支援から共生への道 発達障害の臨床から日常の連携へ
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-7664-1639-8 C37
奥付の初版発行年月:2009年09月
お待たせしました!
『教育と医学』の連載開始直後から「本にしてほしい」という声が多数寄せられていた、大好評の田中康雄先生の連載「生きること・支え合うこと」の全24回をまとめた本ができました。連載中、「電車の中では田中先生の連載は読みません。なぜなら、涙が出てしまうから。家に帰ってじっくり読みます」という声が複数寄せられていました。通して読むと、田中先生の思い、そしてその深い思いやりが伝わってきます。
いま注目の児童精神科医の支援論。
▼筆者は、いま、日本の児童精神科医師として最も注目されている医師の一人。発達障害という診断をもつ子ども、そして保護者に、医師として何ができるのか。診療室から出て、教育、福祉のさまざまな人たちとの連携を探り、その過程で出会った人々とのエピソード……。新米医師時代から今に至る道程を赤裸々に綴る、心の軌跡。心温まる書。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
田中康雄(たなか やすお)
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター教授。
児童精神科医師。臨床心理士。日本発達障害ネットワーク(JDDネット)会長。
1958年栃木県生まれ。獨協医科大学医学部卒業。市立士別総合病院精神科神経科医長、
北海道立緑ヶ丘病院医長、
国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部児童期精神保健研究室長などを経て、
2004年北海道大学大学院教育学研究科教授、
2006年北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター教授、
2008年より現職。
著書
『軽度発達障害——繋がりあって生きる』(金剛出版、2008年)、
『軽度発達障害のある子のライフサイクルに合わせた理解と対応』(学研、2006年)、
『発達障害とその周辺の問題』(共編著、中山書店、2008年)、
『ADHDの明日に向かって』(星和書店、2001年)ほか翻訳書など多数。
目次
序(村田豊久)
前口上
1 治療する側から支援する側へ
精神科医になりたてのころ
支援についてのささやかな学び
支援と支援が重なるとき
学び合い、育ち合う
2 誰のための連携なのか(1)
「ネットワークを作りなさい」という先輩の助言
つなぐための積極性・能動性
誰のための連携か、を考える
3 誰のための連携なのか(2)
孤立から連携へ
スペシャリストとプロフェッショナル
地平線から、そこに佇むことへ
共に立つ、終わらない舞台
4 虐待に対して何ができるのか
ある家族との出会い
何もできない自分を恥じながら
出会いはやり直しの機会でもある
目には見えない、〝支え合いの力〟
5 信じることから
一度は信じてみるもの
訴えを突き放さず、受け入れてみる
はらはらと心配し続ける
6 その一瞬を待つ
止まらない自殺
エアポケット? いえ、ただの無知
自分が入れる精神病棟作り
思春期外来の場で
7 困惑感 そして関わることの覚悟
他者を理解するということ
相互理解に向けて
添い続けることを学ぶ
困惑感を、診断の決め手から関わりの覚悟へ
8 孤独を乗り越えた自立
児童自立支援施設とは
幼き子どもが今ここに
子どもたちに課せられた、「自立」という言葉
今までの孤立に向き合う
9 就学相談での親の思いから
就学相談について
就学相談の席で
さまざまな親の思い
「就学相談」の居心地の悪さ
10 不登校の子どもたちから学ぶこと
自宅で暴れだしたA君
感情を置き忘れてきたようなBさん
先生に言ってほしかったことを語るC君
心因性の記憶障害を示したDさん
自分の道を勝ち取っていく子どもたち
11 聴き続けることから生まれる希望
話を聴く——実習生のころ
聴き続けること——新米医師のころ
聴くことで生まれる希望
12 一緒にいる、ということ
一緒にいられない?
一緒にいることで生まれてくるもの
一緒にいることと、花咲く刻の準備
13 自立ってなんだろう——親からの学び
特別ではない、ただ私が親だから……
普通に認めて褒めてもらいたい
この子の真意を無視していないか
「自立」を問い直してみませんか
14 睡眠に課題を示した方々との出会いから
そもそものきっかけは……
夢遊病、眠り病……
診察室に来ると眠る人……
15 〝ぎこちなさ〟から気づいたこと
人の動きから見えてくること
仕事が身につくことと人の動き
ある困惑から思いいたったこと
自分にぎこちないということ
16 聞いてほしい、と思うとき
東京のタクシーで
札幌のタクシーで
まっすぐな道の先は
17 僕がいることが許される世界を探して
ただ、そばにいたあの頃
そばにいることが許される、という関係性
この世界の地平線の向こうにあるものをめざして
18 診断名よりも大切なこと
大学相談室で
日常の支援こそ
診断についての家族の困惑
この子を丸ごと受けとめたい
19 ものさしを差し出し合う
教師の力
教師の葛藤
測り方を一緒に考えていくこと
20 診断でなくその子の心を、関わりは日常の中で
当たり前の感覚を忘れていませんか
親だからこそ、できること、できないこと
この子の心に近づきたいから
21 親やきょうだいの思い
ふた親の温度差
ひとり親の思い
きょうだいのこと
22 診断名に囚われず、それを活用するということ
診断名を告げることへの躊躇
「発達」という予測不可能な前進への希望
これからいかに生きていくか、へ
呪縛から、活用へ
23 何が正しいといえるのだろうか
部分的なサインよりも、その背景にある内面に近づく
この子が今どんな気持ちなのか
24 青い空の真下で「僕」から「あなた」へ
〝ひとりぼっち〟からの変化
「僕」との対話から、「あなた」と対話ができるまで
支えてくれる人がいるから耐えられる
「あなた」と手をつなぎたい、から始めたい
さいごに
納め口上