内容紹介
あ ら ゆ る あ な た の 悲 し み の 上 に
戦後ヨーロッパを代表するドイツ系ユダヤ人の詩人、パウル・ツェラン(Paul Celan, 1920〜70)。
多民族・多言語が往来する東欧の都市チェルノヴィッツでの誕生から、強制収容所での両親の死、豊かな文学的交友と裏腹のいわれなき誹謗中傷、そして、やがて訪れるセーヌ川での最期まで——。栄光と奈落の間に生きた激動の半世紀を、新資料を含む一次資料や、ツェランの知人・友人へのインタヴュー成果を交えて精巧に描いた初の本格評伝。
第10回 小野十三郎賞特別賞受賞!
関口裕昭(せきぐち ひろあき)
1964年大阪府生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。この間、ゲッティンゲン大学に留学。現在、愛知県立芸術大学准教授。専攻は、近現代ドイツ抒情詩、ドイツ・ユダヤ文学。著書に、『ドイツ詩を学ぶ人のために』(共著、世界思想社、2003)、『自然詩の系譜』(共著、みすず書房、2004)、『ツェラーンを読むということ』(共著、中央大学出版部、2006)、『パウル・ツェランへの旅』(郁文堂、2006)など。
目次
プロローグ——チェルノヴィッツ、人間と書物が生きていた土地
第一章 カスターニエンの樹々の向こうには世界がある——幼年時代(一九二〇〜三〇)
第二章 成長——初めての詩作(一九三〇〜三八)
第三章 黒い雪片——母に届けられなかった手紙(一九三九〜四四)
第四章 死のフーガ——ブカレストでの青春(一九四五〜四七)
第五章 鏡の中は日曜日——古都ウィーンに燃える恋(一九四七〜四八)
第六章 グラスの中の停泊地——パリ初期(一九四八〜五二)
第七章 慰めようとしない輝き——新しい死、新しい誕生(一九五三〜五七)
第八章 あらゆるあなたの悲しみの上に——栄光と奈落のあいだで(一九五八〜六〇)
第九章 盲目へと説き伏せられて——崩壊の予兆(一九六一〜六三)
第十章 息の結晶——妻との共同作業(一九六四〜六六)
第十一章 心の中に来るべき言葉を期待して——ハイデガーとの邂逅と五月革命(一九六七〜六八)
第十二章 言え、エルサレムはあると——最後の日々(一九六九〜七〇)
エピローグ
註
パウル・ツェラン略年譜
あとがき
参考文献
人名索引