大日本帝国の崩壊と引揚・復員
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-7664-1975-7 C3021
奥付の初版発行年月:2012年11月 / 発売日:2012年11月上旬
▼「残留日本人の復員・引揚」政策はどのように決定されたのか?
▼終戦後、日本政府が当初の残留日本人の「現地定着」政策から「早期引揚実施」へと変化したのはなぜか?
各国の一次資料を基にした国際政治の観点から、連合国の思惑のなかで各地の日本軍と民間人がたどった帰還の実態、そして戦後日本社会へ与えた影響を多角的に明らかにする。
▼日本現代史・二国間関係の専門家たちによる、注目作。
増田 弘(マズダ ヒロシ)
東洋英和女学院大学国際社会学部教授。1947年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。専門分野:日本政治外交史。主要業績:『石橋湛山―「小日本主義者」の国際認識』(1990年、東洋経済新報社)、『公職追放―三大政治パージの研究』(東京大学出版会、1996年)、『ニクソン訪中と冷戦構造の変容-米中接近の衝撃と周辺諸国』(編著、慶應義塾大学出版会、2006年)、『マッカーサー―フィリピン統治から日本占領へ』(中央公論新社、2009年)、ほか。
上記内容は本書刊行時のものです。【編著者】
増田 弘(ますだ ひろし)
【著者】
加藤 聖文(かとう きよふみ)
人間文化研究機構国文学研究資料館助教。1966年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士後期課程修了。専門分野:日本近現代史・歴史記録学。主要業績:『満鉄全史―「国策会社」の全貌』(講談社選書メチエ、2006年)、『検閲された手紙が語る満洲国の実態』(共著、小学館、2006年)、『「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年』(中公新書、2009年)、『史料 満鉄と満州事変―山﨑元幹文書』上下巻(共著、岩波書店、2011年)、ほか。
加藤 陽子(かとう ようこ)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。専門分野:日本近代史。主要業績:『満州事変から日中戦争へ』(岩波書店、2005年)、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社、2009年)、『昭和天皇と戦争の世紀(天皇の世紀08)』(講談社、2011年)、『新装版 模索する1930年代―日米関係と陸軍中堅層』(山川出版社、2012年)、ほか。
佐藤 晋(さとう すすむ)
二松学舎大学国際政治経済学部教授。1967年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。専門分野:戦後日本政治外交史。主要業績:『池田・佐藤政権期の日本外交』(共著、ミネルヴァ書房、2004年)、『現代日本の東南アジア政策 1950-2005(アジア太平洋研究選書)』(共著、早稲田大学出版部、2007年)、『東アジア近現代通史』第9巻(共著、岩波書店、2011年)、『もう一つの日米交流史―日米協会資料で読む20世紀』(共著、中央公論新社、2012年)、ほか。
大澤 武司(おおさわ たけし)
熊本学園大学外国語学部准教授。1973年生まれ。中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士後期課程修了。博士(政治学)。専門分野:近現代日中関係、戦後東アジア国際政治。主要業績:『1945年の歴史認識―<終戦>をめぐる日中対話の試み』(共著、東京大学出版会、2009年)、『現代中国外交の六十年―変化と持続』(共著、慶應義塾大学出版会、2011年)、『日中関係史 1972-2012 Ⅰ 政治』(共著、東京大学出版会、2012年)、「『人民の義憤』を超えて―中華人民共和国の対日戦犯政策」(『軍事史学』第44巻第3号、2008年)、ほか。
永島 広紀(ながしま ひろき)
