窓あるいは鏡 ネオTV的日常生活批判 附 ウンベルト・エーコ「失われた透明性」
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-7664-1566-7 C3036
奥付の初版発行年月:2008年12月
私たちの日常生活とテレビとの関係を分析。
▼テレビは社会や世界に向かって開かれた「窓」(パレオTV)なのか。それとも、世界への眼差しを喪失し、もっぱらそれを観る者自身のみを映し出す「鏡」(ネオTV)に過ぎないのか。本書では、ウンベルト・エーコが提唱し、ドミニク・メールが発展させた「パレオTV/ネオTV論」を基軸に、ドキュメンタリー、ドラマ、スポーツ、バラエティ番組などの変容を分析。私たちの日常生活に深く浸透し、その認識枠組みを構築するテレビの変容と、メディア的日常を生き、主体性を喪失しつつある私たちの社会の閉塞状況との密接な繋がりを批判的に検証する。
▼ウンベルト・エーコによるメディア論の重要論文「TV: 失われた透明性」を書籍初収録。
水島久光(みずしま ひさみつ)
1961年生まれ。現在、東海大学文学部教授。1984年慶應義塾大学経済学部卒業後、広告会社、インターネット企業を経て、98年「インフォシーク」日本法人の立ち上げに参加。2001年東京大学大学院学際情報学修士課程修了。専門は、メディア論、情報記号論。主要著書に、『テレビジョン・クライシス——視聴率・デジタル化・公共圏』(せりか書房、2008年)、『閉じつつ開かれる世界』(勁草書房、2004年)、『知のデジタル・シフト』(共著、弘文堂、2006年)、等。
西兼志(にし けんじ)
1972年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得後退学。現在、東京大学大学院情報学環研究拠点形成特任研究員。情報・コミュニケーション学博士、哲学博士。訳書に、エマニュエル・オーグ『INA』(白水社、2007年)、論文に「顔の記号論の可能性——メディオロジー的接近の試み」(新記号論叢書『〈溶解〉する大学』慶應義塾大学出版会、2006年)、「ジャンルの掟——「契約」の限界から「接触」の可能性へ」(新記号論叢書『テレビジョン解体』慶應義塾大学出版会、2007年)などがある。
目次
はじめに——なぜ「テレビ」を研究するのか、なぜ「日常」を問題とするのか
第1部 コミュニケーション・システムとしてのテレビ——その理論的射程
テレビとは何だったのか——テレビの批判的研究の枠組を問い直す 水島久光
日常生活空間とテレビを媒介する理論 水島久光+西兼志
第2部 ジャンルの彼岸へ——語られざるコミュニケーションの階梯
バラエティと空間の地層——解放の笑い/笑いの解放 水島久光
ヒロシマ——ネオTV時代のドキュメンタリー 西兼志
ドラマの「真実」——タレント・ドラマからコンテンツ・ドラマ 西兼志
日本のテレビの「世界」——世界系の番組から見たパレオTV/ネオTV 西兼志
テレビ=サッカー——テレビ・コミュニケーションの〈基層〉 西兼志
「意味」への背走/「失敗」の系譜——ドキュメンタリー、ドラマ、スポーツを貫く記号の攻防 水島久光
第3部 テレビの再生——ネオTV的日常批判
人称化をめぐって——指標化とネオTV化のベクトルの交わるところ 西兼志
窓であり、鏡でもある——テレビの再生のための断章 水島久光
あとがき
註
参考文献
テレビ番組一覧
附 ウンベルト・エーコ「TV: 失われた透明性」(西兼志 訳)
訳者解題 西兼志