法政大学現代法研究所叢書52
消費者紛争解決手段の発展に向けて 実体法・手続法の課題
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-588-63052-1 C3332
奥付の初版発行年月:2024年04月 / 発売日:2024年04月上旬
消費者紛争の司法的解決はどのようになされるべきか? 消費者裁判手続特例法や差止訴訟など、集団的な消費者の紛争を一括して解決する上で生じる問題はもちろん、個別の消費者の司法的救済にあたって生じる実体法上および手続法上の問題に関して、消費者法分野以外の紛争解決制度も参考にしつつ、研究者・実務家が「共働」して取り組んだ最新の研究成果。
大澤 彩(オオサワ アヤ)
大澤 彩(オオサワ アヤ)
法政大学教授 はしがき、第13章
著者(50音順)
内海 博俊(ウチウミ ヒロトシ) 東京大学教授 第4章
大澤 逸平(オオサワ イッペイ) 専修大学教授 第3章
杉本 和士(スギモト カズシ) 法政大学教授 第7章、第8章
都筑 満雄(ツヅキ ミツオ) 明治大学教授 第6章、第7章、第8章、第9章
幡野 弘樹(ハタノ ヒロキ) 立教大学教授 第11章
原 琢磨(ハラ タクマ) 弁護士 第5章
福島 成洋(フクシマ シゲヒロ) 明治学院大学准教授 第2章
八木 敬二(ヤギ ケイジ) 成蹊大学准教授 第12章
山城 一真(ヤマシロ カズマ) 早稲田大学教授 第1章
ルブルトン カロリーヌ(Lebreton Caroline) 法政大学兼任講師 第10章
目次
はしがき
第1章 詐欺・誤認の構造と認定
紛争の潜在的多数当事者性と実体規定のあり方をめぐる準備的検討 山城一真
Ⅰはじめに
1消費者実体法の形式
2民事ルールの活用
3本稿の構成と方針
Ⅱ故意
1実体要件
(1)故意の定義
(2)認識の対象
2認定手法
(1)推認の過程
(2)推認の方法
3小括
Ⅲ違法性
1評価の基礎づけ
(1)行為
(2)結果
2評価の方向づけ
3小括
Ⅳおわりに
第2章 消費者契約法における努力義務について 福島成洋
Ⅰはじめに
Ⅱ制定経緯による類型化
1立法時
2平成30年(2018年)改正
3令和4年(2022年)通常国会の改正
Ⅲ効力規定との結びつきの程度に着目した類型化
1効力規定との結びつきの強弱
(1)効力規定との結びつきが弱い規定
(2)効力規定との結びつきが強い規定
(3)裁判官による努力義務規定の活用
2法制化の難易度
Ⅳ消費者契約法における努力義務の展望
1シナリオ1:効力規定との結びつきが弱い努力義務の増加
2シナリオ2:努力義務の規定が効力規定に進化
3シナリオの分かれ目――消費者法における消費者契約法の立ち位置
(1)現状:身動きが取りづらい消費者契約法
(2)消費者契約の基本ルールとしての消費者契約法
第3章 フランスにおける民事罰金制度の動向
近時の展開と刑事的性質をめぐって 大澤逸平
はじめに
Ⅰ民事罰金制度の歩み
1民事契約外責任制度改正論議における民事罰金
2民事罰金制度の各種法における拡大
Ⅱ民事罰金の刑事性をめぐって
1民事罰金の刑事性
2刑事性を否定する見解
おわりに
第4章 共通義務確認訴訟における「和解の早期柔軟化」の意味するところをめぐって 内海博俊
Ⅰはじめに
Ⅱ訴訟上の和解一般に関する規律
1一般的な説明
(1)一般的な想定
(2)要件
(3)手続と規律のタイミング
2他人のための和解
(1)代理人による和解
(2)訴訟担当者による和解と「管理・処分権」
3若干の分析
(1)管理・処分権と和解の関係
(2)解決なき和解をめぐって
(3)紛争の温存を(どこまで)懸念すべきか
(4)小括
Ⅲ特例法における和解と「早期柔軟化」
1改正前法10条の二面性と限界
(1)授権か制限か
(2)改正前法10条の限界
2和解に関する他の規律
(1)相互牽制
(2)行政による監督
(3)若干のコメント
Ⅳおわりに
第5章 適格消費者団体及び特定適格消費者団体の実務と課題に関わる雑感 原琢磨
Ⅰはじめに
Ⅱ適格消費者団体の実務
1適格消費者団体の意義
2適格消費者団体の組織
(1)理事会
(2)検討部門
(3)事務局
3差止請求権の行使の過程
4経理的基礎
Ⅲ特定適格消費者団体の実務
1特定適格消費者団体の意義
2弁護団方式との比較
3被害回復裁判手続の過程
Ⅳ適格消費者団体及び特定適格消費者団体の制度の維持にあたっての課題
1検討部門及び事務局の人材の確保
2経理的基礎の強化
3情報の収集と発信
Ⅴおわりに