佐賀大学文化教育学部准教授。1969年生まれ。九州大学大学院人文科学府博士後期課程修了。博士(文学)。専門分野:朝鮮史・日韓関係史。主要業績:『戦時期朝鮮における「新体制」と京城帝国大学』(ゆまに書房、2011年)、『大韓民国の物語』(翻訳、李栄薫著、文藝春秋、2009年)、『植民地帝国人物叢書【朝鮮編】』全20巻(編著、ゆまに書房、2010年)、『【第2期】日韓歴史共同研究報告書 教科書小グループ篇』(共著、日韓歴史共同研究委員会、2010年)、ほか。
浜井 和史(はまい かずふみ)
外務省外交史料館「日本外交文書」編纂室外務事務官、二松学舎大学国際政治経済学部非常勤講師。1975年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専門分野:日本近現代史、日本外交史、国際政治学。主要業績:『復員関係史料集成』全12巻(※編集・史料解題、ゆまに書房、2009-2010年)、「戦後日本の海外戦没者慰霊―1950年代遺骨収集団の派遣経緯と「戦没日本人之碑」の建立』(『史林』第91巻1号、2008年1月)、ほか。
目次
序 論 引揚・復員研究の視角と終戦史の見直し 増田 弘
第1章 大日本帝国の崩壊と残留日本人引揚問題
――国際関係のなかの海外引揚 加藤 聖文
はじめに
Ⅰ ポツダム宣言受諾と現地定着方針
1 ソ連の対日参戦/2 現地定着方針の決定/3 引揚者対策の
決定/4 現地定着方針の背景/5 満州における状勢悪化
Ⅱ 東久邇宮内閣と残留日本人引揚問題の迷走
1 東久邇宮内閣成立の背景/2 重光外相との路線対立/3 対ソ交
渉ルートの途絶/4 GHQ指導下の引揚体制確立
Ⅲ 米国の対中政策転換と残留日本人引揚の実現
1 USFCTによる送還計画/2 ソ連軍の満洲撤兵問題/3 米国の
対中政策転換/4 全日本人送還の基本方針確定
おわりに
第2章 日本軍の武装解除についての一考察 加藤 陽子
はじめに
Ⅰ 武装解除をめぐる攻防
1 東条英機/2 ポツダム宣言中の武装解除/3 バーンズ回答中
の武装解除
Ⅱ 昭和天皇と遼東還附の詔勅
1 講和を躊躇させたもの/2 8月10日の「聖断」/3 8月14日の
「聖断」/4 遼東還附の詔勅/5 『昭和天皇独白録』中の武装
解除問題
Ⅲ アメリカのジレンマ
1 無条件降伏論のくびき/2 さまざまなシグナル/3 ビラでの
呼びかけ/4 情報戦/5 南原繁と高木八尺
Ⅳ 実際の武装解除過程
1 池田純久/2 8月14日の閣議決定/3 実行の指示書/4 連合
国方針の徹底/5 終戦犯罪
おわりに
第3章 大陸引揚者と共産圏情報――日米両政府の引揚者尋問調査 佐藤 晋
はじめに
Ⅰ 進駐直後の情報要求
Ⅱ 前期集団引揚と尋問調査
Ⅲ 尋問からの「収穫」
Ⅳ 日本側の協力態勢
Ⅴ 朝鮮戦争におけるインテリジェンスの失敗
Ⅵ 日本政府の引揚者調査
おわりに
第4章 中華人民共和国の日本人「戦犯」処理――裁かれた「帝国」 大澤 武司
はじめに
Ⅰ 不完全なる「敗者の帰還」
1 撫順組「戦犯」の誕生/2 太原組・西陵組「戦犯」の誕生
Ⅱ 認罪と「帝国」
1 撫順組「戦犯」の認罪過程/2 太原組「戦犯」の認罪過程
Ⅲ 「戦犯」の帰還
1 西陵組「戦犯」の帰還/2 「戦犯」裁判への道/3 「戦犯」
裁判における「帝国」
おわりに
第5章 朝鮮半島からの引揚と「日本人世話会」の救護活動
――朝鮮総督府・京城帝国大学関係者を中心に 永島 広紀
はじめに
Ⅰ 民間人の引揚開始と「京城日本人世話会」
Ⅱ 事務局長・金子定一の去就
Ⅲ 「在外同胞援護会」・「聖福病院」・「二日市療養所」
Ⅳ 『京城日本人会会報』発行のあとさき
Ⅴ 京城日本人世話会と森田芳夫
おわりに
第6章 ラバウルからの日本軍の復員過程 増田 弘
はじめに
Ⅰ 終戦の過程
1 終戦以前の状況/2 玉音放送/3 今村司令官の決断/
Ⅱ 連合国(豪軍)への降伏過程
1 オーストラリア軍への降伏/2 降伏調印式/3 オーストラ
リア軍の上陸
Ⅲ 第8方面軍の解体と抑留過程
1 日本軍の武装解除/2 強制収容所生活の開始/3 戦犯
裁判/4 炎天下の強制労働
Ⅳ 帰還準備と復員過程
1 復員の準備体制/2 日本本土の復員受入れ準備/3 遺骨
の送還/4 復員の繰り上げと完了
おわりに
第7章 遺骨の帰還 浜井 和史
はじめに
Ⅰ 復員・引揚にともなう遺骨の帰還
1 遺骨が帰還するまで/2 「帰らぬ遺骨」をめぐって/3 遺骨
収容問題の「発見」
Ⅱ フィリピンからの遺体(遺骨)の送還(1949年)
1 「静かな帰還」/2 忘れられた「釜墓地」と「帰らなかった」
遺骨
おわりに
参考文献リスト
あとがき
索 引