グーテンベルクからグーグルへ 文学テキストのデジタル化と編集文献学
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-1671-8 C3036
奥付の初版発行年月:2009年09月
“Google ショック”の本質を衝く必読書!
▼「グーグルブック検索」 の衝撃とそれに伴う議論の沸騰においても見落とされている議題(文学テキストのデジタル化の問題点と可能性、テキストをめぐるコミュニケーションの変容)について、本質的な議論を展開。From Gutenberg to Google: Electronic Representations of Literary Texts, Cambridge University Press, 2006. の翻訳。
▼文学研究は何に基づいて行われるのか。モノとしての本か、あるいは情報としてのテキストか。人文学の研究はそもそも何を資料としてきたのか。また、今後は何を資料としていくのか。デジタルの「本」の氾濫は、文学研究の制度、ひいては、人文学研究の制度全体に根本から揺さぶりをかける。「グーグルブック検索」の問題は、たんに作家や出版社といった供給者側の問題にとどまらない。それは 「本」 をいかに読むのか、使うのかという読者、利用者、研究者の側の問題でもある。
▼文学、人文諸科学の制度のありようと直結する基盤の世界規模の変容を説き、人文科学の歴史と未来を見据えた本書の記述は 「デジタル化」 を考える際の必読書・基本書たりえる内容となっている。
【著者】
ピーター・シリングスバーグ(Peter L. Shillingsburg)
米国ロヨラ大学教授(英文学科)。
2003年から2008年まで英国ド・モンフォール大学教授。
2005年より同大学文献学センター(The Center for Textual Scholarship)長を務めた。
学術版W. M. サッカレー全集編集責任者。
サッカレーを中心とするヴィクトリア朝文学研究に関する主な著作は次のとおり。
Pegasus in Harness: Victorian Publishing and W. M. Thackeray, University of Virginia Press, Fall 1992.
William Makepeace Thackeray: A Literary Life, London: Palgrave Macmillan, 2001.
また本書以外の編集理論書としては以下2点をあげておく。
Scholarly Editing in the Computer Age, 3rd edn. Ann Arbor: University of Michigan Press, 1996.
Resisting Texts: Authority and Submission in Constructions of Meaning, University of Michigan Press, 1998.
その他の詳しい経歴については、次のサイト参照。http://peter.shillingsburg.net/briefbio.htm
【訳者】
明星聖子(みょうじょう きよこ)
埼玉大学教養学部准教授
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
著書に、『新しいカフカ——「編集」が変えるテクスト』(慶應義塾大学出版会、2002年)。本書で日本独文学会賞受賞。訳書に、リッチー・ロバートソン『カフカ』(岩波書店、2008年)、シュテン・ナドルニー『僕の旅』(同学社、1998年)等がある。
大久保譲(おおくぼ ゆずる)
埼玉大学教養学部准教授
東京大学大学院総合文化研究科中退。
主要論文に「新歴史主義に触れる 理論のアフター・ライフ」(『英語青年』2007年)、「塹壕と寝室」(『間文化の言語態』東京大学出版会、2002年)、「足と手のモダニズム」(『表象のディスクール 3 身体』東京大学出版会、2000年)。訳書に、シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』(国書刊行会、2005年)等がある。
神崎正英(かんざき まさひで)
ゼノン・リミテッド・パートナーズ代表。
京都大学文学部卒業。コロンビア大学でMBA取得。
著書に、『プロフェッショナル電子メール』(ハルアンドアーク、1999年)、『ユニバーサルHTML/XHTML』(毎日コミュニケーションズ、2000年)、『セマンティック・ウェブのための RDF/OWL入門』(森北出版、2004年)、『セオリー・オブ・スタイルシート』(技術評論社編集部・編、2006年)、『セマンティック HTML/XHTML』(毎日コミュニケーションズ、2009年) 等がある。
目次
序 章
第1章 二一世紀における手稿、本、そしてテキスト
第2章 複雑性、耐久力、アクセス可能性、美、洗練、そして学術性
第3章 書記行為理論
慣習——いった/いわない、意図した/理解した
時間、空間、物質性
モノとしてのテキスト
意味の生成——書かれたこと、書かれていないこと、理解されたこと
知識、不確かさ、そして無知
書記行為理論の要素
第4章 書記行為を再現するための電子的インフラストラクチャー
Ⅰ 電子ナリッジサイトのための概念空間
村をあげての仕事
業界標準とモジュール式構造
材料、構造、能力
Ⅱ 実践的な問題
資金をどのように調達するのか?
言語とソフトウェアによる解決策のいくつか
新しいプロジェクトと遺産プロジェクト
分 業
編集上の問題——ケーススタディ
編集版の構築
遺産ファイルの変換
品質向上
二つの電子的解決策
ウィリアム・サッカレー全集の事例
ソフトウェアの実際的問題
第5章 ヴィクトリア朝小説——読みを形づくる形
第6章 電子テキストのじめじめした貯蔵室
第7章 編集文献学の競合する目的を調和させることについて
第8章 聖人崇拝、文化のエンジニアリング、モニュメントの構築、その他の学術版編集の機能
Ⅰ 永遠に続く否定
Ⅱ 無関心の中心
Ⅲ 永遠に続く肯定
第9章 審美的な対象——「私たちの喜びの主題」
第10章 文学研究における無知
註
編集文献学の不可能性——訳者解説に代えて
参考文献
人名・作品名索引