内容紹介
▼時は明治。古い法体系が近代法体系へと移り行くそのはざまで、巷(ちまた)を騒がせた事件の「罪と罰」に、法制史家のあたたかく真摯な眼差しが向けられる。自ら史料を発掘し、読み解いてきた著者だけが語れる滋味あふれるエピソードの数々は、読者を歴史のロマンに誘う。
霞 信彦(かすみ のぶひこ)
慶應義塾大学法学部教授。法学博士。
昭和26年生まれ。昭和49年、慶應義塾大学法学部卒業。昭和54年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。
〔主要業績〕
『法学講義ノート』(第3版、慶應義塾大学出版会、平成19年)、『日本法制史史料集』(共編、慶應義塾大学出版会、平成15年)、『明治初期刑事法の基礎的研究』(慶應義塾大学法学研究会、平成2年)など。
目次
はしがき
Ⅰ 明治「罪と罰」
仮刑律・新律綱領・改定律例
明治初期の小型法令集
笞・杖・徒・流・死
明治十年代の「死刑」
「口書」にみる尊属殺
三百六十日と三百六十五日のはざまで
笞杖刑より懲役へ
通貨偽造は「梟」
犯姦律の改正をめぐって
鶏姦罪—施行八年半の軌跡
自首規定、その光と影
明治七年司法省第十号布達
明治初期の刑事統計を読む
旧刑法編纂と司法省
旧刑法と贈賄罪
竹橋事件雑考
Ⅱ 実像の「司法職務定制」
Ⅲ 東京集治監創設小史
Ⅳ 時代のはざまに瞬いた人々
山城屋和助 夢の跡
異色の陸軍刑法編纂官——岩下長十郎
忘れられた先駆者——平賀義質
津田真道の不遇時代
「東洋のオルトラン」宮城浩蔵
浪速艦事件——東郷平八郎と藤井三郎
新治裁判所在勤・司法権少判事 三島毅
若き日の児島惟謙
「夜嵐お絹」のことども
江藤新平と司法制度改革
届かなかった赦免状—「近藤富蔵」の赦免をめぐって
「山口多聞」をめぐって