マルクスによる真正社会主義批判の真意
7 特殊主義の創始者としての後期エンゲルス
おわりに

第6章 共和主義と普遍主義──シティズンシップの領域性の再検討 【中村隆志】

はじめに
1 共和主義的シティズンシップ
2 多元的社会における市民的徳
3 政治的統合の特殊性と普遍性
おわりに

第7章 「ヴァナキュラーな価値」の普遍的帰結の可能性、そして現代的課題 【松山聡史】

はじめに
1 「普遍的なもの」の西洋的なあり方──制度化された「普遍的なもの」
2 ヴァナキュラーな価値──「制度化された価値」の根本的な対義語
3 「普遍的なもの」のもう一つのあり方──制度化されていない「普遍的なもの」
おわりに

第3部 東洋・日本の思想と普遍主義

第8章 現代コミュニタリアニズムの普遍性──西洋の普遍主義と東洋の普遍主義 【菊池理夫】

はじめに
1 現代コミュニタリアニズムは特殊主義なのか?
2 英米の自由主義と「自由な帝国」
3 西洋帝国主義とアジア主義の普遍主義
おわりに

第9章 反普遍主義の政治──ハイデガーと京都学派の場合 【轟 孝夫】

はじめに
1 ハイデガーの反普遍主義
2 京都学派の反普遍主義
3 反普遍主義の可能性
おわりに

第4部 ポストモダン以降の政治と法における普遍主義

第10章 アイデンティティ政治のパラドクス──普遍性はどのように回復されるべきか 【有賀 誠】

はじめに
1 アイデンティティ政治の興隆とその問題
2 リベラルの処方箋とその問題点──A・センとW・ブラウン
3 普遍主義の回復──A・バディウと出来事
4 普遍的なものはどこに見出されるのか──S・ジジェクの「ポスト政治」批判
5 出来事を見出すのは誰か
おわりに

第11章 I・M・ヤングにおける「普遍主義」──「構造」をめぐる議論を「経験」へと開くこと 【大場優志】

はじめに
1 「普遍性」に対するヤングの立場
2 「普遍性」をめぐる疑問
3 「経験」に基づいて「構造」を論じるなかでの「普遍性」
4 ヤングにおける「普遍主義」の現代的意義
おわりに──依然として残されている研究課題

第12章 法の普遍性への不信──批判法学とその後続者たちに見る信仰喪失の諸相 【見崎史拓】

はじめに
1 批判法学──法の普遍性に対する信仰とその喪失
2 信仰喪失の普遍化可能性
3 多様な信仰喪失──批判法学的な信仰喪失との距離
4 信仰喪失の先に──再び普遍性へ?
5 それでも不信を貫くならば
おわりに

あとがき  【田上孝一】
索引


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