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知恵と美意識の小宇宙日本のお弁当文化

日本のお弁当文化 知恵と美意識の小宇宙

四六判 252ページ 並製
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-588-30052-3 C0039
奥付の初版発行年月:2020年04月 / 発売日:2020年04月中旬

内容紹介

和食が世界無形文化遺産に登録され、近年ますます国内外から注目されている「お弁当」。百姓や雑兵の携行食から、観劇のお供の幕の内、各地の名産の詰まった駅弁、松花堂や現代のキャラ弁にいたるまで、庶民のエネルギー源であり美意識の表現でもあったお弁当は、どんな歴史を歩んできたのか。だれもが愛する独特の文化を、器や食の作法の伝統にも注目しながら語り下ろした初の書。オールカラー。

著者プロフィール

権代 美重子(ゴンダイ ミエコ)

1950年生まれ。大阪府出身。日本女子大学卒業、立教大学大学院修了。日本航空㈱国際線客室乗務員・文化事業部講師を経て、ヒューマン・エデュケーション・サービス設立。1997年より(財)日本交通公社嘱託講師、国土交通省・観光庁・自治体の観光振興アドバイザーや委員を務める。2009年より横浜商科大学、文教大学、高崎経済大学の兼任講師(ホスピタリティ論、アーバンツーリズム、ライカビリティの心理と実践、他)。著書:『新現代観光総論』(共著、学文社、2019)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

序 章 世界が注目する日本のお弁当文化

1 海外のBENTO人気
パリのお弁当専門店/ニューヨークのBENTO事情/火付け役は日本のアニメ

2 手作り弁当のひろがり
「手作り弁当」はスマートな女性の証し/簡便第一から「手作り弁当」へ/高まる「お弁当箱」への関心/「国際BENTOコンテスト」

3 「お弁当」と日本の食文化の特徴

第一章 「働く力」とお弁当
1 里の民のお弁当
田植時の「コビリ(小昼)」/「穀霊信仰」と「田植祝い」「サオリ」「サノボリ」「ハンゲ」

2 山の民のお弁当
「木挽きの一升飯」「目張りずし」/「ゴヘイモチ」と山の神信仰/「マタギ」──山神信仰と「カネモチ」

3 海の民のお弁当
「船弁当」の工夫/「船霊信仰」と漁師の心意気

4 「お弁当箱」の用と美

5 戦う人々の携行食
『雑兵物語』から──携行食の工夫「打飼袋」と「芋茎縄」/「兵糧丸」──栄養補給の隠し玉/「あくまき」──日持ちと食べやすさの知恵

6 「腰弁当」──泰平の世のお弁当
江戸時代の腰弁当/明治時代──「オール腰弁時代」のはじまり/新腰弁時代──「愛妻弁当」

7 戦後復興の力──「ニコヨン」と「ドカ弁」

第二章 花見弁当 季節や自然を楽しむお弁当

1 サクラ神事と「花見」

2 平安貴族の観桜の宴

3 秀吉の「吉野の花見」

4 江戸の庶民の年中行事としての「花見」

5 花見弁当
「花見弁当」の献立──『料理早指南』より/長屋の「花見弁当」/花見酒

6 花見のお弁当箱
「重箱」と「提重」/使い捨て弁当箱「割籠(折箱)」

7 世相を映す「師匠の花見」──弁当二千人前・弁当長持十五棹
寺子屋の宣伝活動/「花見小袖」/「大量の花見弁当」──「仮装」と「茶番」/「師匠の花見」の時代背景と庶民の諧謔精神

8 季節と自然はお弁当を楽しむための舞台装置

第三章 観劇弁当  芝居と一体化して楽しむお弁当

1 庶民の大娯楽「歌舞伎」

2 「宮地芝居」の継承──「大鹿歌舞伎」と「ろくべん」

3 江戸の芝居見物──一日がかりの大娯楽

4 芝居茶屋の食事──『宴遊日記別録』 から

5 食べながらの芝居見物

6 「かべす」の楽しみ
「か」=菓子──砂糖の国産化/「べ」=「べんとう」──「幕の内弁当」登場/「す」=「すし」──「助六寿司」

7 歌舞伎の変身──大衆演劇から芸術へ

第四章 駅弁  旅情を楽しむお弁当

1 フランス、パリ・リヨン駅の駅弁テスト販売

2 駅弁の魅力──「掛紙」
パリでのテスト販売駅弁の「掛紙」/「掛紙」の由来と意味/「掛紙」が語る世相とメッセージ

3 「駅弁」お弁当箱の魅力

4 駅弁の「盛り付け」の魅力

5 駅弁の歴史
「駅弁」の定義/駅弁と時刻表/駅弁と戦争/駅弁と集団就職/駅弁と災害支援

6 駅弁販売法今昔
「立ち売り」/「駅弁大会」

第五章 松花堂  おもてなしのお弁当

1 「松花堂」の誕生

2 「松花堂」の工夫

3 「松花堂」と茶道
茶道の歴史/茶道の精神

4 「松花堂」と「懐石」
「懐石」とは/「懐石」と「趣向」

5 「松花堂」考案者、湯木貞一
料理人 湯木貞一/「松花堂」への思い

第六章 食の思想とお弁当

1 神への畏敬と感謝から
「神饌」── 思いを伝えるために美しく盛る/「直会」──絆を深めるための共食

2 命への畏敬──「包丁式」

3 「食法一体」──食と生き方を重ねる
道元と食の思想/『典座教訓』──食事を作る者の心構え

4 『赴粥飯法』──受食の作法
食前・食後の挨拶/「応量器」──作法の原点/「箱膳」──属人器文化

5 食の思想の浸透
寺請制度/「おべんとう」の歌

第七章 社会の変化とお弁当

1 お弁当の社会的役割
超高齢化社会を迎えて──お弁当宅配サービス/療養食や健康食の宅配弁当

2 ライフスタイルの変化と価値観の多様化
「中食」産業の急伸/「持ち帰り弁当」/お取り寄せ弁当「仕出し弁当」/「おせち」の取り寄せ

3 ICTとお弁当
企業向け宅配弁当の躍進/特別食への対応

4 「手作り弁当」の趣味化
お弁当ブログ/「キャラクター弁当」/「弁当男子」の登場

おわりに/参考文献資料
あとがき

【コラム】
① 十七世紀の『日葡辞書』に“Bento”の記述
② 寒冷地の知恵 凍らない餅の秘密「ごんぽっぽ」
③ ブルーノ・タウトのお弁当籠
④ 「兵糧丸」の主な配合材料と機能
⑤ 『作庭記』
⑥ 江戸の娯楽料理本『料理早指南』
⑦ 判じ柄 庶民の洒落心
⑧ 芝居好きのやんちゃ姫 紀伊藩主奥方豊姫
⑨ 大名と歌舞伎 「座敷芝居」
⑩ お弁当の普及と地廻り醤油
⑪ 「引き札」に見る江戸っ子の遊び心
⑫ 江戸の風俗百科事典『守貞謾稿』
⑬ 『料理早指南』 お弁当の詰め方指南
⑭ 特殊弁当いろいろ
⑮ 「道中弁当」 江戸時代の旅のお弁当
⑯ 大名茶人の領主としての顔
⑰ 「和包丁」について
⑱ ハラール食


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