工部省の研究 明治初年の技術官僚と殖産興業政策
価格:5,720円 (消費税:520円)
ISBN978-4-7664-1611-4 C3031
奥付の初版発行年月:2009年06月 / 発売日:2009年06月上旬
鉄道や電信事業を推進したのは誰か。
明治初年、「工部の理念」のもとに、西洋技術による殖産興業を担う技術官僚たちがいた。
明治留守政府下の政治状況と工部省の政策過程を追った近代日本史の知られざる一面を考究した画期的論考。
「殖産興業」は、日本の近代化の過程を考える上で重要なテーマであるが、その多くは経済史の立場からの分析であった。本書は、これまで注目されてこなかったお雇い外国人や技術官僚に着目し、政治史の視点から、工部省設立の基礎となった「工部の理念」と彼らの政治思想を解明する。
柏原宏紀(かしはら ひろき)
1978年生まれ。2003年、慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。2008年、慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。現在、慶應義塾大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。主要業績に、『戦前日本の政治と市民意識』(共著、慶應義塾大学出版会、2005年)、『現代政治学の課題』(共著、成文堂、2006年)、「明治五年の工部省の行政史的検討」(『法学政治学論究』70号、2006年)、「明治五年の工部省の政治史的検討」(『明治維新史研究』第3号、2006年)、『近代日本の政治意識』(共著、慶應義塾大学出版会、2007年)、「征韓論政変後の工部省に関する一考察」(『法学研究』82巻2号、2009 年)など。
目次
序章
第一部 工部省の成立と技術官僚
第一章 工部院設置をめぐる政治過程と技術官僚
一 はしがき
二 お雇い外国人モレルと「工部院建置之議」
三 「工部の理念」と技術官僚
四 民蔵分離と技術官僚
五 むすび
第二章 工部省設置過程と「工部の理念」
一 はしがき
二 民蔵分離後の政治過程
三 工部省設置をめぐる政治過程
四 設置時の工部省と「工部の理念」
五 むすび
第三章 草創期工部省の組織整備と技術官僚
一 はしがき
二 発足直後の工部省を取り巻く環境
三 組織整備と「工部の理念」
四 「工部の理念」の実現と限界
五 むすび
第二部 明治初年における工部省の展開と政策実現
第四章 明治五年の行政史的展開
一 はしがき
二 工部省技術官僚路線の修正
三 運用に向けた組織の充実
四 横須賀造船所の移管
五 むすび
第五章 明治五年の政策展開と政治手法
一 はしがき
二 工部省の政治的問題化の回避と水面下・間接的交渉の継続
三 表舞台での交渉
四 工部省技術官僚路線推進の前提
五 むすび
第六章 明治六年の政局と工部省の政策過程
一 はしがき
二 明治六年の工部省の行政史的展開
三 太政官制潤飾と工部省の政策決定
四 征韓論政変後の工部省
五 むすび
第三部 明治初年における工部省の政策実現の背景
第七章 明治初期鉄道建設をめぐる住民と技術官僚
一 はしがき
二 日本最初の鉄道建設における住民の反応と技術官僚
三 用地買収をめぐる住民と技術官僚
四 築堤工事をめぐる住民と技術官僚
五 むすび
第八章 工部省の「西洋性」と西洋意識
一 はしがき
二 洋行経験者と「西洋性」
三 留学生・海外派遣官員・お雇い外国人と「西洋性」
四 工部省の西洋意識
五 むすび
結章
工部省年表
主要参考文献一覧
主要引用史料一覧
あとがき
初出一覧
索引