アジア系専門職移民の現在 変容するマルチカルチュラル・オーストラリア
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-1603-9 C3036
奥付の初版発行年月:2009年03月 / 発売日:2009年03月上旬
▼〈社会的弱者〉から〈パワー移民〉へ・・・
▼自由主義経済のもと、国境を越えて移動する専門職移民の、ますます拡大する政治的・社会的影響力を考える。
▼従来の移民研究の対象であった下層階層に属さず、社会的影響力を拡大しつつあるアジア系の専門職移民に関して、90年代以降のオーストラリアへの移民を対象とした実証研究をまとめた。他国の移民政策を考えるうえで示唆に富む一冊。
石井由香(いしい ゆか)
立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授。1993年、津田塾大学大学院国際関係学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学、筑波大学)。専門分野:国際社会学、地域研究(マレーシア、オーストラリア、日本)。
関根政美(せきね まさみ)
慶應義塾大学法学部教授。1979年、慶應義塾大学大学院社会学専攻博士課程単位取得退学、博士(社会学、慶應義塾大学)。
専門分野:国際社会学、現代オーストラリア論、社会変動論。
塩原良和(しおばら よしかず)
慶應義塾大学法学部准教授。2003年、慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(社会学、慶應義塾大学)。
専門分野:国際社会学、社会変動論、多文化主義研究、オーストラリア社会研究。
目次
序章 石井由香
1 オーストラリアにおけるアジア系専門職移民の流入
2 定住化するアジア系専門職移民
3 オーストラリアの多文化主義の変容とアジア系専門職移民——本書の問題意識
4 本書の構成
第1部 オーストラリアにおける多文化主義と移民政策の変容
第1章 オーストラリア多文化主義の歴史的発展とその変容
——共生から競生へ 関根政美
はじめに
1 多文化主義の概要——多文化共生と多文化競争
2 1970年代から80年代のオーストラリア多文化主義
3 20世紀末の反多文化主義とオーストラリア多文化主義
4 多文化主義の変容——福祉主義的多文化主義から経済主義的多文化主義へ
5 ハワード政権とオーストラリア多文化主義
6 経済主義的多文化主義と社会的排除
第2部 アジア系専門職移民の社会・文化統合
第2章 「社交クラブ」を越えて
——アジア系専門職移民のエスニック・アソシエーション活動 石井由香
はじめに
1 マレーシア生まれのオーストラリア居住者のプロフィール
2 文化を通じた社会参加——メルボルン・EAA
3 政治・社会参加の事例——シドニーEAB
4 オーストラリア市民のアソシエーションとしての活動のローカル性
おわりに
第3章 アジア系専門職移民の市民社会への統合
——政治・社会参加を通じて 石井由香
はじめに
1 エスニック・マイノリティの政治・社会参加に関する枠組み——バウベックのモデルを基盤として
2 アジア系専門職移民の政治・社会参加の拡大
3 専門職出身のアジア系政治家の登場
4 文化的ダイナミクスとアジア系専門職移民
5 「多文化尊重推進市民」としての意識と市民社会の文化的ディスコース
おわりに
第3部 アジア系専門職移民と多文化主義の変容
第4章 「コストのかからない移民」?
——アジア系ミドルクラス移民の社会福祉ニーズ 塩原良和
はじめに
1 福祉社会主義的多文化主義とエスニックグループの「制度化」
2 「改革」される福祉主義的多文化主義
3 「改革」とミドルクラス移民表象の共謀
4 アジア系ミドルクラス移民と社会福祉ニーズの実態
5 家族移民へのケアの必要性
6 階層を越えて共有されるニーズ
7 階層間で分断されるリアリティ
おわりに
第5章 階層とエスニシティを越えた社会的連帯に向けて
——アジア系ミドルクラス移民の市民活動実践 塩原良和
はじめに——「架け橋」としてのアジア系ミドルクラス移民?
1 ジア系ミドルクラス移民の市民活動実践——事例研究
2 「肯定」的多文化主義からの脱却?
3 多文化主義的な公共圏の発展への貢献
おわりに——アジア系ミドルクラス移民の実践の可能性
あとがき 石井由香
索引