▼出土銭貨(発掘調査によって発見された貨幣)を資料として、文献史料と合わせることにより、過去の貨幣流通状態や経済活動の復元を目指す「貨幣考古学」という新しい考古学を提唱。出土銭貨研究の用語や分析法を紹介し、現在どのような問題点があるか、またどのような展望が見えるのかを考察する。
▼海外での調査結果から、中国はもちろん、朝鮮半島、ベトナムでも日本と同じ銭貨が発見されることを指摘し、東アジア共通貨としての新たな側面を紹介する。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
櫻木晋一(さくらき しんいち)
1953年生まれ。慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。現在、下関市立大学経済学部教授。
主な著作・論文に、「中世の銭貨鋳造についての一考察」『古代』第103号(1997)、「中世出土銭貨研究の課題と展望」『考古学ジャーナル』 No. 526(2005)、「出土銭貨による中世貨幣流通の検討」『貨幣の地域史』(岩波書店、2007)など。
目次
刊行によせて 九州大学名誉教授 森本芳樹
はじめに
序論
1 和同開珎以前
2 古代銭貨の時代
3 中世の銭貨流通
4 中・近世移行期
5 近世の貨幣制度
第1部 貨幣考古学総論
第1章 貨幣考古学の確立
1 貨幣考古学とは
2 用語の概念規定
3 出土銭貨のもつ資料的特性
第2章 セリエーション分析による編年
1 セリエーション分析
2 六道銭研究とセリエーション論
第3章 銭貨の技術史的研究
1 銭貨の製作技術
2 博多遺跡群の出土銭笵
3 京都・鎌倉・堺の出土銭笵
4 出土銭貨未製品
5 金属組成の特徴と分析方法
6 洪武通寳の金属組成
7 寛永通寳と清銭の金属組成
第4章 貨幣考古学の課題
1 古代の銭貨研究
2 中・近世の銭貨研究
3 貨幣考古学の視座
第二部 貨幣考古学各論
第1章 出土古代銭貨
1 和同開珎以前
2 九州の出土古代銭貨
3 古代銭貨発行の目的・意義
4 まとめ
第2章 出土六道銭研究
1 六道銭とは
2 九州における出土六道銭
3 東京都港区の事例
4 出土枚数と出土位置
5 まとめと課題
第3章 一括出土銭について
1 一括出土銭とその出土状況
2 一括出土銭の時期区分
3 一括出土銭からみた銭貨流通
4 九州における一括出土銭
第4章 個別出土銭研究
1 個別出土銭とデータベース
2 博多遺跡群第102次調査の出土銭
3 中世都市「博多」の個別出土銭
4 各地の中世都市個別出土銭
5 洪武通寳について
6 九州・沖縄における無文銭の様相
第5章 近世の出土貨幣
1 近世初期の撰銭と銭貨
2 出土寛永通寳研究
3 鳥居埋納の銭貨
4 長崎の出土銭貨
5 小倉城新馬場跡出土の清銭
6 近世都市遺跡の調査事例から
7 出土金・銀貨と今後の展望
第6章 海外での貨幣調査
1 ベトナム一括出土銭調査
2 イギリスの貨幣資料
3 新安沖沈没船出土銅銭の用途および性格
終章 貨幣考古学の地平
1 研究のまとめと方向性
2 貨幣考古学の未来
あとがき
参考文献
著作リスト
図版一覧
索引