第6章 カナダ・ケベック州のクラス・アクション法に見る不当利益はく奪
消費者裁判特例手続の実効化のための示唆を求めて 都筑満雄
Ⅰはじめに
1集団的消費者被害と不当利益はく奪
2消費者裁判特例手続の不十分さ
3フランスにおけるグループ訴権立法後の動向
4カナダ・ケベック州のクラス・アクション法を参照する理由
5本稿の目的
Ⅱクラス・アクション法の概要
1クラス・アクション法の性格
2回収に至るまでの手続
(1)認可手続
(2)クラス・アクションの進行
(3)判決および和解
Ⅲ回収手続
1集団的回収
(1)意義
(2)実行方法
(3)分配方法
(4)残余金の第三者への付与
2個別的回収
Ⅳクラス・アクション支援基金
1意義
2援助の付与
3基金と受益者の権利義務
4基金の収入
Ⅴ残余金の処遇とクラス・アクションの目的
Ⅵ結びに代えて
1ケベック州のクラス・アクション法の注目すべき特質
2不当利益はく奪の仕組み
3回収した金額の帰属とクラス・アクションの目的
第7章 参照条文訳①カナダ・ケベック州民事訴訟法典第6編第3章 翻訳 杉本和士・都筑満雄
第8章 参照条文訳②クラス・アクション支援基金に関する法律 翻訳 杉本和士・都筑満雄
第9章 参照条文訳③クラス・アクション支援基金による天引きの割合に関する規則 翻訳 都筑満雄
第10章 フランスにおける消費者の個人情報保護と救済 Lebreton Caroline
Ⅰはじめに
Ⅱ個人情報等に関する定義の変遷と検討の範囲
ⅢRGDPの原則、消費者の個人情報を取り扱う際の義務
1RGDPに明文化された原則
2消費者に関わるデータ処理の根拠
3データ主体の権利
Ⅳ消費者の救済制度
1各個人の救済制度
2グループ訴訟による救済
(1)無委任型訴訟
(2)委任型訴訟
3今後の動き
(1)指令の導入、内容
(2)フランス国内法に導入する経緯と現状
Ⅴむすびに代えて
第11章 家事事件手続から消費者救済手続へ(コメント) 幡野弘樹
Ⅰ当事者の視点から
1遺産分割をめぐる紛争
2未成熟子が現れる紛争
Ⅱ手続規範の視点から
1職権探知主義の正当化根拠
2消費者法への応用可能性
第12章 Action de groupe à la japonaise Keiji YAGI
Ⅰ Présentation de l’action de groupe à la japonaise
1Aperçu de l’action de groupe à la japonaise
2La réforme législative de 2023
(1)L’extension de la portée (Article 3, paragraphe 1 alinéa 4–5,et paragraphe2 alinéa 6, de la loi spéciale)
(2)L’assouplissement et l’accélération des accords (Article 11 de la loi spéciale)
Ⅱ Exemples d’applicatio
Ⅲ Construction théorique du système
1Le contentieux pour l’obtention d’un jugement déclaratif portant sur de responsabilité commune
(1)La théorie du pouvoir de gestion des conflits
(2)La protection de l’intérêt collectif lato sensu
(3)L’action substitution, plus similaire à l’action de vérification de l’authenticité des documents
(4)Synopsis
2Possibilité de règlement par stipulation pour autrui
Ⅳ Tâches accumulées non résolues
第13章 消費者紛争の解決に向けた事業者の役割
フランス法と比較して 大澤彩
Ⅰはじめに
Ⅱ日本法の現状
1事業者による自主的な対応
2法令に基づく対応
Ⅲフランス法
1概要
2消費者調停制度
(1)消費法典における消費者調停制度
(2)事業者の「義務」
(3)調停員の質確保―消費者調停評価統制委員会の役割
(4)調停手続
Ⅳ検討―結びにかえて
1紛争解決における事業者の役割
2「情報提供」による消費者の権利実現の促進